テニスのグランドスラム(四大大会)について詳しく知ろう 各大会を徹底解説!

2 執筆者 渡辺文重
2019年全豪オープン優勝の大坂なおみ 今年は連覇とグランドスラム3勝目を目指す

1月20日から四大テニス大会「グランドスラム」の1つ、全豪オープンの本戦がオーストリア・ビクトリア州メルボルンで開幕する。森林火災の影響が心配されるほか、大坂なおみ(日清食品)の女子シングルス大会連覇が懸かるなど、日本からの注目度も高い。ここではグランドスラムを解説する。

■グランドスラム、名前の由来は?

テニスの四大大会を指す言葉として定着している「グランドスラム(Grand Slam)」。この言葉がテニス用語になったいきさつには諸説あるが、由来はトランプを使ったゲーム「ホイスト」において、全てのトリックに勝つことを「スラム」と呼んだことだとされている。「ホイスト」は「コントラクトブリッジ」の元となったゲーム。そしてコントラクトブリッジにおいて「グランドスラム」は、高難度の条件を達成した時に使用される用語となっている。

コントラクトブリッジの詳細については:日本コントラクトブリッジ連盟

テニスのグランドスラムは、コントラクトブリッジのグランドスラムが由来となるが、男子ゴルフにおいて主要大会を同一年に制覇する意味でグランドスラムが使われたことが、テニスでも適用されたと言われる。テニスのグランドスラムは元来、全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権、全米オープンを同一年内に制覇するという意味だが、四大大会の総称としても使用される。

■グランドスラムの歴史

四大大会は最初から「グランドスラム」だったわけではなく、それぞれ独立した歴史を持っている。

イギリス・ロンドンで開催されるウィンブルドン選手権は、最も長い歴史を持つテニストーナメントとして知られる。第1回大会(男子シングルスのみ)開催は1877年。女子シングルスは1884年からスタートしている。

全米OPは1881年、アマチュア大会として第1回が開催。1887年には女子シングルスが開始される。プロ選手が参加できるようにオープン化されたのは1968年で、現在のUSTA(全米テニス協会)ナショナルテニスセンターで開催されるようになるのは1978年からとなっている。

全仏OPは1891年、男子の国内選手権としてスタート。1987年に女子の大会も開始される。そして1925年、フランス人以外の参加も可能となり、1928年から現在のスタッド・ローラン・ギャロスで開催されるようになる。オープン化は1968年で、四大大会の中では最も早い。

全豪OPの前身は1905年に開催されたオーストラレージアン・テニス選手権。女子選手の参加は1922年からとなり、1927年からはオーストラリア選手権となる。オープン化は四大大会で最も遅い1969年で、全豪オープンと改称。開催地がメルボルンに固定されるのは、1972年からとなっている。

新聞などのメディアで「グランドスラム」という用語を使用するのは、1930年に「球聖」ボビー・ジョーンズ(アメリカ合衆国、以下米国)がゴルフの主要トーナメントを総なめにしたことがキッカケとされる。一方、テニスの四大大会制覇を初めて成し遂げたのはジョン・ドナルド“ドン”・バッジ(米国)で、1938年のこと。最初にドン・バッジが達成したグランドスラムは、同一年内に四大会連続で優勝する“年間”グランドスラムで、一般的にグランドスラム達成という場合は、年間グランドスラムのことを指す。

女子シングルスでは1953年、モーリーン・コノリー(米国)が初めてグランドスラムを達成。オープン化以降では、1962年にグランドスラムを達成したロッド・レーバー(豪州)が、1969年に再び達成している。

■グランドスラムはなぜ重要?

テニス選手にとって試合に勝つこと、トーナメントで優勝すること、それらは当然の目標である。それが多くの人から注目される、有力選手が参加する、あるいは長い歴史のある大会であるならば、なおさらのこと。四大大会「グランドスラム」は、それぞれが長い歴史があり、優勝することは栄誉であり、同時に多くの賞金を得られる機会となっている。

名誉や賞金。もちろん、これらの要素は大切だが、大きなトーナメントで勝利を収めることは、さらなる勝利を得るためにも重要な要素を含んでいる。それはランキングのポイントだ。グランドスラムは国際テニス連盟(ITF)によって公認・管轄される大会ではあるが、男子プロテニス協会(ATP)と女子テニス協会(WTA)は、その成績に応じてランキングポイントを与えている。

