バドミントン男子ダブルス:強豪国の牙城を崩し、東京五輪で新たな歴史を

遠藤大由選手(左)と渡辺勇大選手(右)

日本のバドミントンが強くなった。これまでオリンピックでメダル争いにすら加われなかった男子ダブルスでも、優秀なコーチを招聘し、選手育成を強化するなど、その改革の成果が現れ始めている。2018年中国の南京で開催された世界選手権男子ダブルスで、日本代表ペアが世界ランキング1位のインドネシア代表ペアを破り、史上初めて決勝まで進んだ。これは大きな自信となったことだろう。また、現在の世界ランキングベスト10に、日本代表ペア2組がランクインしており、2020年東京五輪でのメダル争いに参戦するための地盤は固まりつつあるようだ。

過去オリンピックでのメダルはゼロ

バドミントンがオリンピック競技になったのは1992年バルセロナ五輪からだ。これまで7大会が行われたが、日本の男子ダブルスがメダルを獲得したことは一度もない。

ただ、主要な国際大会での金メダルはないが、2007年、2015年、2017年の世界選手権で3位(銅メダル)、BWFスーパーシリーズファイナルズでは、2012年と2016年に2位(銀メダル)、2014年と2017年に3位(銅メダル)を獲得している。

過去に活躍した選手が日本代表のコーチに

1960〜1970年代、当時、世界最高峰とされていた全英オープンで、日本の女子選手は、シングルス、ダブルスの両方で大活躍している。一方、男子は1966年にシングルスで秋山真男が準優勝、2010年にノーシードから田児賢一が勝ち上がり、準優勝するまでの44年間、まったく入賞することはなく、男子ダブルスについては皆無だった。ところが2013年に早川賢一・遠藤大由ペアが準優勝すると、2014年、2016年も準優勝を果たす。

早川は2012〜2014年の全日本総合選手権男子ダブルスで3連覇を達成。また、2013〜2014年の同大会混合ダブルスで2連覇を果たした。その後、2015年にジャカルタで開催された世界選手権男子ダブルスで3位、2016年リオデジャネイロ五輪で5位に入賞するなど、数々の素晴らしい戦績を残している。2017年に現役を引退し、現在はナショナルチームのコーチだ。

現役時代に無敵の強さを誇り1992年バルセロナ五輪男子ダブルスで金メダルを獲得した朴柱奉(パク・ジュボン)という韓国代表選手がいた。一度は現役を退いたが、1996年アトランタ五輪で混合ダブルスが採用されると、混合ダブルスに出場し、銀メダルを獲得する。その後、イギリスやマレーシアで選手育成に務め、2004年にオファーを受けて日本代表ヘッドコーチに就任。弱かった日本を技術、精神の両面から鍛え直して、日本のバドミントンをV字回復させた立役者と言われている。母国の韓国からヘッドコーチ就任のオファーを受けたが、日本バトミントン協会との約束を優先し、2020年東京五輪までヘッドコーチを務める契約を延長してくれたという。

頭ひとつ抜けた嘉村・園田ペア

2018年12月時点の男子ダブルスの世界ランキングは、嘉村健士・園田啓悟ペア3位、遠藤大由・渡辺勇大ペア8位、井上拓斗・金子祐樹ペア11位、保木卓朗・小林優吾ペア23位の4組が50位以内に入っている。10位までに5組がランクインし、トップ3を独占している女子ダブルスと比較してしまうと、物足りなさを感じるかもしれないが、ベストテンに2組が入ることは一昔前にはなかった。

日本バドミントン協会が発表した同時期の日本ランキングを見てみると、園田啓悟・嘉村健士ペア1位、遠藤大由・渡辺勇大ペア2位、井上拓斗・金子祐樹ペア3位・保木卓朗・小林優吾ペア4位、井上拓斗・岡村洋輝ペア古賀輝・齋藤太一ペア5位・小林優吾・下農走ペア、橋本博且・佐伯祐行ペア6位、小野寺雅之・岡村洋輝ペア7位、松居圭一郎・竹内義憲ペア8位、金子真大・久保田友之祐ペア9位、高野将斗・塚本好喜ペア10位となっている。

また、先日、2019年の男子ダブルス日本代表内定選手が発表(2018年12月11日に正式決定)された。井上拓斗・金子祐樹、遠藤大由・渡辺勇大、岡村洋輝・小野寺雅之、金子真大・久保田友之祐、古賀輝・齋藤太一、園田啓悟・嘉村健士、保木卓朗・小林優吾の7組だ。注目されるのは、世界ランキング、日本ランキングでトップの嘉村健士・園田啓悟ペアだろう。他のペアとはランキングでかなりの差がついており、2020年東京五輪の出場が有力視されている。

2018年8月の中国・南京で開催された世界選手権で、嘉村・園田ペアは準々決勝で、現在、世界ランキング1位のギデオン・スカムルヨというインドネシア代表ペアを撃破した勢いに乗り、史上初の決勝進出を決めたが、結局、中国代表ペアに敗れて悔しい銀メダルとなった。ただ、着実にステップアップしており、今後に大きな弾みがついたことだろう。

6カ国の牙城を崩し、新しい歴史を刻め

1992年のバルセロナ五輪以来、メダル争いは、中国・韓国・インドネシア・マレーシアのアジア勢4カ国に、イギリス・デンマークが絡むという展開が繰り広げられてきた。2018年8月にインドネシアのジャカルタで開催されたアジア大会の男子ダブルスは、1974年以来44年ぶりに同国ペアの対決となり、地元インドネシアが金・銀メダルを獲得するなど破竹の勢いを見せた。ただ、アジア大会で金メダリストとなった世界ランキング1位のギデオン・スカムルヨというペアに対する、直近1年間の勝敗をみてみると、世界ランキング上位のライバルペアたちがいずれも負け越している中で、園田・嘉村ペアだけが2勝2敗と五分の戦績を残している。2020年東京五輪でバドミントン男子ダブルスに新たな歴史が刻まれる可能性は十分にあるのだ。

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