「お家芸」男子体操ニッポン、一番乗りで東京オリンピックの切符を獲得

2018年、男子団体総合は世界選手権(カタール・ドーハ)で銅メダルを獲得し、開催国枠ではなく自力での東京五輪出場を決める

戦後まもないころから、世界に存在感を示した体操ニッポン男子。80年代から長い低迷期を経験するも、2004年のアテネ五輪で見事によみがえり、圧倒的王者、内村航平選手を筆頭に2016年リオデジャネイロ五輪では、団体総合、男子個人で2つの金メダルを日本に持ち帰った。東京五輪での活躍が大いに期待される中、2018年10月に開催された世界体操競技選手権で、他のオリンピック競技に先駆けて、団体総合の出場権をつかみ取った。地元開催となるオリンピックで、前回大会を上回る結果を残せるのだろうか。

ダイナミックな演技の連続

体操競技の種目は6つ

男子の体操競技種目は、団体総合、個人総合、ゆか、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒となる。

団体総合は、各国1チームで演技を行い、合計得点で争う。個人総合は、すべての種目を1人の選手が演技して、合計得点を競う。種目別では、各種目の得点上位の選手が決勝で争う。技の難しさを得点化したDスコア(演技価値)と、演技の完成度を得点化したEスコア(演技の美しさやできばえ)の合計得点を争う採点方式となっている。

このほか、男子はトランポリンもある。予備ジャンプに続いて行う10本のジャンプ演技で、技の完成度を見る演技点、回転とひねりの数を見る難度点、滞空時間を計測する跳躍時間点、ベッド上の平行移動を見る移動点が採点され、その合計点数を競う。

種目ごとに違う見どころ

〈ゆか〉 12メートル四方の演技面の上でアクロバティックな跳躍技を披露する。演技時間は最大70秒。時間超過や演技面のラインをはみ出すと減点となる。

〈あん馬〉 乗馬のくらを模した器具の上で、腕のみを使って体を支え、旋回したり振動したりするダイナミックな種目だ。日本が一度も金メダルを取ったことがない種目。

〈つり輪〉 マットから高さ260センチの2つの輪を握ったまま、振動技、力技、静止技を披露。最も腕力が求められる種目として知られる。

〈跳馬〉 床面から135センチの高さに設定された台に手をついて飛び越す。このときにひねりや宙返りを披露する。

〈平行棒〉 床面から200センチに水平かつ平行に配置された2本の棒をつかみ、技を行う。

〈鉄棒〉 高さ280センチの鉄棒を握り、静止することなく正・逆・背面の車輪やその方向転換、また両手を同時に放して再びバーを握る技を組み入れたダイナミックな演技が行われるため、注目度が高い。

〈トランポリン〉 宙返りの空中姿勢は、タック・パック(抱え型)、パイク(えび型)、レイアウトあるいはストレート(伸び型)の3種類。これにひねりを組み合わせて、異なる技を連続して行う。

黄金期から停滞期、そして復活。それぞれのシーンを彩る名選手

体操男子が2016年リオ五輪までに獲得したメダルの数は金31、銀33、銅33の計97個。旧ソ連が獲得した94個が最多記録だったが、すでにその数を追い抜き、97個で世界最多だ。内訳は、団体で金7銀3銅3、個人が金6銀6銅3、ゆかが金2銀7銅4、あん馬が金0銀4銅3、つり輪が金4銀0銅5、跳馬が金2銀5銅4、平行棒が金4銀3銅5、鉄棒が金6銀3銅5。

体操男子は戦後まもない1952年ヘルシンキ五輪に、初参加でメダル4個を獲得。続く1956年メルボルン大会では、小野喬選手が鉄棒で、日本人選手初となる金メダルの快挙を成し遂げた。同大会で手にしたメダルは10個。そして、60~70年代にかけて体操男子の快進撃は続く。1960年ローマ五輪大会から1976年モントリオール五輪まで、団体総合で5連覇を、個人総合でも1964年東京五輪から1972年ミュンヘン五輪まで3連覇を達成した。1972年ミュンヘン五輪では、塚原光男選手が鉄棒で、かつての最高難度C以上である「ウルトラC」の月面宙返りを決めて金メダルを獲得。その後「ウルトラC」という言葉は、広く一般でも使われるようになる。

ただ、80年代から2000年代初頭まで、長い低迷期を経験することになる。しかし、この間でも、個人では森末慎二選手が、1984年ロサンゼルス五輪の鉄棒で金メダルを獲得、また、池谷幸雄選手が1992年バルセロナ五輪のゆかで銀メダルを獲得するなどの活躍を見せている。

復活ののろしは2004年アテネ五輪であがる。団体総合で28年ぶりに金メダルを獲得。2012年ロンドン五輪では、内村航平選手が個人総合で28年ぶりの金メダル、記憶に新しい2016年リオ五輪では、団体総合でアテネ以来の金メダル、そして、内村選手が日本人では44年ぶりとなる個人総合2連覇を果たし、「体操ニッポン」復活を強く印象付ける結果を残した。

一番乗りで東京五輪の切符を獲得

2018年10月、東京五輪予選を兼ねて開催されたカタール・ドーハの世界選手権で、体操男子は団体総合銅メダルを獲得し、全競技を通じて初めて、開催国枠ではなく自力での五輪出場を決めた。注目選手となるのは、世界選手権出場メンバーである内村航平選手と田中佑典選手、さらに大学生トリオの白井健三、谷川航、萱和磨の各選手だろう。彼らは内村選手を中心に練習時間以外でも団結を深め、気の置けない関係を築いているという。

内村選手が東京五輪にすれば、4大会連続での出場となり、個人総合では、ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪に続く3連覇をかけた戦いに挑むことになる。海外では「キング・コウヘイ」とたたえられ、日本体操界初のプロ選手となった絶対王者・内村も2018年現在29歳。年齢とのシビアな戦いをどうはねのけるのかに注目が集まる。

他の選手たちに目を向ければ、オリンピックメダリストは跳馬で銅メダルを獲得した白井選手のみだ。白井選手は、自ら考案した技が、国際体操連盟に4つも認定されている。跳馬では「シライ/キムヒフン(伸身ユルチェンコ3回ひねり)」、ゆかでは「シライ/ニュエン(後方伸身宙返り4回ひねり)」「シライ2(前方伸身宙返り3回ひねり)」「シライ3(後方伸身2回宙返り3回ひねり)」で、「シライ3」は、男子最高のH難度だ。スペシャリストとしての印象が強い白井選手だが、果たして日本のエースに成長できるかどうか、大きな鍵となりそうだ。

Kohei UCHIMURA

日本
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Kenzo SHIRAI

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