ハンドボール女子「おりひめジャパン」パリの夢破れる
楠本繁生監督が率いるハンドボール女子日本代表「おりひめジャパン」が4月14日、パリ2024オリンピック出場をかけたIHFオリンピック女子世界最終予選最後となる第3戦に挑み、開催国ハンガリーに28対37で苦杯を喫した。
男子日本代表「彗星JAPAN」のパリ出場枠確保の快挙に続き、女子も切符を手に入れたかっただけに、選手たちは涙し、落胆の色を隠しきれない表情で会場を後にした。
12チームが3つのグループに分かれて争い、各トーナメント上位2チームがパリ出場枠を獲得できるリーグ戦。日本はトーナメント1の4チーム総当たり戦で初戦を強豪スウェーデン(東京2020大会、2023年世界選手権共に4位)と対戦し、28対35で敗れ黒星発進。
第2戦はカメルーン代表に代わり大会2日前に急遽参戦が決まったイギリスを相手に日本が16対43(前半9‐25、後半7‐18)で大勝。対戦成績は1勝1敗となり、ハンガリーが1位、スウェーデンと日本が2位で並んだ。
最終戦は今トーナメントで最も格上のスウェーデンに25対28で勝ち星を挙げ勢いに乗ったハンガリーと対戦。ホームの力を背に、ハンガリーは会場に集まった5,000人余りのファンの大歓声を受けて、無敗で首位通過を果たした。日本代表はトーナメントで2位以上となる条件として、ハンガリーを5点差以上で下す必要があったが、それを果たせずに予選で敗れ去った。
第1戦から3戦までの日本チームの対戦は以下の通り。
第1戦:パワーとスピードのスウェーデン
前半は、キャプテンの相澤菜月が長期合宿で磨き上げた戦術と対策を活かして日本チームの攻撃を巧みに指揮し、試合開始から15分間スウェーデンに9対10の接戦を展開。しかしながら、その後5連続ポイントを許し、流れを奪われてしまったことが、今回の試合の勝敗の分かれ道となった。ラスト4分で相澤を軸に4点を取り返し、13対17で前半を終える。
後半は前半のようにスウェーデンの大量連続ゴールはなかったものの、ディフェンスからのターンオーバー(ボールやプレーのポゼッションが相手チームに渡り攻守の立場が逆転すること)を許す場面を多く与えたことで、速攻の勢いを繋げることができず、15対18。日本はゴールキーパーの亀谷さくらと馬場敦子が合計8セーブしかできなかったのに対し、スウェーデンのヨハンナ・ブンドセンは一人で16セーブ(セーブ率36%)の活躍で、攻守ともにチームの総合力が光る試合をみせた。
第2戦:ワイルドカードの若手チームイギリス
日本は前半、司令塔の相澤を起点とした攻撃を仕掛け4連続の先制点を奪うと、序盤から連続10ポイントを決めるなど、開始15分で14対1という大差をつける。日本リーグ得点王の金城ありさが前半6点を挙げ、怪我からの完全復帰をアピールした。また、ゴールキーパーの馬場敦子が前半で7点の好セーブをみせ、驚異のセーブ率47%を記録。
勢いをそのままに、後半は佐原奈生子が連続6ゴールを決める活躍を見せ、日本の “走るハンドボール” の特徴を活かし、速攻からのポイントを量産した。もうひとりのゴールキーパー、犀藤菜穂も30%以上のセーブ率が勝利に求められると言われるハンドボールで、馬場同様47%のスーパーセーブ率をマークしてチームに貢献した。
今試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチには、金城と同得点7ポイントを挙げた佐原が選出され、そのパフォーマンスが評価された。
第3戦:3試合を快勝したハンガリー
前半開始1分でハンガリーが先制点を奪うと、その後も連続して得点を重ね、日本に連続ポイントを許さない完全な試合運びを展開。常にハンガリーが試合の流れを掴んだままコントロールした。ライトバックのクルイベル・カトリン・ギッタとライトウイングのジョーリ・ルカーチ・ヴィクトーリアが活躍し、2人だけで前半10ゴールを挙げ、18対11と7点リードを奪うと、日本がその流れを変えられることはなかった。
後半、主力ディフェンダーの永田美香が開始早々レッドカードを受け、さらに試合は劣勢に傾くと、攻撃面でのミスにより日本の思い描く戦略にはめることができず、厳しい戦いが続いた。日本は最後の10分で10得点を獲得し、巻き返しを図るも時すでに遅し、17対19で後半を終え、最終28対37。48年ぶりのオリンピック自力出場の夢は破れ、予選敗退となった。
