パリ2024を目指せ!女子日本代表チームの注目選手:女子バレーボールネーションズリーグ2024

執筆者 Hirotaka Hikoi
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写真: Volleyball World

今年も国際バレーボール連盟(FIVB)女子バレーボールネーションズリーグ(VNL)が5月14日に開幕となった。2022年と昨年の同大会でどちらも7位だった女子日本代表チームは、今大会でひとつでも順位を上げたいところだろう。

しかし、眞鍋政義監督が率いる女子日本代表にとって、今大会での最大の目標はパリ2024オリンピック出場枠の獲得(*)にある。昨年9月のパリ2024予選(ワールドカップ)に臨んだ女子日本代表だったが、最終戦となったブラジル代表にフルセットを戦った末に惜敗し、出場枠の獲得はならなかった。

現在、世界ランキング9位(2024年5月13日付)の女子日本代表は、予選ラウンド第1週(5月14日~20日)にトルコ・アンタルヤで、まずはトルコ(同1位)、ポーランド(同7位)、ドイツ(同12位)、ブルガリア(同20位)の各代表チームとの4戦に臨む。第2週(5月28日~6月2日)は中華人民共和国・マカオに舞台を移し、最終第3週(6月11日~16日)には北九州が決戦の地となる。

ここでは、総勢14名で臨む女子日本代表チームの注目の選手を紹介する。

*オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。各競技の出場資格に関する公式資料はこちら

女子VNLでパリ2024オリンピック出場枠を得るには?

パリ2024出場枠全12枠の内、残りの5枠の中の1つを獲得するためには、世界ランキングが最終決定される6月17日、つまり今大会第3週が終わった時点での順位が重要となる。すでに、トルコ、アメリカ合衆国(世界ランキング2位)、ブラジル(同3位)、セルビア(同4位)、ポーランド、ドミニカ共和国(同8位)、オリンピック開催国のフランス(同15位)の各代表チームが出場枠を得ているため、残りの出場枠はこれらのチームを除いたランキングで決定される。

現在残っている5つの出場枠は、まだ1つも獲得していない大陸(アフリカおよびアジア・アセアニアにそれぞれ1枠)のランキング最上位国・地域がまずは獲得し、その後、残り3枠が出場枠を得ていない世界ランキング上位の国・地域に配分される仕組みだ。ランキングは試合の勝敗だけでなく、セットカウントなども反映されるため、女子日本代表は1戦1戦での勝利を目指すとともに、全プレーに集中してポイントを重ねていかなければならない。

女子日本代表チームにとって、昨年のVNL6位のイタリア(世界ランキング5位)、VNL2位の中華人民共和国(同6位)をはじめ、オランダ(同10位)、カナダ(同11位)ら代表チームとの各試合は、世界ランキングが近いため、緊迫した試合展開になること必至だ。第2週マカオ大会では、アジア・オセアニア枠の行方に関わる、中華人民共和国代表チームとの直接対決が控えている。

女子日本代表チーム「ひとつの心でひとつの夢をつかもう」

パリ2024出場枠獲得を最大の目標に掲げる眞鍋ジャパン。

「まずは勝つというところにこだわりをもっていきたい」と、日本バレーボール協会(JVA)公式動画チャンネルで話した指揮官は、4月の女子日本代表チームのキックオフミーティングで新たなスローガンを掲げた。

「One Team, One Dream(ひとつの心でひとつの夢をつかもう)」

一致団結して勝利を目指すチームのあり方を改めて示したと言える。

眞鍋監督は、昨年のVNL決勝ラウンド・アメリカ合衆国戦の前、「キャプテン古賀を中心に全員でしぶとく長い時間のラリーを制していきたい」と話したが、今大会でもチーム一丸となってメンバー全員で戦う姿勢を貫きたい考えだ。

女子日本代表チームの注目選手

キャプテン#3 古賀紗理那(アウトサイドヒッター)

女子日本代表の主力である古賀紗理那(さりな)は、今年もチームの得点源であるだけでなく、キャプテンとしてコート内外でチームを引っ張る。前回VNLでは、予選ラウンド全12試合で、ベストスコアラー/アタッカー第9位、ベストサーバー第4位にランクされた。また、ベストディガーでも12位に入るほど、攻守にわたってチームをけん引するプレーヤーである。この3月には、Vリーグ1部の女子ファイナルステージで所属チームのNECレッドロケッツの連覇に貢献し、最高殊勲選手賞を受賞している。

