5分でわかる! オリンピック水泳の基礎知識

東京五輪では萩野公介や瀬戸大也、池江璃花子らがメダリスト候補筆頭

オリンピック水泳の基礎知識

2020年東京五輪では、5つの水泳競技が実施される。メダリスト候補がそろう競泳のほか、飛び込み、水球、アーティスティックスイミング、さらには2008年の北京五輪から正式種目となったマラソンスイミングまで、競技の歴史や注目選手を紹介する。

競泳はメダリスト候補多数の花形競技

競泳は1896年の第1回アテネ五輪から実施されており、オリンピックにおける花形競技の一つとなっている。自由形、背泳ぎ、バタフライ、平泳ぎと、4種類の泳法で一定の距離を泳ぐタイムを競う。2016年のリオデジャネイロ五輪では、個人種目とリレー種目を合わせて男女で32種目が実施された。東京五輪では、男子の800メートル自由形など新たに3種目が加わり、種目数は35に増える。

日本人初の金メダリストは、1928年のアムステルダム五輪で男子200メートル平泳ぎに出場した鶴田義行。1992年のバルセロナ五輪では、岩崎恭子が当時わずか14歳にして女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得した。2004年のアテネ五輪と2008年の北京五輪では、北島康介が男子の100メートル平泳ぎと200メートル平泳ぎの2種目で連覇を達成するなど、これまでに多くの日本人が表彰台に上っている。

東京五輪では、男子400メートル個人メドレーでの連覇がかかる萩野公介や、リオデジャネイロ五輪の同種目で銅メダルを獲得した瀬戸大也がメダリスト候補の筆頭に挙げられる。20歳で東京五輪を迎える池江璃花子も、2018年のアジア競技大会で6冠を達成するなど成長著しい。また、東京五輪での採用が決まった4×100メートル混合メドレーリレー(混合)は、2018年のパンパシフィック水泳選手権大会で強豪アメリカを上回って銀メダルを獲得している種目。これまで日本が得意としてこなかった自由形に強い選手が育ってきていることで、リレー種目でのメダル獲得の可能性も大いに高まっている。

2秒弱で技術と美しさを競う飛び込み

飛び込みは一定の高さの飛び込み台から空中に飛び出し、着水するまでの動作の技術と美しさを競う競技だ。飛び込みから着水まではわずか2秒弱で、その短い時間内にさまざまな技を繰り出す。競技は2種目あり、ジュラルミン製でできた3メートルの飛板を使い、反発力を利用して演技を行う「飛板飛込」と、高さ10メートルの台から飛び込む「高飛込」。ペアで出場する「シンクロナイズドダイビング」は、2人の演技がどれだけ調和しているかも採点基準となる。

日本の最高成績は、1936年に行われたベルリン五輪の男子飛板飛込で柴原恒雄、女子高飛込で大沢礼子が記録した4位入賞だ。2016年のリオデジャネイロ五輪では、板橋美波が女子高飛込で8位入賞を果たした。2018年に行われたアジア競技大会の男子3メートルシンクロナイズドダイビングで銅メダルを獲得した寺内健・坂井丞ペアも力をつけてきている。東京五輪では、2008年北京五輪で全8種目中7種目を制した中国や、4回転半を飛ぶ欧米勢によるレベルの高い争いに食い込み、日本飛び込み界初のメダル獲得に期待が集まる。

7人制の水球は「水中の格闘技」

水球は1860年代のイギリスで発祥した。プールで行われる唯一の球技種目で、男子は1900年のパリ五輪から、女子は2000年のシドニー五輪から実施されている。1チーム7人で、水深2メートル以上のプール内につくられた縦30メートル、横20メートルのコートで2チームがゴールにボールを投げ入れ合って得点を競う。ボールを持つ選手に対しては、激しいコンタクトプレーも認められており、「水中の格闘技」と称されるほど激しいスポーツでもある。スピーディーな試合展開や多彩な戦術も見どころの一つだ。

“ポセイドンジャパン”の愛称がつけられている男子日本代表は、2016年のリオデジャネイロ五輪で32年ぶりの出場を果たした。しかし、結果は未勝利。東京五輪でのリベンジに燃えている。前回五輪にチーム最年少で出場した足立聖弥は、エースとしてチームをけん引する働きが期待される。開催国枠で初出場を果たすこととなった女子日本代表は、2018年のアジア競技大会では3勝2敗で銅メダルを獲得しており、着々とチームの底上げを図っている。

歴史を刻む日本の「お家芸」

アーティスティックスイミングは音楽に合わせてプールのなかでさまざまな動きや演技を披露し、技の完成度や一体感、構成、表現力などの得点で競う。2017年7月に国際水泳連盟が種目名を変更するまでは「シンクロナイズドスイミング」と呼ばれていた。オリンピックでは女子のみ実施され、2分20〜50秒の曲に決まった8つの動きを入れる「テクニカルルーティン」と、3〜4分の曲の中で自由に演技する「フリールーティン」が行われる。

正式種目として採用された1984年のロサンゼルス五輪のシンクロナイズドスイミングでは、元好三和子がソロで銅メダル、元好と木村さえ子がデュエットで銅メダルを獲得。以降、日本は表彰台に上り続けてきたが、2012年のロンドン五輪ではデュエット、チームともに初めてメダルを逃した。しかし、2016年のリオデジャネイロ五輪ではデュエット、チームの両方で銅メダルを奪還。そんな歴史を残してきた「マーメイドジャパン」が東京五輪でめざすのは、もちろん悲願の金メダル獲得だ。2018年のアジア競技大会で中国に次ぐ2位に入った乾友紀子・吉田萌ペアらが意気込んでいる。

知識や経験も問われるマラソンスイミング

オープンウォータースイミングとも呼ばれる「マラソンスイミング」は、2008年の北京五輪から正式に採用された歴史の浅い種目だ。海や川、湖などプール以外で行われ、10キロメートルの長距離を泳ぎタイムを競う。泳法に規定はない。泳力や持久力だけでなく、潮の流れや波の高さに対応する知識や経験など総合力が問われる。

日本は、2012年のロンドン五輪から選手を派遣しており、貴田裕美と平井康翔が出場。平井は2016年のリオデジャネイロ五輪で1位のフェリー・ウェールトマン(オランダ)に4.8秒差まで迫り、日本人初の8位入賞を果たした。また、2018年に千葉県館山市北条海岸で行われた第13回パンパシフィック水泳選手権大会では、森山幸美が5位、貴田が6位に入賞している。東京五輪では自国開催の後押しを受け、同種目初のメダル獲得も見込まれる。

競泳で初のメダルを獲得した1928年のアムステルダム五輪から、92年の時を経て迎える2020年東京五輪では、何人の日本人メダリストが誕生するだろうか。有望な実力者のそろう「競泳」、悲願成就をめざす「アーティスティックスイミング」、未来を切り拓くべく臨む「飛び込み」、「水球」、「マラソンスイミング」。それぞれの競技で起こる水中のドラマに、心が熱くなるはずだ。

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