けがを乗り越えるたびに強くなるスカイ・ブラウン、LA28ではジェンダーギャップを打ち破り、2つの競技で金メダルを目指す

執筆者 Lena Smirnova
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Great Britain's Sky Brown won back-to-back bronze medals at the Tokyo 2020 and Paris 2024 Olympic Games.
写真: Julian Finney/Getty Images

多くのアスリートにとって、オリンピックはメダルをかけて戦う競技だ。しかし、英国の16歳、スカイ・ブラウンにとっては、けがとの戦いでもあった。

「何が起こったのかわからない!」と、パリ2024オリンピックに向けてけがに悩まされていたスケートボーダーのブラウンはOlympics.comに話した。「けがのタイミングは最悪だけど、これを乗り越えればもっと強くなる気がする」

ブラウンは、2度目となるオリンピック出場前の数か月間に2つの大きなけがを乗り越えなければならなかった。2024年4月には膝の内側側副靭帯(MCL)を断裂し、2か月間、治療と回復に時間を要した。そして、パリでの女子パーク決勝の数日前には肩を脱臼したのだった。

しかし、驚くべきことは、ブラウンはこれらのけがを克服して2度目のオリンピックで銅メダルを獲得したことだ。しかも、さらに将来に向けてより大きな目標を持つことができるほどブラウンを駆り立てるものとなった。

ブラウンは、パリ2024でスケートボードとサーフィンの両競技でオリンピアンになることを惜しくも逃したが、ロサンゼルス(LA)2028では再チャレンジする。「私はクレイジーな旅を続けてきました。人生の全ての瞬間に感謝しています」と、宮崎県生まれで日本人の母を持つブラウンは話した。

「これからもサーフィンとスケートボードを続けて、LA2028で2つの金メダル獲得を目指します。英国チームのためにそれを実現するつもりです。2競技でオリンピアンになるのは本当に特別なことだと思っています」

次のオリンピックは、カリフォルニア州で1年の大半を過ごしトレーニングを行うブラウンにとっては地元での開催とも言える。しかし、風景や波に慣れていることがメリットになる一方で、ブラウンが3つ目のオリンピックメダルを獲得するためには、さらに多くのトリックを決める必要のあることを彼女は理解している。

「東京2020以来、女子スケートボードは本当に成長しました」と、LA2028が開催される1週間前に20歳になるブラウンは話した。

「みんな全く違うレベルに達していて、LAでは特に女子がすごいことになると思います。私たちは真剣に努力を続けています。ジェンダーギャップ(性差)を打ち破り、この世代の女子選手のひとりとして、私たちのスポーツをさらに前に押し進めることに本当に興奮しています」

スカイ・ブラウンのモットー「困難を乗り越えることが私を強くする」

オリンピック前のけがは、ブラウンにとって不幸な習慣になりつつあり、2021年の東京2020の前の2020年5月には、15mのバートランプ(練習場)からの落下し、命に関わるけがを負った。この落下により、頭蓋骨の骨折、左手首と手の骨折、肺と胃の裂傷を負った。

しかし、ブラウンは回復し、オリンピックで初開催となったスケートボード女子パーク種目で銅メダル獲得を果たした。

しかし、4年後の2024年4月、パリ2024を目前にしたブラウンは再びけがをしたのだった。彼女は、ビデオ撮影中に膝のMCLを断裂し、5月のオリンピック予選シリーズ(OQS)上海大会を欠場せざるを得なかった。

2024年6月開催のOQSブダペスト大会には出場を果たしたが、ブラウンの膝はまだ「100%ではなかった」。それでも彼女はニーブレース(下肢に装着し膝を安定させる装具)を装着して出場し、91.93ポイントの高得点を挙げて2位に入り、パリ2024への切符を手にした。すべてのトリックを出すことができず心残りはあったが、ブラウンは再び最高のパフォーマンスをパリの大舞台で発揮することを目指して気持ちを高めた。

ところが、さらなる試練が彼女を待ち受けていた。パリ2024開幕後の7月28日、女子パーク種目本番のわずか1週間前に、ブラウンは肩を脱臼したのだった。

8月6日に行われた予選では、肩を固定して出場し4位に入り、決勝に進むことができた。そして決勝では、日本の開心那(ここな)に次いで3位に入り、見事2つ目のオリンピック銅メダルを獲得した。

「パリのためのとっておきのトリックを披露したかったのですが、結果にはとても満足しています」とブラウンは話した。「まだ、けがから回復の途中ですが、メダルを獲得できたことは本当によかったです」

オリンピック2大会にわたり、連続して直前で重大なけがを経験したブラウンにとって、「なんで私が?」と自問するのは自然なことだろう。しかし、2度のオリンピックメダリストである彼女はそうは考えていないようだ。

「私はそれを自分のストーリーの1章と考えています。けがをするたびに、私はより強くなって戻ってきていると感じています。死ぬほど辛かったことが、自分を前より強くする。これが私のモットーのひとつです」とブラウンは気丈に話した。

「私はいつもけがを受け入れ、それを可能な限りベストな考え方で活用します。膝のけがをした時は、回復するまで他の部分をできるだけ強くするためのトレーニングを行いました。そして、それが回復後に役立ったのです」

スカイ・ブラウンのリラックス方法はダンスフロア

パリ2024オリンピックが終わった今、ブラウンは肩の脱臼を予防するために手術を受ける予定だという。次のオリンピックに向けて、ブラウンが定めた目標を達成するためには可能な限り強くなることが不可欠だからだ。

しかし、LA28の2競技(スケートボードとサーフィン)で金メダルを本格的に目指す前に、ブラウンはまず2つのことから始める。それは、リラックスすることと、そしてダンスすることだ。

「私にはやりたいことがたくさんあります」とブラウンは笑顔で話した。

「全てが私にとっていつも予想外ですが、何でも試してみたいので何でもやりたいんです。何が起こっても、まずはそれを試してみます。そして、そのひとつがダンスです」

2度のオリンピアンであるブラウンは、2018年にアメリカ開催された社交ダンス番組「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ:ジュニア」で10歳ながら優勝した経験がある。それもあって、最近ではトレーニングの一環としてヒップホップのクラスを受けている。ヒップホップは、彼女のお気に入りのダンスのひとつだ。

スケートボード、サーフィン、ヒップホップ。ブラウンの飽くなき追求は、LA2028でどのような花を咲かせるのだろうか。

「何でも私はベストを尽くします」とブラウンは話す。「私の人生には、やりたいことがたくさんあるのです」