確実な記録は残されていないが、人類は歴史が記される以前から、泳ぐ技術を得ていたと考えられている。しかし、古代オリンピックで競泳は採用されておらず、平泳ぎを除く泳法は、100年程度の歴史しか存在しないのである。ここでは競泳の起源や各泳法の確立、日本の水泳人口などを解説する。
■オリンピックにおける競泳の歴史
河川や池、湖、海などの水面あるいは水中を移動する手段としての水泳は、人類史と同じ程度の歴史があると考えられている。古代文明の壁画には水泳と思われる描写が存在するほか、古代ギリシャでは水泳が行われていた記録も存在する。ただし、古代オリンピックは陸上競技がメインであったため、水泳競技が採用されていた記録は存在しない。なお近代オリンピックでは、1896年の第1回アテネ大会より競泳が採用されている。
水泳がスポーツ競技として確立され、競泳競技として最初の大会が行われたのは、1837年のイギリスでのこと。約60年後、アテネ五輪でも競泳は行われたが、この時の種目は「自由形」のみだった。自由形はその名の通り、泳法を自由に選択できるという意味だが、当時のアテネ五輪の自由形は実質「平泳ぎ」だったとされる。
古代ギリシャ時代でも似た泳法が採用されていていたと言われるほど、「平泳ぎ」は長い歴史を持つ。しかしアテネ五輪後に生み出された「背泳ぎ」が、競泳界を席巻。結果、第2回のパリ大会では「背泳ぎ」が独立種目として採用される。さらに「クロール」が登場。第3回のセントルイス大会では「平泳ぎ」が独立種目となり、「自由形」はクロール泳法の独壇場となる。一方「バタフライ」は「平泳ぎ」から発展。「平泳ぎ」種目でバタフライ泳法を採用する選手が増えたことから、1956年のメルボルン五輪からは「バタフライ」が独立種目として採用されることとなった。
■日本の水泳競技人口は?
日本においても、水泳の歴史は長い。日本水泳連盟(JASF)でも「日本泳法」に関する研究、競技会などを実施。その成果は、JASF公式サイトでも確認できる。なお日本における水泳人口は約1300万人と推計。子供の習い事ランキング(2017年調査)でも1位となっている。
■強豪国とその背景は?
水泳は「日本のお家芸」のひとつと言われており、これまでのオリンピックで合計80のメダルを獲得している。これは体操の98、柔道の84に次ぐ、3番目の多さだ。リオデジャネイロ五輪でも、400m個人メドレーで萩野公介、200m平泳ぎで金藤理絵が金メダルを獲得している。
しかし、現在水泳の強豪国と言えば、中国、アメリカ合衆国、ロシアが挙げられる。この3カ国は、世界水泳2019光州(韓国)におけるメダル獲得数のトップ3となっている。これに次ぐのがオーストラリア、ハンガリー、イタリア、英国、ドイツ、ブラジル、カナダ。日本は瀬戸大也が2冠を達成するも、メダル獲得数11位という結果に終わった。
強豪国の強豪たるゆえんは、それぞれに異なる理由があり、簡単に説明できるものではないが、国家レベルで強化に力を入れていることは共通している。自国開催となる東京五輪は、これまで行ってきた日本競泳界の積み重ねが結実する場となるはずだ。
■どんなリーグや大会がある?
競泳において最も重視される大会はオリンピック、そして2年に一度開催されるFINA(国際水泳連盟)世界選手権、通称「世界水泳」だ。FINA主催の国際大会としては毎年6~9回行われているワールドカップ、あるいは2019年に設立された団体戦高額賞金大会・国際水泳リーグ(ISL)が、トップスイマーの集う大会に挙げられる。また、オリンピックで採用されている長水路(50mプール)とは別に、短水路(25mプール)の大会も開かれている。