大坂なおみが完全復活! 中国オープン制覇の勢いそのままに、WTAファイナルズで今シーズン最終戦を飾れるか

賞金総額はこれまでの倍となる1400万ドルに

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
大坂は東レ パン・パシフィック・オープンと中国オープンで2大会連続優勝。調子を上げている

テニスのWTAファイナルズが2019年10月27日から中国の深圳(しんせん)で開催される。WTA(女子テニス協会)の年間最終戦として位置づけられ、世界ランク上位8選手が出場。コーチとの契約解除、周囲からの過度なプレッシャーなどさまざまな困難を乗り越え、見事2年連続出場を決めた大坂なおみのプレーに注目だ。

女子テニスの年間最終戦WTAファイナルズ

2014年から2018年までのWTAファイナルズはシンガポールが開催地となっていたが、2019年は戦いの舞台が中国の深圳(しんせん)に移された。また、今大会からメインスポンサーがBNPパリバから資生堂へと変わり、賞金総額がこれまでの700万ドル(約7億4800万円)から倍の1400万ドル(約14億9600万円)へと引き上げられたことも話題となっている。

この大会への出場権を手にするのは、世界ランキング上位8選手のみ。試合形式は男子のツアーファイナルと同じく4選手ずつ2組に分かれて「ラウンドロビン」と呼ばれる総当たりの予選を実施。その後各組の上位2選手が決勝トーナメントへ駒を進める。

大会が実施されるのは10月27日から11月1日の6日間という短期間だ。各日2試合のラウンドロビン、11月2日には準決勝2試合、3日には決勝戦が行われるため、頂点をめざす選手には当然、圧倒的なスタミナや集中力が求められる。

2019年10月19日時点で、世界ランク3位に位置する大坂なおみとともに、熱戦を繰り広げるのは最強女王アシュリー・バーティ(オーストラリア)、2位のカロリナ・プリスコバ(チェコ)、4位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)、5位のビアンカ・アンドレースク(カナダ)、6位のペトラ・クビドバ(チェコ)、7位のエリナ・スビトリナ(ウクライナ)。最後の一枠には8位のセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)か9位キキ・ベルテンス(オランダ)が食い込んでくると見込まれる。

前回大会ではスビトリナが2013年大会のセリーナ・ウィリアムズ以来となる、全勝優勝を達成したことが大きな話題を呼んだ。また、今年2019年の全仏オープンで四大大会初制覇を成し遂げたバーティも要注目だ。バーティはその後のバーミンガムクラシックでも優勝。大坂から世界ランク1位の座を奪取し、一番乗りで本大会出場を決めており、気合十分で挑んでくるだろう。

大坂は東レパンパシオープン、中国オープンで2連続優勝

大坂なおみがWTAファイナルズへの出場を決めたのは9月28日から行われた中国オープンで、ベスト4進出を果たした時だった。

アンドレースクとの準々決勝では5-7で第一セットを落としたものの、その後6-3、6-4と立て直し、準決勝ではキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)に対して6-4、6-2とストレート勝ちで決勝に進出した。準々決勝から24時間経たずに迎えた試合で、なおかつ試合後の興奮のあまり寝られず2時間睡眠で挑んだという一戦だったが、7本あったタイブレークのピンチもすべてしのいでみせた。

そして迎えた運命の決勝戦、世界1位のバーティに対して大坂は、いわく「挑戦者の立場で臨んだ」。そして3-6、6-3、6-2で見事に逆転勝利を収め、初優勝を飾ってみせた。大坂が獲得したタイトルはこれで今シーズン3個目となり、9月の東レ パン・パシフィック・オープンに続き、2大会で連続優勝を達成。世界中のテニスファンに、完全復活を印象づけた。

2018年9月に全米オープン初優勝、翌2019年1月に全豪オープン初優勝、そしてアジア人初の世界ランク1位と、瞬く間にスターへの階段を駆け上がった大坂は、常に周囲から注目を向けられるようになった。そのことで実は過度なプレッシャーに苦しみ、苦戦を強いられていたという。本人は「正直なところ、ランキングポイントにこだわりすぎていた」、「絶対に負けられないと感じていた」と振り返る。

彼女をコーチとして間近で支えてきたサーシャ・バイン氏との契約を突然解消したことも、少なからずパフォーマンスへの影響があったに違いない。さらに、ジュニア時代のコーチから「賞金の20パーセントを受け取る契約を結んでいた」などと訴えられるなど、プレー以外の面でも落ち着かない状況が続き、彼女のメンタル面を心配する声も上がった。

しかし「重圧に押しつぶされていた」自らの弱点をしっかりと認め、あえて気にしすぎないことへと意識を変えた大坂は、さらにタフになって帰ってきた。今シーズンは成長した姿を存分に見せつけ、再び自信を取り戻している。

2年連続のWTAファイナルズは「楽しみにしている挑戦」

2年連続となるWTAファイナルズ出場を決めた大坂なおみは、大会公式サイトにて「出場権を獲得できたことを、とても誇りに思います。このイベントは素晴らしい雰囲気ですし、トップ選手たちとこのステージで戦えることは実に光栄で、楽しみにしている挑戦です」と語っている。2018年は悔しい早期敗退に終わっただけに、さらなる経験値を積んで成長した今年は雪辱を果たしたいところだろう。

組み合わせは大会開幕直前に発表される予定だが、過去の対戦成績をもとに考えると、大坂にも十分勝機がある。女王バーティ、世界ランク2位との過去戦績はともに2勝2敗で五分。残る最後の出場枠に食い込んでくる可能性の高いセリーナ・ウィリアムズとは2018年の全米オープン決勝で対戦し、勝利を収めている。完全復活を遂げた大坂が女王の座を奪う可能性は決して低くない。

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