山下航平:高校時代に走幅跳から三段跳に転向。「父超え」が東京五輪での好成績につながる

大学4年次にリオデジャネイロ五輪に出場 

100メートルの自己ベストは10秒51。助走でいかにスピードに乗るかが今後の飛躍につながる

現在の日本陸上界において三段跳の第一線で活躍する山下航平は、好むと好まざるとにかかわらず、父の存在を意識せざるを得ない。30年以上も前に三段跳の日本記録をたたき出したのは他でもない父。来たる東京五輪で活躍するためにも、「17メートルの壁」を軽やかに跳び越えなければならない。

高校時代、同時期の父の自己ベストを1センチ上回る

17メートル15。三段跳での東京五輪出場を狙う山下航平は、偉大なる父の背中を追い続けている。

17メートル15という三段跳の日本記録が出たのは1986年で、以降30年以上にわたって破られていない。日本陸上競技選手権大会で記録を塗り替えたのは山下訓史(のりふみ)さん。山下航平の父だ。

「父超え」をにらむ航平は1994年9月6日、福島県福島市に生まれた。小学生のころから陸上競技に親しみ、福島大学附属中学校時代は主に走幅跳に取り組んでいる。ただ、1988年のソウル五輪に三段跳の日本代表として出場した父の存在は常に頭のなかにあった。

福島県立橘高等学校に進学後は、父と同じ三段跳に転向。1度目と2度目を同じ側の足で踏み切り、最後のジャンプを反対側の足で繰り出す競技での飛躍を決意した。走幅跳で「跳ぶ」に慣れていたことに加え、偉大なる父の遺伝子を引き継いでいることもあるのだろう、高校時代には、全国高等学校総合体育大会、国民体育大会、日本ユース選手権といった舞台を経験した。

高校3年次の国体では初の全国制覇を果たしている。自己ベストを更新する15メートル50は、高校時代の父の自己ベストを1センチ上回る記録だった。

「17メートルの壁」を超えるためのカギは助走

日本記録を持つ父は、ある取材に応えこう話している。

「日本の三段跳は30年以上も停滞しているわけです。いい加減この記録を超さないと。航平に限らず、他の選手にもがんばっていただきたい」

父に発破をかけられている息子は、父の母校でもある筑波大学に進学し、大学4年次の2016年にリオデジャネイロ五輪に出場している。同年5月に行われた関東学生陸上競技対校選手権大会で自己ベストとなる16メートル85を記録。リオデジャネイロ五輪の参加標準記録を超える飛距離で優勝を果たした。「親子オリンピアン」となったものの、リオデジャネイロ五輪では15メートル71に終わり、予選敗退を喫した。

2018年8月に行われたアジア競技大会では4位入賞を果たした。記録は16メートル46と上々だったが、 大学時代に出した自己ベストにも、父による日本記録の17メートル15にも及ばない。まだ、何かが足りない。

「17メートルの壁」を超えるためのカギは、自身の武器をどう生かすかにかかっている。東京五輪出場を見据える山下の持ち味は短距離走の速さ。100メートルの自己ベストは10秒51と、本職のスプリンターにも引けを取らない。風を切るような助走からリズムよく3度の跳躍を繰り出す――その先に「父超え」とメダルが見えてくる。

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