AFC U23選手権タイ2020が1月8日から26日にかけて開催された。東京五輪の最終予選を兼ねており、日本は4年前の同大会で優勝してリオデジャネイロ五輪への出場権を手にしている。今回は開催国枠での五輪出場が決まっているため、チーム強化を図るべく臨んだが、無残にも3戦未勝利で敗退となった。
日本は初のグループステージ敗退
東京五輪の最終予選を兼ねて開催されたAFC U23選手権タイ2020。すでに開催国枠で五輪出場権を手にしているU−23日本代表は、オリンピック本番に向けてチーム強化を図るべく臨んだ。しかし、結果は1分け2敗。グループステージ最下位と無残な敗退を喫した。
貴重な公式戦の場だったが、他国との温度差は顕著だった。初戦のサウジアラビア戦を1−2で落とすと、続くシリアとの一戦も1−2で敗れ、この時点でグループステージ敗退が決定した。カタールとの最終戦は1−1の引き分けで、まさかの3戦未勝利。東京五輪に向けて弾みをつけるどころか、2013年の大会発足以来、初のグループステージ敗退という不安を残す結果に終わってしまった。
3チームに与えられる東京五輪行きの切符は、決勝に進出した韓国、サウジアラビアと、ウズベキスタンとの3位決定戦を制したオーストラリアが獲得した。
「唯一の海外組」食野が積極果敢なアピール
今大会は国際Aマッチデーでの開催ではなかったため、選手の招集に拘束力はなく、海外組のほとんどが参加を見送られた。一方、国内組はシーズンオフ期間中にあたり、各選手のコンディションはバラバラで、開幕前から厳しい戦いが予想されていた。
そんな状況でひとり気を吐いたのが「唯一の海外組」として出場した食野亮太郎(ハーツ/スコットランド)だ。食野は全3試合に先発出場し、初戦のサウジアラビア戦では積極果敢な突破から好機を演出した。ただ、本人は今大会でのパフォーマンスに危機感を募らせており、18人しか選ばれないオリンピック代表メンバーに生き残るため、さらなる進化を誓っている。
GKは、大迫敬介(サンフレッチェ広島)が3試合とも先発の座を譲らなかった。計5失点は悔いの残る結果となったが、そのうち3失点はPKによるもの。3試合を通して安定感は維持しており、U−23日本代表の正守護神候補として、森保一監督からの信頼をより厚くしたと言っていい。
橋岡大樹(浦和レッズ)も過密日程のなかで3試合フル出場を果たした一人だ。2試合はウイングバックで、最終戦は右ストッパーで出場し、持ち前の積極的な攻撃参加だけでなく、万能性をアピールした。
同じウイングバックでは相馬勇紀(名古屋グランパス)も好アピールに成功した。今大会では両サイドでプレーできる順応性を示しただけでなく、運動量やキレのあるドリプルも好印象で、シリア戦ではミドルシュートを沈めてゴールを奪った。
予想外の早期敗退、「VAR制度」への対応力も課題に
東京五輪本戦前では最後の公式戦だった今大会がわずか3試合で終了してしまい、今後は活動機会も限られる。激しい代表選考サバイバルを繰り広げる選手たちにとっては、不完全燃焼に終わってしまったという印象が強いだろう。
だが、4年前の同大会では入念な準備を行い、見事に優勝を飾ってリオデジャネイロ五輪の出場権を手にした一方、十分なシーズンオフを確保できなかった選手たちのなかには、シーズン中にコンディションを落としてしまう者もおり、結果、リオデジャネイロ五輪は惨敗となった。今大会で見られたU−23日本代表の姿がピークの状態ではなかったことが、オリンピック本戦に向けたプラス材料と言える。
また、今大会でU−23日本代表が露呈した課題は、「VAR」(ビデオ・アシスタント・レフェリー)への対応力だ。サウジアラビア戦では終了間際に、シリア戦では開始早々にPKを与え、カタール戦ではVARの介入により田中碧(川崎フロンターレ)がレッドカードの提示を受けた。
VARの導入目的は「誤審をなくす」ことだが、選手たちからは「ゴール前では相手が積極的に倒れてくる。その戦い方も学べた大会だった」という声もあがっているように、選手側にもある程度の慣れが求められる。幸いにもJ1リーグでは今季からVARが導入される予定で、東京五輪までには改善が見込めそうだ。