ATPランキングは直近52週間(約1年間)に出場した大会のうち、獲得したポイントが高い、上位18大会のポイントの合計で、WTAランキングは直近52週間の上位17大会におけるポイントの合計で競われる。ランキングが高ければ、予選を免除されたり、トーナメントでシードを与えられたりと優遇される。これは一大会だけでなく、年間ツアーを通じても、大きなアドバンテージとなるのだ。

ATPは、ATP250、ATP500、ATP1000、グランドスラムという格付けを行っているが、ATP250であれば優勝者に250ポイント(p)、ATP500では優勝者に500p、ATP1000では優勝者に1000pを付与している。そしてグランドスラムは、優勝者に2000pを付与。ベスト8でも360pが与えられるため、ATP250のツアーで優勝するよりも、多くのポイントを得られる。

WTAは、WTAインターナショナル、WTAプレミア、WTAプレミア5、WTAプレミアマンダトリー、グランドスラムと5段階のグレードを設けているが、プレミアマンダトリー優勝が1000pで、グランドスラム優勝が2倍の2000p。またインターナショナル優勝が280pで、グランドスラムでベスト16進出が240pということからも、その重要性が理解できるだろう。

■四大大会それぞれの特徴

全豪オープン

  • 開催地:メルボルンパーク(豪州ビクトリア州メルボルン)
  • 開催時期:1月中旬~1月下旬(2020年は2月2日まで)
  • コート:ハード
  • 賞金総額(2020年):7100万豪ドル(約53億8000万円)
  • シングルス優勝賞金:412万豪ドル(約3億1000万円)
  • 試合形式:ファイナルセットは、6-6から10ポイントタイブレーク(相手より2ポイント以上離して先に10ポイント取った方が勝者)

グランドスラムでは唯一の南半球開催大会。有力選手の多くはヨーロッパ出身のため、移動距離も長く、コンディションの調整も難しいため、“番狂わせ”が起こりやすいとされている。センターコートは、二度のグランドスラムを達成した豪州出身のテニスプレーヤー、ロッド・レーバーの名を冠した「ロッド・レーバー・アリーナ」。第1コートは、グランドスラム女子シングルス最多24勝のマーガレット・スミス・コートにちなんだ「マーガレット・コート・アリーナ」。

全仏オープン

  • 開催地:スタッド・ローラン・ギャロス(フランス・パリ)
  • 開催時期:5月下旬~6月上旬
  • コート:クレー
  • 賞金総額(2019年):4266万ユーロ(約52億1500万円)
  • シングルス優勝賞金:230万ユーロ(約2億8000万円)
  • 試合形式:ファイナルセットはアドバンテージ・セット(2ゲーム差を付けて6ゲーム先取した方が勝者)

会場名は、世界初の地中海横断飛行に成功したフランス人パイロット、ローラン・ギャロスの功績をたたえたもの。クレーコートはバウンドさせてからの球足が遅くなるため、ラリー戦が多くなる。こうした事情から、グラスやハードで好成績を収める選手でも、苦戦することがある。

ウィンブルドン選手権

  • 開催地:オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ(英国ロンドン)
  • 開催時期:6月下旬~7月上旬
  • コート:グラス
  • 賞金総額(2019年):3800万ポンド(約54億3000万円)
  • シングルス優勝賞金:235万ポンド(約3億3600万円)
  • 試合形式:ファイナルセットは12-12からタイブレーク

最も長い歴史を持つテニストーナメント。センターコートは原則、ウィンブルドン選手権でのみ使用される、試合や練習の際には白いウェアを着用するといった厳しい服装規定など、独特なルールが存在している。

全米オープン

  • 開催地:USTAビリー・ジーン・キング・ナショナルテニスセンター(米国ニューヨーク州ニューヨーク)
  • 開催時期:8月下旬~9月上旬
  • コート:ハード
  • 賞金総額(2019年):約5700万米ドル(約62億6500万円)
  • シングルス優勝賞金:385万米ドル(約4億2300万円)
  • 試合形式:ファイナルセットは6-6からタイブレーク

会場名に冠されたビリー・ジーン・キングは、1960年代から70年代にかけて活躍した、米国出身の女子テニス選手。キャリアグランドスラムを達成しているほか、男女の賞金格差是正に大きく貢献したことでも知られる。同施設内にあるアーサー・アッシュ・スタジアムは世界最大のテニス専用競技場。アーサー・アッシュはアフリカ系テニスプレーヤーの先駆者で、1968年の全米OP制覇ほか、キャリアグランドスラムを達成している。同施設にはジャズミュージシャン、ルイ・アームストロングの名を冠したスタジアムもあり、全米OPでも使用される。

