Tokyo 2020(東京五輪)の日本代表選考会を兼ねた「第75回全日本体操種目別選手権」は6月5日(土)と6日(日)に高崎アリーナで開催。種目別の鉄棒で出場した内村航平は、跳馬の米倉英信と選考ポイントで並んだが、タイブレークで上回り、4大会連続のオリンピック出場を決めた。
貢献度により決まる男子団体メンバー残り2枠には、谷川航と北園丈琉を選出。男子団体はNHK杯優勝の橋本大輝と2位の萱和磨も含め、全員がオリンピック初出場とフレッシュな顔ぶれになった。
■内村がリオ五輪以降の世界最高得点をマーク、米倉を振り切る
内村は5日の予選でH難度のブレッドシュナイダーをはじめ、カッシーナ、コールマンといった離れ業や伸身新月面着地を完璧に決めて、15.766とリオデジャネイロ五輪以降では世界最高得点を叩き出した。
6日の決勝では15.100と2位に終わるものの、15点台をキープ。4月の全日本個人総合選手権(予選、決勝)、NHK杯と代表選考3大会全て15点台をマークし、最後まで個人枠争いを繰り広げてきた米倉に代表選考3大会の成績で上回った。
内村は決勝の演技に納得ができていなかった模様で、試合後インタビューでは「もうだめです。ポイントで競っていた米倉にすごく申し訳ない」と個人枠で五輪代表争いをしていた米倉に謝罪した。「代表を勝ち取るのであれば、良い演技をして勝ち取りたかった。決勝の演技で着地した瞬間、五輪に行けないと考えていた」と続ける。
「これで行っても良いのだろうか。今日の鉄棒ではレジェンドやキングとは言えない。もっと練習をする必要がある」と、これまでオリンピック2大会連続で個人総合を制している内村は、世界の厳しさを実感しているからこそ、15点台では五輪で通用しないと考えていたようだ。
東京五輪の男子団体メンバーには、内村より10歳前後年下の選手が選出されたことについては、「ニュージェネレーションの後だったので、(演技が)非常にやりづらかった。だが、若い力に負けないよう、これまでの経験を下の代へ伝えていかないといけない。チームとしては一緒にしませんが、演技以外で役割があるので鉄棒以外でも頑張りたい」と、若い世代で構成された男子団体の全面サポートを誓った。
■実績を買われた谷川航とひじのケガを克服した北園が残り2枠に飛び込む
男子団体メンバー残り2枠は、谷川航と北園丈琉に決定。谷川航はNHK杯で3位に食い込み、4月の全日本個人総合選手権では2位に入っている。5日の予選では4種目にエントリー。平行棒とつり輪を14点台でまとめ、2019年世界選手権団体銅メダルの実績を評価されての選出だった。
ひじの回復具合が心配された北園は、つり輪以外の種目で予選から出場し、跳馬と平行棒で15点台、床、あん馬、鉄棒で14点台を記録。決勝でもパフォーマンスが落ちることはなく、代表4番目の椅子を確保した。
東京五輪の男子団体には、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得した選手が1人も入っていないが、個人枠で2大会連続個人総合を制した内村が全面バックアップを約束。2大会連続の金メダルに向け、新世代の選手たちが躍動できるのか楽しみである。
一方、女子の女子団体メンバーは、5月のNHK杯にて4選手がすでに決定している。6月6日に行われた決勝では東京五輪の女子団体に選出された選手が独占し、NHK杯優勝の村上茉愛が跳馬と平均台、同2位の畠田瞳が段違い平行棒、同4位の杉原愛子が床を制した。
■女子個人枠は、種目別W杯3連勝中の芦川が有力か
個人枠は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、昨年3月から延期されていた種目別ワールドカップシリーズ最終第8戦が、6月23日から26日にカタール・ドーハで行われることが発表された。
2018-2020種目別W杯シリーズ最上位の選手には、個人枠として出場権が与えられ、女子は芦川うららが2019年ドイツ・コトブス大会から平均台で3連勝。8大会中のベスト3のポイントによるため、東京五輪出場権をほぼ確実としているほか、男子もあん馬の亀山耕平と跳馬の米倉が可能性を残している。