シモーネ・バイルズが明かすライバルのありがたみ/パリ2024体操競技

執筆者 Scott Bregman
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Simone Biles
写真: GETTY IMAGES

シモーネ・バイルズ(アメリカ合衆国)は、8月1日、パリ2024オリンピック体操競技女子個人総合決勝で、最初の種目である跳馬においてユルチェンコ・ダブルパイクを見事成功させ、他の選手を一気にリードした。

27歳のバイルズは、跳馬でロンダートから後転とび~後方屈身2回宙返りを成功させた初めての女子選手であり、この技は彼女の名前にちなんで「バイルズ2」と名づけられ、2023年の世界体操競技選手権アントワープ大会では難度6.4が与えられた。

今大会の個人総合決勝では、この種目で15.766という圧倒的な得点を獲得し、最終的に金メダルに輝いた。

しかし、この大技を行うことを当初は計画していなかったようだ。

「最初はそのつもりではありませんでした」とバイルズは明かした。しかし、彼女にはそれが必要だった。なぜなら、ブラジルのレベカ・アンドラデからの大きなプレッシャーを感じていたからだ。アンドラデは、種目別跳馬の現世界チャンピオンであり、東京2020でも金メダルを獲得している。

「彼女は偉大な選手であることはわかっていました」

「競技会では、私たちはいつも僅差です。なので、今回はあの技を出さないといけないと思ったのです」

「神様、今日はダブルパイクを成功させてくれて感謝しています」と、バイルズはリオ2016に続いて2回目となるパリ2024女子個人総合での金メダルを獲得した後、そう話した。

親しき仲のライバル

シモーネ・バイルズとレベカ・アンドラデは、互いに尊敬し合っており、切磋琢磨して互いを新たなレベルへと導いている。

「今日は、私がシモーネにちょっとがんばらせたって考えるとクールじゃない?」と、個人総合でバイルズに次いで銀メダルに輝いたアンドラデは笑いながら言った。

「シモーネは世界一であり、驚くべき才能をもった選手です。私は今回だけでなく、彼女をいつもたくさんの競技会で見て知っています。彼女と一緒に競技できることを誇りに思っています」と続けた。

「もうレベカと競い合いたくない!いつも接戦になる彼女との試合は疲れます」とバイルズは冗談を言った。「私はこれほど力の拮抗する選手と競い合ったことがありません。おかげで、私を選手として最高のレベルまで導いてくれました」と打ち明けた。

バイルズは、2014年の世界体操でルーマニアのラリサ・ヨルダケにわずか0.466点差で勝利したことがあった。その後、リオ2016で金メダルを獲得して以来、1.5点差以内で競り合った選手はひとりもいなかった。ただし、それは今回までのことだ。

バイルズは、2種目目の段違い平行棒でミスしたことで13.733点に沈み、アンドラデにわずか0.267点差まで迫られたのだった。

「段違い平行棒の後、スコアが表示されたのを見て、『まぁどうしよう』と思いました」とバイルズは振り返った。「でも、やることをやれば、きっと全てうまくいくと信じていました」そして、その通りとなった。