自転車は19世紀に発明されると、わずか100年で飛躍的な進化を遂げる。より速く、より安全になったことでスポーツとしても親しまれ、公道(ロード)レースは第1回の近代オリンピックでも採用。1903年にはツール・ド・フランスもスタートする。ここではロードレースの起源や強豪国、代表的な大会を紹介する。
■何から起こった?いつから競技化?
車輪の起源は6000~7000年前の古代メソポタミアにさかのぼることができる。車輪は人類にとって重要な発明だったが、自転車の起源は1817年、カール・フォン・ドライス(ドイツ)によって発明された「ドライジーネ」と新しい。ドライジーネはペダルで車輪を動かすのではなく、足で地面を蹴って進む“ランニングマシーン”だったが、この二輪車は19世紀のうちに劇的な進化を遂げる。1861年、フランスのミショー親子により、ペダルで前輪をこぐ「ボーンシェーカー」が発明されると、1870年代からはハイホイール自転車が流行。1880年代に入ると安全性が考慮され、イギリスのハリー・ジョン・ローソンが後輪を回す「ビシクレット」を発明する。これが自転車を表す英単語「バイシクル(bicycle)」の語源となった。
1868年5月31日、フランス・パリ郊外のサン=クルー公園で約1200メートルの自転車レースが行われた。これが一般的に、自転車競技の起源だとされている。公道を走る最初のロードレースと言えるのは1869年11月7日、パリ・ルーアン間の135キロで行われたレースで、イギリス人のジェームズ・ムーアが勝利を収めている。
その後、自転車ロードレースはヨーロッパ大陸やアメリカ合衆国で盛んに行われるようになり、1896年の第1回近代オリンピック・アテネ大会でも採用された。ロードレースは87キロで争われ、アリスティディス・コンスタンティニディス(ギリシャ)が3時間22分31秒で制している。この当時ですでに長時間走行時に疲れにくい前傾姿勢で走るためのドロップハンドルが導入され、1910年代以降本格的に定着した。
そして1903年、世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」がスタートする。第1回の優勝者はモリス・ガラン(イタリア→フランス)だった。1909年にはイタリアのジロ・デ・イタリア、1935年にはスペインのブエルタ・ア・エスパーニャが始まり、この3つが自転車3大レース、"グランツール"と呼ばれる。
参考:
■強豪国とその背景は?
国際自転車競技連合(UCI)では各種目の世界ランキングを公表しているが、2020年4月時点の個人成績(エリート)では、男子が3315名、女子が1067名登録されている。これが世界トップレベルの競技人口となる。UCIでは国・地域ごとのランキングも発表している。男子が1位からベルギー、イタリア、フランス、コロンビア、オランダ(日本は36位)、女子は1位からオランダ、イタリア、ドイツ、アメリカ合衆国、オーストラリア(日本は23位)となっている。
ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン)という自転車ロードの3大レース"グランツール"が開催されるヨーロッパは、自転車競技の人気が高く、こうした背景から多くの優秀なライダーが生まれている。一方コロンビアは1980年代、出身選手がヨーロッパのロードレースで活躍したことを受け、高い人気を獲得する。コロンビアは2012年から2015年にかけてUCIプロチームとして、ヨーロッパのロードレースに参加。国家として自転車競技に力を入れていることが背景にある。
■どんなリーグや大会がある?
自転車競技・ロードは大きく「クラシックレース」と「ステージレース」の2つに分けられる。クラシックレースはワンデーレースとも呼ばれ、1日に行われる1レースで勝敗を決する。ベルギーで行われる「フレッシュ・ワロンヌ」や「パリ~ルーベ」などが、代表的なクラシックレースと言える。ステージレースは複数日に分けて行われるレースで、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャといったグランツールに代表される。
またUCIは年間シリーズ戦として「ワールドツアー」を整備。グランツールやフレッシュ・ワロンヌなどを含めた全38大会で年間王者を決める。また毎年、UCIロード世界選手権大会も開催。世界選手権はワンデーレースで、国・地域ごとで争われる。