最も宙高く舞うトランポリン競技、日本勢は予選通過の壁を飛び越えメダル獲得なるか

トランポリン競技

オリンピックの体操競技の中でも、最も歴史が浅いトランポリン。すべての競技の中で、最も宙高く舞う演技のダイナミックさには、息をのむばかりだが、一発勝負で失敗が許されない緊張感を乗り越える選手の精神力にも同時に驚かされる。そんなトランポリン競技の醍醐味を、東京五輪では十二分に味わいたい。また、日本は悲願の初メダル獲得もかかっている。そこでルールやみどころを押さえておこう。

競技概要・歴史

サーカスが起源、導入されたのは5回前のシドニー五輪

「トランポリン」の語源は、中世ヨーロッパのサーカス芸人の名に由来するという。また、空中ブランコの下に張られたネットを利用して、宙返りを繰り返し、観客を楽しませたのが起源ではないかとされている。第2次世界大戦期、アメリカでは、パイロットが空中感覚を養うためのトレーニングとして採用されたが、後にスポーツとして改良され、世界に広まった。

日本に上陸したのは1959年。5年後の1964年に最初の全日本選手権大会が開催された。近年、競技人口の増加とともに、世界で活躍する選手も育っている。

オリンピックでは2000年シドニー五輪から個人競技のみが新種目として正式採用され、男女それぞれ12人が参加したのが始まりだ。

2019年東京開催の世界選手権で出場枠決定

オリンピックの出場枠は男女それぞれ各国最大2名。前年に行われる世界選手権大会で決勝に進出した選手の所属国が出場権を獲得する。東京五輪の出場枠は2019年11月に東京で開催する世界選手権で決まる。日本体操協会は、2018年11月18日時点で、女子に関しては、五輪出場枠を獲得した最上位選手が代表となることを決めた。2枠を獲得した場合の2枠目の選考方法は未定という。

種目は個人のみ、10連続の演技点で争う

トランポリン競技は個人、シンクロナイズド、団体の3種類があるが、五輪は個人のみだ。

トランポリンは縦520センチ、横305センチ、高さ115センチのフレームサイズで、ナイロンテープ、またはロープで編まれたベッド(面)に、約120本のスプリングを張ったものを使用する。選手はベッド上の「ジャンピングゾーン」と呼ばれる赤い枠内で演技を行う。

オリンピック予選は、第1自由演技および第2自由演技の合計で争う。第1自由演技は、ルールで定められた特別要求を含む10種目の技を構成し演技を行う。第2自由演技は、任意の10種目で演技する。上位8人が決勝に進み、予選の得点はリセットされ、全員が横一線で勝負することになる。

採点基準は、演技の美しさ(Eスコア)、技の難しさ(Dスコア)、高さ (滞空時間) の跳躍時間点(Tスコア)、どれだけ横にぶれずに跳んだかを評価する移動点 (Hスコア)の4項目で、この合計点を争う。決められた時間内に演技を開始しなかったり、コーチが演技中に声を掛けたりするとペナルティ(減点)となる。演技開始は予備ジャンプで徐々に高さを上げ、1種目目を行ってから連続で10種目を行い、着地して終了する。技を連続で決められなかったり、ベッド以外に身体が触れたり、ベッド外に落下したりすると演技はそこで終了となる。

跳躍や宙返りの空中姿勢には、タック(抱え型)、パイク(屈伸型)、レイアウトあるいはストレート(伸身型)の基本的な3種類があり、これに回転数やひねりを加えることで技の難易度が上がり、Dスコアがプラスされる。

日本選手の歩みと見どころ

過去の成績

これまで男子女子ともに五輪では入賞止まりで、メダルの実績はない。

男子は中田大輔選手が2000年のシドニー五輪に出場(予選落ち)。2008年北京五輪では、外村哲也選手が4位入賞、上山容弘選手が予選落ちした。上山選手は2012年ロンドン五輪で5位入賞。2008年と2011年に世界ランキング1位となった伊藤正樹選手は2012年ロンドン五輪で4位、2016年リオデジャネイロ五輪では6位に入賞した。リオデジャネイロ五輪では棟朝銀河選手が4位に入賞した。

女子は、2000年シドニー五輪で丸山章子選手が6位入賞。2004年アテネ五輪では廣田遥選手が7位入賞、2008年北京五輪に連続出場したが予選落ち。2012年ロンドン五輪には岸彩乃、2016年リオデジャネイロ五輪には中野蘭菜の両選手がそれぞれ出場したが、いずれも予選で敗退している。

東京五輪の見どころ

この競技は男女ともに中国が強い。また、ロシアやベラルーシも強豪国に数えられる。女子はカナダが5大会連続でメダルを獲得するなど底堅い強さをみせている。個人に目を向けると、男子は中国の董棟選手が2008~2016年の北京・ロンドン・リオデジャネイロの3大会に連続出場し、銅→金→銀と連続でメダルを獲得した。女子はカナダのロザンナ・マクレナン選手がロンドンとリオデジャネイロ2連覇を果たしている。

日本勢はこれまでメダルはないものの、過去5大会で出場枠はつかんできた。先述したように、五輪の決勝は予選通過した8人が横一線で勝負するため、1位でも8位でも関係なく、とにかく予選を通過すれば、全員に金メダルのチャンスがあるということだ。前回のリオ五輪では、男子の棟朝選手が4位とメダルまであと一歩のところまできている。最近は各種世界大会で、じわりとその存在感を見せつけている日本勢だけに、地元開催となる東京五輪では、世界の強豪相手に力を出し切って、競り勝つことを期待したい。

東京オリンピックでの展望

会場と日程

会場は有明体操競技場(東京都江東区有明、2019年10月末ごろ完成予定)。7月31日に女子、8月1日に男子が予選から決勝まで行われる。いずれも午後1時~3時25分。

出場有力選手

日本体操協会が2018年10月時点で最新の強化指定選手」としているのは以下のとおり。今後の世界大会での活躍次第で、東京五輪の出場が有力視されている。

〈男子SA〉伊藤正樹

〈男子S〉棟朝銀河・岸⼤貴・堺亮介・上⼭容弘・⾕⼝遼平・外村哲也

〈男子A〉⽥崎勝史・島⽥諒太・植⽥太郎・安藤諒・⽯川和・宮野冬⾺・中園貴登

〈女子SA〉森ひかる・岸彩乃

〈女子S〉⾼⽊裕美・名倉沙織・佐⽵玲奈・中野蘭菜・⼟井畑知⾥・杉⾕櫻花・宇⼭芽紅・⼭⽥紗菜

〈女子A〉松原知穂・桐⽣莉沙・岡⽥亜実

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