■年間グランドスラム達成者

同一年内に四大大会を全て制覇することを「グランドスラム」、あるいは「年間グランドスラム」と言う。最初にグランドスラムを達成されたのは1938年のドン・バッジだが、男子シングルスで達成できた選手はもう1人、1962年と1969年の二度達成したロッド・レーバーのみとなっている。

女子シングルスも3人のみ。1953年のモーリーン・コノリー、1970年のマーガレット・スミス・コート、そして1988年のシュテフィ・グラフ(ドイツ)となっている。グラフは同年のソウル五輪でも優勝。唯一の「年間ゴールデンスラム」達成者となっている。

■キャリアグランドスラムとは?

キャリアグランドスラム、あるいは生涯グランドスラムは、同一年内に限らず、選手キャリアを通じて四大大会全てを制することを指す。年間グランドスラムに比べれば、かなりハードルは下がるイメージだが、それでも達成できた選手は僅かだ。

男子シングルス

  • 1937年 フレッド ペリー(英国)
  • 1938年 ドン バッジ(米国)
  • 1938年 ロッド レーバー(豪州)
  • 1964年 ロイ エマーソン(豪州)
  • 1999年 アンドレ アガシ(英国)
  • 2009年 ロジャー フェデラー(スイス)
  • 2010年 ラファエル ナダル(スペイン)
  • 2016年 ノバク ジョコビッチ(セルビア)

女子シングルス

  • 1953年 モーリーン コノリー(米国)
  • 1954年 ドリス ハート(米国)
  • 1957年 シャーリー フライ(米国)
  • 1963年 マーガレット スミス コート(豪州)
  • 1972年 ビリー ジーン キング(米国)
  • 1982年 クリス エバート(米国)
  • 1983年 マルチナ ナブラチロワ(米国)
  • 1988年 シュテフィ グラフ(ドイツ)
  • 2003年 セリーナ ウィリアムズ(米国)
  • 2012年 マリア シャラポワ(ロシア)

この中で、オリンピックを含む「生涯ゴールデンスラム」を達成しているのは4人。1988年ソウル五輪を制したグラフ、1996年アトランタ五輪を制したアガシ、2000年シドニー五輪・2008年北京五輪・2012年ロンドン五輪を制したS・ウィリアムズ、2008年北京五輪と2016年リオデジャネイロ五輪を制したナダルとなっている。フェデラーやジョコビッチはTokyo 2020(東京五輪)で金メダルを獲得すれば「生涯ゴールデンスラム」の達成となる。

■日本人の最高成績

ダブルスや車いすでは、四大大会で優勝を達成した日本人はいるが、シングルスでは、2018年全米OPと2019年全豪OPを制した大坂のみとなっている。四大大会における日本人最高成績(ベスト8以上)は以下の通り。

全豪オープン

  • 男子シングルス:ベスト4 佐藤次郎(1932年)
  • 女子シングルス:優勝 大坂なおみ(2019年)

全仏オープン

  • 男子シングルス:ベスト4 佐藤次郎(1931年、1933年)
  • 女子シングルス:ベスト4 伊達公子(1995年)
  • 女子ダブルス:優勝 杉山愛(2003年)
  • 混合ダブルス:優勝 平木理化(1997年)

ウィンブルドン選手権

  • 男子シングルス:ベスト4 清水善造(1920年)、佐藤次郎(1932年、1933年)
  • 女子シングルス:ベスト4 伊達公子(1996年)
  • 女子ダブルス:優勝 沢松和子(1975年)、杉山愛(2003年)
  • 混合ダブルス:優勝 三木龍喜(1934年)

全米オープン

  • 男子シングルス:準優勝 錦織 圭(2014年)
  • 女子シングルス:優勝 大坂なおみ(2018年)
  • 男子ダブルス:優勝 宮城 淳・加茂公成(1955年)
  • 女子ダブルス:優勝 杉山 愛(2000年)
  • 混合ダブルス:優勝 杉山 愛(1999年)

■2020年のグランドスラム日程(本戦)

  • 1月20日~2月2日 全豪オープン
  • 5月24日~6月7日 全仏オープン
  • 6月29日~7月12日 ウィンブルドン選手権
  • 8月31日~9月13日 全米オープン

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■グランドスラムを視聴するには?

日本におけるテニスの四大大会「グランドスラム」のTV放送は、有料衛星放送サービス「WOWOW」が独占している。つまりグランドスラムを視聴する上で、WOWOWとの契約は必須となっている。

テニス:WOWOWオンライン

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