東京オリンピックがこれからの日本にもたらす4つのプラス要素

2020年の東京五輪は日本人の英語力向上も促す

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東京の街並み

オリンピックは開催国のスポーツ力を伸ばすだけではない。1964年の東京五輪が示したように、国全体の力を底上げするきっかけになる。来る2020年の東京五輪では、経済効果と観光産業の活性化、暮らしやすい環境づくりと世界で活躍するための英語力の向上が見込まれる。

1964年の東京五輪は「1兆円オリンピック」

1964年の東京五輪がなければ、日本は現在とは異なる国になっていたかもしれない。そう言えるほど、今の日本における東京五輪の存在意義は大きい。

戦後の日本史を振り返る時、「オリンピック景気」が果たした役割は見逃せない。1964年の東京五輪が終わるまでの2年間、日本は文字どおり好景気を体験していた。1959年5月26日、自国で初めてスポーツの世界大会を開催することが決まった時、日本は世界中のアスリートとスポーツファンを受け入れる国づくりを進める必要に迫られた。

1964年、10月10日に開幕する東京五輪直前に現在の交通網の原型が出来上がった。首都高速道路と、東京-新大阪間を結ぶ東海道新幹線が開通している。同年には羽田空港が増築され、東京モノレール羽田空港線も完成した。東京五輪に向けた交通機関の新装は当然、それだけの雇用を生み出し、経済を活性化させた。東京五輪の会場となる日本武道館、国立代々木競技場、駒沢陸上競技場などの建設も、大きな経済効果をもたらしている。予算が1兆円を超えたことから「1兆円オリンピック」とも呼ばれる1964年東京五輪は、その総事業費を働き手や国民にほぼ戻したと見ていいだろう。

オリンピックを自宅で観戦するためにテレビなどの個人消費も高まり、好景気に拍車をかけた。交通網などのインフラが整備された1964年の東京五輪が示すように、オリンピックは開催国に大きな経済効果をもたらす一大イベントと言っても過言ではない。

ロンドン五輪は観光客の増加につながった

近年では2012年のロンドン五輪が、オリンピックを巧みに国のブランディングに活用している。

2013年7月に英国の投資貿易総省が発表した『London 2012: Delivering the economic legacy』という報告書によると、ロンドン五輪は 99 億ポンドの経済的利益を生じたという。2012年の平均為替レートは1ポンド=約126円だから、日本円にして約1兆 2474億円だ。

オリンピック関連による販売増が59億ポンド、海外からの投資増が25億ポンド、海外イベントなどの契約増が15億ポンドだった。「海外」という言葉は目を引く。オリンピックは世界的な祭典だから、必然的に国外から関心を寄せられる。大会中は国外からの観光客が増える。

ロンドン五輪はオリンピックの力を国内の地方にも展開した。大会に絡めて12万近い文化イベントを開催して、国民の参加意識を高めると同時に、国外からの視線を地方都市にも促した。オリンピックを地域活性化や観光振興にも結びつけた結果、ロンドン五輪が行われた2012年から2017年までで、訪英観光客の数は25%も増えたというデータもある。

地球規模で行われるオリンピックは外国人に自国の文化を知ってもらう大きなきっかけになる。政策の一つに「訪日旅行促進事業」を掲げている日本にとって、2020年の東京五輪は観光交流をさらに推進するための絶好の機会と言える。

2020年に向け環境と人に優しいタクシーが登場

1964年の大会が日本全体のインフラを整備したように、2020年の東京五輪もさらに暮らしやすい環境を用意する役割を担っている。

オリンピックファンの受け入れ態勢としては、成田空港と羽田空港の強化が挙げられる。東京五輪を見据えた首都圏空港の機能向上と、それに伴う発着便の増加は「訪日旅行促進事業」にも絡む。高速道路では首都高速道路中央環状線、東京外かく環状道路、首都圏中央連絡自動車道という首都圏3環状道路が2020年までにほぼ完成する予定。東京を中心とする地域の移動が今まで以上に楽になる。渋滞緩和や物流ネットワークの強化だけでなく、災害時には緊急輸送道路として機能することも期待される。

道路で言うと、最近よく目にするのが従来のものよりやや丸みを帯びたタクシーだ。東京五輪のワールドワイドオリンピックパートナーであるトヨタ自動車が2017年から発売している「ジャパンタクシー(JPN TAXI)」で、タクシー会社が希望すれば東京五輪のエンブレムを側面にあしらうことができる。

オリンピックパートナーが世に送り出した「ジャパンタクシー」はLPガスと電気モーターを使ったハイブリッド車だ。環境と人に優しい。ガソリンに比べて排気ガス中の有害物質が少ないLPガスはこれまでのタクシーにも使われていたが、「ジャパンタクシー」は足腰の弱い高齢者や車椅子の利用者、ベビーカーを使う親子や妊娠中の女性なども乗りやすいユニバーサルデザインとなっている。

2020年の東京五輪に向けては、公共交通機関のバリアフリー化も推し進められている。世界中から人が集まるからこそ、オリンピックは快適な生活環境づくりも促進してくれる。

2020年を軸に日本人の英語力が向上

2014年、日本の文部科学省は、東京五輪を迎える2020年を見据えて、小・中・高等学校を通じた新たな英語教育の充実・強化を進める方針を決めた。

いわゆる英語教育改革はグローバル化の加速を考慮した取り組みで、世界のさまざまな地域で使われている英語をコミュニケーションツールとして身につけさせるのが狙いだ。2020年度から公立小学校では全面的に英語の授業が導入される。3、4年生は必修、5、6年生は段階評価が行われる教科となる。

東京五輪と英語教育改革を見通して、東京都港区や品川区、神奈川県横浜市といった自治体はすでに公立小学校でも英語の授業を行っている。早くから英語になじんだ子どもたちの多くは「英語を使うことは特別な行為ではない」という意識を強めるはずだ。世界の多様性にも触れる英語の授業を通して国際的な視野も身につけ、世界に羽ばたいていく可能性を高めていく。

2020年の東京五輪は、文部科学省の決定も後押しし、日本のグローバル化を加速させ、日本人が活躍する舞台を広げるきっかけにもなっている。

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