「結果を残さないといけないので、(ひとつの)チームになるというのが大切」と、古賀はJVAに語り、チームのまとめ役としての任務を明確にした上で、「選手のひとりとしてパフォーマンスを上げていきたい」と自らの抱負を話した。

初のオリンピック出場となった東京2020では、けがのため途中欠場となり悔しい思いをしている。その悔しさを払拭するためにも、今大会で何としてもパリ2024出場枠を獲得し、夢の舞台でのプレーで力を出し切りたいところだろう。

#1 岩崎こよみ(セッター)

パリ2024に向けて女子日本代表チームに招集されたチーム最年長、35歳の岩崎こよみ。日本代表経験はあるもののオリンピックへの挑戦は初めてとなる。

2021年に男児を出産し公式戦を離れていたが、復帰後は育児と競技を両立させている。

「(パリへ)行きたい気持ちと子どもと離れるのはちょっと寂しいなという気持ちがありましたが、家族が背中を押してくれました」

「大変なこともありますが、子どもが応援してくれるから、もっとバレーボールをがんばれるようになり復帰してよかったと思えました。家族の支えがありがたいなと思います」と、岩崎はJVAの公式動画で話した。

#2 林琴奈(アウトサイドヒッター)

東京2020に女子日本代表メンバーとして出場している林琴奈(ことな)。昨年のVNLでは、日本選手の中で古賀に次ぐベストスコアラー、アタッカー、ベストディガーとなり攻守にわたって活躍した。

試合前は、「落ちているゴミを見つけたら拾うこと」で精神面の準備をしているという林。今大会でも冷静なプレーで女子日本代表チームを盛り上げてくれることだろう。

#4 石川真佑(アウトサイドヒッター)

女子日本代表のエース、石川真佑(まゆ)。2022-2023シーズンでは、井上愛里沙(ありさ)が持っていたVリーグ最多得点記録を更新し、スコアラーとしての活躍が期待されている。2023年はイタリア1部リーグ(セリエA)のイル・ビゾンテ・フィレンツェでプレーしていたが、5月11日、同じくセリエAのイゴール・ゴルゴンゾーラ・ノヴァーラと契約したことを発表した。パリ2024の後、9月からは引き続きイタリアでプレーすることになる。

昨年9月のパリ2024予選ブラジル代表戦では、アタックでポイントを量産した。また、高速なジャンプサーブも石川の持ち味だ。昨年のVNLではサーブ力でチームの躍進に貢献した。イタリアで強化されたフィジカル面を生かした活躍を期待したい。

#6 関菜々巳(セッター)

女子日本代表の司令塔、セッター関菜々巳(ななみ)の素早いトスは、高さで劣る日本が目指す高速バレーの要だ。ツーアタックなどの多彩な攻撃も仕掛け相手のブロッカーたちを翻弄させる。昨年のVNL予選ラウンドでは、ベストセッター第4位に選ばれている。しかも、ベストサーバー第5位にランクされ得点力にも定評がある。

前回のVNLでは、誰よりも長くコートに立ち、女子日本代表が擁するさまざまなタイプのアタッカーたちとコンビネーションを組んできた経験も今大会で活かされるだろう。

「難しいなとやればやるほど思うが、自分の組み立てで得点が決められた時は楽しい」と、関はJVAの公式動画で語った。

#7 渡邊彩(ミドルブロッカー)

33歳の渡邊彩(あや)は、昨年9月のパリ2024予選で日本代表入りに復帰している。その明るい性格がチームのムードメーカーになるに違いない。

「フィジカルの強さと機動力」が強みと話す渡邊。パリ予選では、日本代表選手中トップのベストブロッカーとして大会全体の14位に入っている。

「もう無理かもしれないと思ったが、もう1回目指してみようと思い今がある」とJVAの公式動画で明かした。

東京2020で代表に入れなかった悔しさをばねにパリの大舞台を目指す。

#10 井上愛里沙(アウトサイドヒッター)

