四十住さくら、乗り越えてきた苦悩の道「2連覇目指して」/パリ2024スケートボード女子パーク

執筆者 Chiaki Nishimura
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写真: 2024

「(オリンピックに)出れないのは嫌だったから。めっちゃ怖かった…」

2021年に開催された東京2020オリンピックで初めて実施されたスケートボード。女子パークで表彰台の頂点に立った金メダリストの四十住(よそずみ)さくらは、パリ2024オリンピックまでの道のりの中で、怪我そして大きなプレッシャーと戦ってきた。

オリンピック予選最終戦となった6月のブタペスト大会で、四十住は決勝進出を逃し、オリンピック出場か否かという運命は他のスケーターに委ねることとなったが、翌日の決勝の結果を受けて最終ランキングが更新され、四十住はオリンピックで連覇を達成するというチャンスを得ることになった。

「めっちゃ怖かった…」。これは四十住がOlympics.comに語ったブタペスト大会の準決勝から決勝までの間の心境だが、それは東京からパリまでの3年間で、怪我などを通じて彼女の頭の片隅に存在した思いだろう。

四十住さくら、怪我と若手の台頭

スケートボードでは新たな才能が続々と開花している。東京2020オリンピックの女子パークでは、四十住が金メダル、開心那が銀メダル、スカイ・ブラウンが銅メダルを獲得し、そこからの3年で、オーストラリアのアリサ・トゥルー、スペインのナイア・ラソなどがオリンピック予選で表彰台に立ち、日本からは16歳の草木ひなの、13歳の長谷川瑞穂が国際大会の決勝のステージで注目を集めてきた。

四十住はオリンピック予選第1戦で3位となったものの、2戦目を控えた2023年5月、右膝後十字靱帯断裂という怪我に見舞われた。

「後十字靱帯断裂から半年くらい滑れなくて、そこから技を戻すのに結構時間がかかって…」

怪我が完全に治りきらないまま出場した同年10月、イタリアでの世界選手権では決勝進出を果たす8位。オリンピックイヤーを迎えた2024年2月、「自分の体は自分にしかわからないから…」と言い聞かせるようにドバイ大会に挑むと、本調子でないながら6位に入り、胸を撫で下ろした。

22歳の四十住が体と向き合う一方、パリ2024オリンピック日本代表3枠争いは新たな才能の台頭により、混戦模様を呈しはじめていく。

オリンピック予選の最後の2戦は5月の上海大会と6月のブダペスト大会。四十住は上海大会で1年ぶりに表彰台に立って復活の光を見たが、ハンガリー・ブダペストでは、まさかの準決勝敗退。四十住が東京2020からパリ2024までの予選大会の中で決勝進出を逃したのは、怪我直後に出場したアルゼンチンでの大会を除いて初めてのことだった。しかも、その準決勝敗退により、他の日本人スケーターの成績によっては、オリンピックに出場できない可能性が高まったのである。

「(オリンピック予選に)1戦目から出てるから、途中から出てきた子に負けるのは嫌っていうのもあったし、スカイ(ブラウン)も(開)心那も東京のメダリストは内定してるから、自分だけ行けないのも嫌やったし、パリで連覇したいって思いながらやってたから、出れないのが一番嫌だったから。でも今回初めて決勝行けなくて、めっちゃ怖かった」と、四十住は振り返る。

「(ブダペスト大会まで)結構練習してて、540とかもやってたけど、でもコンクリートでやるのが怖くて、頭から落ちたりとかしてトラウマがあって、そういうのもあって今回大会で出せなかったから、そこはパリで出せるように頑張ります」と続ける。

四十住さくら、「連覇目指して、一瞬一瞬を楽しんで、全力出し切ってきます」

ブタペスト大会の準決勝を終えた夜、不安な思いで眠ることができなかった四十住は、翌日の決勝を観客席から見守った。見に行くかどうかを迷うほどだったと話すが、表彰台にアリサ・トゥルー、親友のスカイ・ブラウン(英国)、そして開が立ったことで、最終オリンピックランキングで四十住が日本勢の2番手を維持。オリンピック出場が決まると、四十住は安堵と喜びが入り混じった表情を見せ、「怪我もしてたし、若い子たちがとてもうまくて追われる立場になって、それがちょっとプレッシャーに感じました」と素直な思いを涙ながらに語った。

「東京(オリンピック)のときは初代がかかってたし、東京(開催)っていうのもあって、絶対取りたいって思ってたし、今回は出られないっていう状況から出られるようになったから、ある意味プレッシャーとかは消えたかなっていう感じはします」

出られないかもしれないという恐怖から解放され、出られることへの喜びを実感した四十住。オリンピックでの競技前日となる8月5日には、自身のソーシャルメディアに「パリが決まるまでは怪我もあり、辛いことのほうが多かったけど、みなさんのサポートがあってまた大舞台に戻ってこれました。連覇目指して、一瞬一瞬を楽しんで、全力出し切ってきます!」と気合いのコメントを投稿した。

東京からの3年でひと回り、ふた回りも成長した四十住の活躍を見届けたい。

パリ2024スケートボード女子パーク日程

以下、現地時間。括弧内が日本時間。

  • 8月6日 12:30(19:30)女子パーク予選
  • 8月6日 17:30(24:30)女子パーク決勝

スケートボードは、パリ2024開催期間中の7月27日から8月7日まで行われる。詳しい日程はこちら