7月25日、Tokyo 2020(東京五輪)の男子バスケットボール競技がさいたまスーパーアリーナで開幕する。2019年のFIBA(国際バスケットボール連盟)ワールドカップ予選で結果を残したことを受けて、無事開催国としての出場を認められた男子日本代表にとって、オリンピックに参戦するのは1976年のモントリオール大会以来のことだ。
日本はスペイン(FIBAランキング2位)、アルゼンチン(同4位)、スロベニア(同16位)という強豪国が揃ったグループCに所属。初戦は26日の2019年のワールドカップ王者であるスペインとの対戦だ。
日本はNBAのワシントン・ウィザーズで活躍する八村塁、2020-21シーズン中にトロント・ラプターズとの本契約を勝ち取った渡邊雄太、そしてオーストラリアのNBLでメルボルン・ユナイテッドの一員として見事優勝を果たした馬場雄大といった、いわゆる海外組がロスター入りしている。バスケットボールの日本代表チームに海外でプレイする選手がいるということ自体、まだ慣れない人も多いかもしれない。それだけここ数年の代表事情は大きく変わっているのだ。
さらに大きな変化としてあげられるのは、各国ひとりまでロスター入りさせることができる帰化選手だ。ワールドカップまでは川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカスが務めた枠だったが、その後は多くの選手が帰化し、誰がその枠を勝ち取るのか注目されていた。
最終的に今大会の帰化枠で入ったのは千葉ジェッツのギャビン・エドワーズ。オリンピック前に行なわれたベルギー、フランスとの強化試合では、八村や渡邊との相性の良さも見せており、貢献が期待される。
もちろん期待されているのは海外組や帰化選手だけではない。リーグとしてレベルアップを続けるB.LEAGUEで、日々しのぎを削る国内スター選手たちの活躍も必要不可欠だ。代表では普段と違うポイントガードの役割を任されるキャプテンの田中大貴(アルバルク東京)、独特なリズムから得点を生み出す比江島慎(宇都宮ブレックス)、昨季のリーグMVPに輝いた金丸晃輔(島根スサノオマジック)、日本人初の1億円プレイヤーとなった富樫勇樹(千葉ジェッツ)など、これまでの代表チームやオールスターチームの常連が揃う。
そして張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)の身体を張った献身的なプレイ、これまで長年代表を支え続けた竹内公輔・譲次兄弟の代わりに選出されたと言っても良いであろう、シェーファーアヴィ幸樹(シーホース三河)と渡邉飛勇(琉球ゴールデンキングス)ら若手ビッグマンコンビにも期待したい。
12チームが3グループに分かれて戦う予選ラウンドで、勝ち上がれるのは8チーム。各グループの上位2チームと、3位チームのうち成績上位2チームが勝ち上がるわけだが、日本としてまず目標として掲げている1勝を手にすることが重要だ。
1勝を目標として掲げると「勝ち上がる気がないのか」という声も出るかもしれないが、日本はワールドカップで全敗に終わっており、そもそもこういった大きな世界大会での経験が非常に少ない。1試合ずつ、目の前のタスクに全力で取り組み、1勝を狙うことの重要さは大きい。そして内容次第では1勝でも準々決勝に勝ち進む可能性は十分に存在する。
今大会のメダル候補には、アメリカ合衆国、スペイン、フランス、アルゼンチン、オーストラリアなどの名前が挙がる。アメリカは多くのビッグネームの辞退があったものの、ロスター全員が世界のトップリーグであるNBA選手であり、ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)を筆頭に、その戦力は変わらず強大だ。先日行われたNBAファイナルを終えたばかりの選手が3人いるなど、チーム全体での活動時間の少なさという懸念は残る。
アメリカと同グループのフランスは、ワールドカップでアメリカを敗退に追い込んだ存在であり、初日から対戦することもあって注目を集めている。そして日本と同グループであるスペインとアルゼンチンは、ワールドカップ決勝を戦ったチーム。お互いを強く意識しているはずだ。
まだ国際大会でメダルを獲得したことがないオーストラリアは、4度目のオリンピック出場を果たすパティ・ミルズ(サンアントニオ・スパーズ)を筆頭に、これまでチームを牽引してきたベテラン選手たちが軸。その上に成長著しい若手選手を加え、今大会屈指のタレントレベルを揃えている。
その他の国も険しい道をかきわけて出場を果たした。世界中のバスケットボールレベルは年々上昇を続けており、アメリカだけが別格というかつてのような図式ではなくなっている。注目すべきポイントは多く、これ以上とないレベルの戦いが繰り広げられるはずだ。