バックアタックが武器の井上愛里沙。長く女子日本代表に名を連ねながらリオ2016、東京2020においては代表の座を逃した。

一時は引退を考えた井上を連れ戻したのは監督の眞鍋だった。

「(東京)オリンピックに出る夢がかなわなかったが、(眞鍋監督の言葉で)もう一度やると決めた。フランスでプレーしていた時のチームメイトとパリで再会したい」と、JVAの公式動画で話した。

2022年のバレーボール女子世界選手権ではチームトップの最多得点を記録し大活躍、チームの5位入賞に貢献した。昨年のVNLでは予選ラウンドのドイツ戦で20得点を挙げ、全試合に出場し1試合平均8.2得点を記録するなど活躍している。また9月のパリ予選でも、日本代表の中では古賀に次ぐベストスコアラーとアタッカーになった。

悲願のオリンピック出場を目指し、今大会での活躍が期待される。

#11 山田二千華(ミドルブロッカー)

キャプテン古賀の後輩であり、NECレッドロケッツのチームメイトでもあるミドルブロッカーの山田二千華(にちか)。今年3月には、Vリーグ1部の女子ファイナルステージで、古賀とともに所属チームの連覇を果たした。

東京2020日本代表メンバーである山田だが、自身のパフォーマンスが不本意に終わったこともあり、パリ2024でのリベンジにかける。

荒木彩花(あやか)とともにチームで最も高い184cmの長身を生かしたブロック力が強み。ブロード(移動)攻撃などを巧みに使うアタック力にも定評がある。

#15 宮部藍梨(ミドルブロッカー)

アウトサイドヒッターからミドルブロッカーに転身した宮部藍梨(あいり)。昨年のVNL予選ラウンド最終戦イタリアとの試合では、10本のアタックを含む16得点でチーム最多のポイントを挙げた。ブロック力にも定評があり、決勝ラウンドではベストブロッカー第10位に入っている。

2023-24シーズンはV2リーグのヴィクトリーナ姫路で活躍し、チームのリーグ優勝に貢献した。

#20 荒木彩花(ミドルブロッカー)

昨年のVNLで試合中の負傷のため途中から欠場となり、9月のパリ2024予選も出場ができなかったミドルブロッカー荒木彩花が代表に戻ってきた。

チーム最年少22歳の荒木は、2022-23シーズンのV1リーグでブロック賞、スパイク賞に輝いている。184cmの長身を生かした強力なプレーに期待がかかる。

#21 和田由紀子(アウトサイドヒッター)

昨年のVNLから日本代表入りを果たしたアウトサイドヒッターの和田由紀子は、予選ラウンドの米国戦で初のスタメンとして登場し、強烈なアタックやサーブなどで32得点を挙げる大活躍を見せ、世界にその実力を印象づけた。

チーム最年少22歳の和田には、今大会でもさらなる活躍が期待されている。

その他、VNL2022日本代表メンバーの小島満菜美(まなみ/#8/リベロ)、パリ2024予選(ワールドカップ)でリベロとして活躍した福留慧美(さとみ/#12/リベロ)、東京2020日本代表メンバーの黒後愛(#16/アウトサイドヒッター)らがVNL2024の予選ラウンド第1週のメンバーとして名を連ねている。

女子日本代表メンバー(VNL予選ラウンド第1週)

  • #1 岩崎こよみ(セッター/175cm)
  • #2 林琴奈(アウトサイドヒッター/173cm)
  • #3 古賀紗理那(アウトサイドヒッター/180cm)
  • #4 石川真佑(アウトサイドヒッター/174cm)
  • #6 関菜々巳(セッター/171cm)
  • #7 渡邊彩(ミドルブロッカー/176cm)
  • #8 小島満菜美(リベロ/158cm)
  • #10 井上愛里沙(アウトサイドヒッター/178cm)
  • #11 山田二千華(ミドルブロッカー/184cm)
  • #12 福留慧美(リベロ/162cm)
  • #15 宮部藍梨(ミドルブロッカー/181cm)
  • #16 黒後愛(アウトサイドヒッター/180cm)
  • #20 荒木彩花(ミドルブロッカー/184cm)
  • #21 和田由紀子(アウトサイドヒッター/174cm)