【卓球】世界選手権(団体戦):若い力でメダルを目指す日本男子、打倒中国で頂点を狙う女子

9月30日から中国の成都で開催される「2022世界卓球選手権成都大会(団体戦)」。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年の開催が中止されたため、2018年大会以来の世界卓球選手権の団体戦となる。今回は同大会を展望する。

1 執筆者 照井雄太
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(2022 Getty Images)

2018年大会で日本は、男子が韓国に敗れてベスト8に終わり、6大会振りにメダルを逃した。女子は決勝で中国と対戦し、1番で伊藤美誠が劉詩雯に勝利。だが2番以降は中国に圧倒され、悔しい銀メダルだった。

男子は長年日本を支えてきた水谷隼が引退した。また水谷と共に日本を支えてきた丹羽孝希が、大会直前にインフルエンザ陽性が発覚し欠場。女子は前回大会で主力だった石川佳純と平野美宇が選考会で敗れ、代表入りを逃している。日本は男女ともにフレッシュなメンバーで世界に挑む。

今大会はゼロコロナ政策を実施している中国での開催のため、入国から厳しい制限が行われている。日本チームも直接中国には入国出来ず、ドバイかシンガポールからのチャーター便でしか成都入りできない。そこからバブル方式で管理された状況での大会開催となる。そのため、男女各40チームの出場予定が男子33、女子29となり、大幅にキャンセルが出ている。

9月28日にドローが行なわれ、男子は7グループ、女子は6グループに分けられる。9月30日から予選リーグから行われ、男女16チームが10月5日からの決勝トーナメントに進出。試合方式は、第1試合~第5試合まで全てシングルス。3名で出場し、3試合を先取したチームが勝利となる。

■日本男子:平均21歳の若い力でメダルを目指す

日本男子はITTF(国際卓球連盟)世界ランキング4位の張本智和、45位の戸上隼輔、119位の及川瑞基、231位の横谷晟がメンバー。丹羽孝希が欠場となったため、張本智和以外は世界選手権団体戦は初出場となる。

エースは19歳の張本智和。日本がメダルを獲得するには、張本の2点取りは必須。前回大会は初出場で力を発揮できなかったが、Tokyo2020オリンピックの団体戦では全勝と、銅メダル獲得の立役者となった。7月の「WTTチャンピオンズ」では、中国代表の林高遠に大逆転勝利で優勝している。今大会では、爆発力と粘りを兼ね備えたプレーで、エースとしての働きが求められる。

2番手には現・全日本王者の戸上隼輔の出場が予想される。切れ味鋭い両ハンドドライブで攻めまくる攻撃卓球が持ち味。昨年は、アジア大会、世界選手権(個人戦)に初出場するも、臆することなくきっちりと結果を残した。初出場となる団体戦でも、最大の長所である攻撃卓球での爆発を期待したい。

3番手は、2021年全日本王者の及川瑞基が予想される。中学3年からドイツブンデスリーガに挑戦し、長年厳しいプロの世界でプレー。昨シーズンのノジマTリーグでは、16連勝を記録しシーズンMVPに輝いた。団体戦での戦い方を知っている選手だ。160㎝と小柄ながらも、コート狭しと動きまくるフットワークが武器で、粘り強く戦えるのが最大の長所。今大会でもピンチの際に、及川の粘りがチームを救うだろう。

横谷晟はジョーカーとしての活躍が期待される。今まで大きな実績は無かったが、一発勝負の選考会では丹羽孝希ら強豪を連破し、代表権を獲得。過去に水谷隼が、期待の選手として横谷の名前を上げており、ポテンシャルは十分。他国としても横谷の情報は少なく、また20歳と若い。大会期間中にも一気に成長する可能性がある。気負わずに自分のプレーを貫くことが活躍のポイントとなりそうだ。

男子はアジアだけでなく、ヨーロッパ勢も強い。水谷隼が出場した大会と比較すると、日本のメンバーは実績・経験ともに劣るのは事実。しかし、平均21歳という若いメンバーにとって今大会は大きなチャンスだ。「俺たちがやってやるんだ」と強い気持ちで戦い、前回逃したメダル獲得を目指す。

■日本女子:中国を倒して悲願の金メダルを

日本女子はITTF世界ランキング6位の伊藤美誠、5位の早田ひな、15位の木原美悠、44位の長﨑美柚、69位の佐藤瞳のメンバー。世界選手権団体戦に限ると主力として出場経験があるのは伊藤のみだが、他のメンバーも国際大会での経験、実績共に豊富。実力を発揮すれば決勝進出の可能性が高いメンバーである。

エースはTokyo2020混合ダブルス金メダル、女子シングルス銅メダルの伊藤美誠。実績・実力は中国勢に負けず、世界でもトップクラス。前回大会は決勝の1番で出場し、元世界チャンピオンの劉詩雯(中国)に劇的勝利を収めた。打倒中国を果たすためには、伊藤の勝利が必須。変幻自在でアグレッシブなプレーで、前回大会同様の活躍を誓う。

2番手としては、早田ひなの出場が予想される。Tokyo2020の代表は逃したが、2020年以降は全日本選手権初優勝、アジア選手権3冠、世界選手権女子ダブルス、混合ダブルス銀メダル。国際大会でも中国の主力選手以外にはことごとく勝利しており、結果を残し続けている。日本女子選手には珍しいパワーのある卓球が持ち味であり、中国勢にも十分対抗出来る。中国戦での爆発、勝利が期待される。

3番手以降は、3選手ともに実力伯仲で、誰が出るかは分からない。プレースタイルも異なり、誰が出場しても活躍を期待できる選手たちである。

18歳の木原美悠は、世界選手権初出場。2019年に史上最年少で全日本選手権準優勝となり、その後もジュニアだけでなくシニアの国際大会でも活躍している。2019年の「ITTFグランドファイナル」では、長﨑美柚とのペアで、孫穎莎・王曼昱(中国)の世界女王ペアを下して女子ダブルス優勝。変化の分かりづらいサービスから、ドライブやスマッシュ、パンチ力のあるバックハンドが武器だ。メンタルも強く、緊迫した場面でも思い切って勝負できるのが強み。初出場で大暴れする可能性は大いにある。

選考会で伊藤美誠、佐藤瞳を倒し代表権を獲得した20歳の長﨑美柚。前回大会は15歳で代表となるも出場機会はなかった。その後2019年世界ジュニア選手権では、日本人初の女子シングルス優勝。木原とは「Wみゆう」の愛称で知られ、切磋琢磨しながら実力を伸ばしてきた。サービス、レシーブの種類が豊富で、前陣での両ハンドドライブはパワーがある。木原同様に緊迫した場面でも実力を出せるのが強みだ。

24歳ながら女子チーム最年長でキャプテンを務める佐藤瞳は、他の4選手とは異なる守備重視のカット型のプレーヤー。カット型らしい粘り強いプレーが長所で、佐藤のカットを打ち抜くのは容易ではない。世界ランキングは過去最高9位で、リオデジャネイロ2016金メダリストの丁寧(中国)に2勝したこともある。中国チームも警戒している選手の1人だろう。決勝でも佐藤の粘りが中国チームを苦しめるはずだ。

女子は前回大会やTokyo2020に続き、決勝進出が期待される。その決勝では、中国を倒すことができるか。今回のメンバーは、何かサプライズを起こしてくれると期待させる選手たちだ。王者・中国に対し思い切って勝負をし、頂点を狙う。

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