都筑有夢路インタビュー「良い影響を与えられる選手になりたい」

執筆者 Olympics.com|公開日:9月15日
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写真: Ryan Pierse

米カリフォルニアのハンティントンビーチを舞台に、世界のトップサーファーたちがパリオリンピック出場をかけて熱い戦いを繰り広げる。開幕を前に、東京オリンピック銅メダリストの都筑有夢路がサーファー仲間へのリスペクト、気持ちの整え方、好きな音楽などをOlympics.comに語った。

ロサンゼルス空港から車で南へおよそ40分。サーフィンのメッカとして知られ、およそ16kmの海岸線を有するハンティトンビーチに、いま世界中のトップサーファーが集まっている。

「サーフシティ」とも呼ばれ、多くのサーフィン文化を育んできたこの場所で、9月16日〜24日の日程で2022年ISAワールドサーフィンゲームズが開催される。

日本代表のひとりとして、東京オリンピック銅メダリストの都筑有夢路(あむろ)が戦いの舞台に立つ。世界選手権に相当するこの大会での優勝チームには、パリ2024オリンピックの出場権が1枠与えられる。開幕を前に都筑は、「いろんな国の選手がいるので、その中でサーフィンをして勝っていきたい」と意気込みを語った。

東京オリンピックの影響

東京オリンピックで五十嵐カノアが銀メダル、都筑が銅メダルを獲得し、サーフィンを取り巻く日本の環境は変わった。特にサーフィンに取り組む若い選手らがオリンピアンから影響を受けたことは大きなことだろう。

「日本だとサーフィンってマイナースポーツのイメージで、スポーツではないように見られることもあった」と話す都筑は、オリンピック以降の変化を実感している。

「(オリンピックが終わって)今まで声をかけられなかったような方、おじいちゃんおばあちゃんだったり、そういう方からも応援の声をいただくので、それがすごい変わったなって感じます」

オリンピックによる変化は周りから向けられる視線だけではない。都筑と同様にサーフィンに取り組む選手や、21歳の都筑自身にも影響は及ぶ。

「オリンピックでメダルを取ったことで、これからサーフィンを始める子どもたちや、今サーフィンをしていて目標に向かってる子どもたちにいい影響を与えることができたかなって思います」

穏やかな口調で言葉を紡ぐ都筑は、「これからもそういういい影響を与えられる選手になり続けたいなって思ってます」と目を輝かせる。

憧れのカリッサ・ムーア

2001年に埼玉県に生まれた都筑有夢路は現在21歳。

3歳のときに神奈川県藤沢に移住し、小学校4年生まではバレエに取り組んでいたが、小学校5年のときに兄や父親の影響を受けてサーフィンを始めた。

兄を追いかけて訪れた海で大きな波に触れたり、父親の影響で海外の選手のサーフィンを見たり、都筑は家族のサポートのもと技を磨いてきた。

「男の人だとイーサン・ユーイング(オーストラリア)はずっと自分の中で好きなサーファーで、インスタグラムで見て研究しています。女性のサーファーはステファニー・ギルモア(同)が好きで、この間も本当にもう何とも言えないかっこいいサーフィンをしていて、あのフローとしなやかさを自分も真似したいなって思っています」

「いつかあんなサーフィンができるようになりたいです」

さらにもうひとり、都筑が憧れを抱く選手がいる。

カリッサ・ムーア(アメリカ合衆国)は本当に昔から憧れている選手で、CT(チャンピオンシップツアー)がきっかけで彼女から声をかけてもらうことが多くなって、彼女の性格の良さをどんどん知って、試合だけじゃなくて人柄の良さや心の強さを感じました。サーフィンだけじゃなくて、人間性の部分でも憧れています」

気持ちを整えることと、チョープーの大波

海外の先輩トップサーファーに憧れる都筑は、自身の今年の目標として、チャレンジャーシリーズ(CS)で勝ってCTへの出場権を得ることを掲げる。

サーフィン界には世界最高峰のリーグとしてCTがあり、下部大会にあたるCSで上位に入った選手がCTの出場権を獲得する。そのために都筑は自分の課題を分析し、挑戦を続けている。

「メンタルの面で、試合で乱れる部分があるので、自分の気持ちをいつも通りにするということに、トライしています」

「気持ちの持ち方や考え方だったり、呼吸もすごい大事で(呼吸は)気持ちとつながっているので、実際に試合で実践して気持ちがどう変化していったかとか、そういうのを知るのが今の課題です。そこをもっともっと改善していきたいなって思ってます」

心の状態と向き合って平常心を保つことは、2024年に行われるパリオリンピックを目指す上でも重要となる。パリ2024のサーフィン競技の会場はタヒチのチョープーで、巨大な波で知られている。

「パリに向けては、やっぱりチョープーでやるっていうのが自分の中で大きな壁なので、その壁を乗り越えることが目標です。まだ練習もしたこともなく、大きな波で怖いなっていう気持ちもあるので、現地に行ってチョープーの波を感じてそれを克服したい」

「練習のときの気持ちで試合に臨むことで、自分らしいサーフィンができると思うので、チョープーでもそこの気持ちに持っていきたい。そのためには、波に慣れるのが方法のひとつだと思うので、たくさんトライして、怖いっていう気持ちをなくしたい」

「たくさん練習することが大事なことかなって思います」

ジャスティン・ビーバーでリラックス

練習を重ねた上で平常心を維持する。それは勝ちへのこだわりとうまく付き合うことも意味する。

「勝ちたいって気持ちを強く持っているんだけど、それが強すぎると空回りして、プランがうまくいかないことがあるから、(気持ちを)どう冷静に試合で保っていくかっていうバランスが本当に大事だと思います」

「そのバランスを保つために、呼吸で気持ちを落ち着かせたりとか、音楽を聴いて違うことを考えてみたりとか、そういうところで緊張しすぎたところを戻すっていう風にバランスをとっています」

そんなときに「ジャスティン・ビーバーの音楽を聴く」と、都筑ははにかむ。

「リラックスした曲調とかも多くて、ゆっくりな曲を聴くと自分の気持ちが落ち着くし、音楽ってストレートな言葉が多いから、日本語だとストレートに自分の中に入ってきて、その言葉が印象に残る。(日本語の曲にはそういう良さがある一方で)英語だと母国語じゃないので、聞き流せるというか。直接的に自分を攻撃してこないっていうのが、自分にとったら今はすごい良くて」

「ジャスティン・ビーバーは顔もカッコイイし好きだし、曲調も滑らかな曲が多くて、激しくない曲が多いので好きです」

パリ2024の出場権をかけた戦いが始まる

まもなく始まるハンティントンビーチでの戦いを前に、都筑はどんな心境なのだろうか。楽しみなのか? それとも緊張しているのか?

「(大会に向けて)エキサイトしている気持ちの方が大きいです。ISAの試合は実は2回目で経験も少ないんですけど、勝てばたくさん試合もできるし、いろんな国の選手がいるので、その中でサーフィンをして勝っていきたい」

「楽しみで早く試合したいなっていう気持ちが大きいです」

パリ2024の予選を兼ねた大会は、今回のワールドサーフィンゲームズが最初となる。男女それぞれの優勝チームに1枠が割り当てられる今回の大会で、都筑は自身の力を遺憾なく発揮する。

大会の模様はOlympics.comでライブ配信

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