Tokyo 2020(東京五輪)までのカウントダウンが進む中、バレーボール女子日本代表で今季、目覚ましい活躍を見せる選手がいる。アウトサイドヒッターの古賀紗理那(NECレッドロケッツ)だ。
熊本信愛女学院高校在学時から180センチを超える高さとレシーブ力で“ポスト木村沙織”と注目を集めた。現役高校生だった2013年に日本代表へ選出され、卒業後はNECに入団し、すぐにVリーグ制覇など目覚ましい活躍を残すと、木村に次ぐ大型エース候補として期待を寄せられた。
だが2016年のリオデジャネイロ五輪代表12名から“まさか”の落選。悔しさに打ちひしがれながらも、その経験をバネに「自分に足りないものを冷静に見つめ直すことができた」という古賀が、エースとしていままさに覚醒しようとしている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延で、昨年は東京五輪の延期も余儀なくされた。バレーボールの国内リーグに目を向けても、団体スポーツであり、なおかつ屋内球技は感染リスクも危惧されるため、チーム全体練習も思うようにできない。
だが、そんな状況でも、古賀は自らが高めるべき課題としてサーブレシーブと、スピードを活かした攻撃力アップを掲げ、克服に向け積極的に取り組んできた。
その成果はVリーグの2020-21シーズンでも存分に発揮され、優勝こそ逃しはしたが、チームを3位に導く大車輪の活躍を見せた。プレーのみならず、コート内外で周囲とも積極的にコミュニケーションを取る姿が目立ち、リーダーシップにも磨きがかかった。
日本代表がスタートしてからも、その姿勢や好調ぶりは変わらず、中田久美監督は今季、主将の荒木絵里香をサポートする副主将に古賀を指名した。
古賀は「自分じゃない方がいいのではないかと思ったけれど、指名していただいた以上、できることは精いっぱいやりたいと思った」と言うように、当初は戸惑いもあったと振り返るが、中田監督はそれだけ古賀に寄せる期待が高かったと明かす。
古賀紗理那
「物事に対する考え方、バレーに対しての取り組み方、新人に戻ったような非常にフレッシュなバレーに対しての考え方に替わった印象がありました。非常に調子がよくて、なおかつぶれない強さ、周りに流されることなく自分のやるべきことをしっかりやる真の強さをコートの中で出せている」
中田久美監督
「非常に頼もしく成長してくれているので、彼女にかかる期待も込めて、副キャプテンとして、リーダーシップを取っていってもらいたいと思っています」
5月1日に有明アリーナ(東京都江東区)で行われた1年7カ月ぶりの国際試合、世界ランキング1位の中国戦でも古賀はエースとして前衛、後衛からテンポのいい攻撃で得点を次々叩き出す。
個々のレベルや組織力が高い中国のブロック、ディフェンスに対してもブロックが完成する前に鋭いスパイクを打ち込むなど、今季重点的に取り組んできた成果を存分に発揮。チーム最多の17得点を叩き出した。
「FIVBワールドカップバレーボール2019」では完敗を喫した相手に対しても、ジュースにもつれる接戦を繰り広げる展開を見せたが惜しくも及ばず。勝負には敗れたが手応えはつかんだ。
現地時間25日からイタリア・リミニで開幕する「FIVBバレーボールネーションズリーグ2021」に向けても、中国戦で手にした成果、さらに合宿を通して磨き上げて来た技、組織力を見せたいと古賀は意気込む。
「ネーションズリーグは約1カ月続く長い戦いなので、メンバーも固定されずに戦うと思いますが、そこでもしっかり自分の役割を徹底したい。例えばセッターが誰になったとしても、そのセッターの強みを活かせる試合にしなきゃいけないと思っていますし、自分1人で考えるのではなくて、チームで勝つためにどうするかを考えたい」
そして「チームとして、オフェンスもディフェンスも連携を取りながらコートの中で約束事をどんどんつくって、その中で自分自身も存在感を出していきたいです」と語った。
真のエースとして挑むネーションズリーグ。東京五輪本番へ向け、古賀はさらなる進化を続ける。