世界選手権で3大会連続ハンガリー代表として活躍したクルイベルは、この1試合で11点をマークし、優秀選手賞プレーヤー・オブ・ザ・マッチに。予選トーナメントで合計23得点を記録した彼女は、トップスコアラーのチェコ代表マルケタ・ジェラブコバとわずか1ゴール差という素晴らしい活躍を見せた。日本のトップはキャプテン相澤の7点だった。
オリンピック出場枠獲得12チーム
- フランス(開催国)
- デンマーク(2022年ヨーロッパ選手権チャンピオン)
- 大韓民国(2023年アジア予選チャンピオン)
- ノルウェー(2023年世界選手権2位:1位フランスが開催国出場枠保有のため繰り上がり)
- ブラジル(2023年パンアメリカン競技大会チャンピオン)
- アンゴラ(2023年アフリカ予選チャンピオン)
- ハンガリー(2024年オリンピック最終予選トーナメント1)
- スウェーデン(2024年オリンピック最終予選トーナメント1)
- スペイン(2024年オリンピック最終予選トーナメント2)
- オランダ(2024年オリンピック最終予選トーナメント2)
- ドイツ(2024年オリンピック最終予選トーナメント3)
- スロベニア(2024年オリンピック最終予選トーナメント3)
すでに出場枠を獲得していた6チームに加え、今回の世界最終予選の各トーナメント上位2チーム・計6チームがパリへの切符を手に入れた。※()内、出場枠を獲得した大会
また、今月3日に新監督としてスペインリーグのバルセロナを指揮するアントニオ・カルロス・オルテガ・ペレス氏の就任を発表した日本男子代表「彗星JAPAN」は、2023年10月のパリオリンピックアジア予選で、バーレーンを32対29で破り、1988年のソウル大会以来36年ぶりに自力でオリンピック出場を決めている(前回大会の東京2020では、開催国枠で出場)。
※オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。
IHFオリンピック女子世界最終予選結果
[トーナメント1] 開催地:ハンガリー(デブレツェン)
- 4月11日(木)○ハンガリー 49対11 イギリス●
- 4月11日(木)○スウェーデン 35対28 日本●
- 4月12日(金)●スウェーデン 25対28 ハンガリー○
- 4月12日(金)○日本 43対16 イギリス●
- 4月14日(日)●イギリス 8対52 スウェーデン○
- 4月14日(日)○ハンガリー 37対28 日本●
【予選突破】ハンガリー3‐0、スウェーデン2‐1【予選敗退】日本1‐2、イギリス0‐3
[トーナメント2] 開催地:スペイン(トレビエハ)
- 4月11日(木)●チェコ 21対31 スペイン○
- 4月11日(木)○オランダ 34対22 アルゼンチン●
- 4月12日(金)○オランダ 32対18 チェコ●
- 4月12日(金)●アルゼンチン 23対26 スペイン○
- 4月14日(日)○チェコ 41対33 アルゼンチン●
- 4月14日(日)●スペイン 26対27 オランダ○
【予選突破】オランダ3-0、スペイン2‐1【予選敗退】チェコ1‐2、アルゼンチン0‐3
[トーナメント3] 開催地:ドイツ(ノイウルム)
- 4月11日(木)○ドイツ 31対25 スロベニア●
- 4月11日(木)○モンテネグロ 30対25 パラグアイ●
- 4月13日(土)○ドイツ 28対24 モンテネグロ●
- 4月13日(土)○スロベニア 32対14 パラグアイ●
- 4月14日(日)●パラグアイ 20対37 ドイツ○
- 4月14日(日)●モンテネグロ 26対30 スロベニア○
【予選突破】ドイツ3‐0、スロベニア2‐1【予選敗退】モンテネグロ1‐2、パラグアイ0‐3
パリ2024オリンピックのハンドボールは、スタッド・ピエール・モーロワを会場に、開会式7月26日の前日から試合がスタートし、8月10日、11日に男女のメダル決定戦が行われる。試合フォーマットは過去大会と同様、グループステージを経てノックアウト方式のトーナメントが行われる。
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おりひめジャパン日本代表選手一覧
- # 1 亀谷さくら(ゴールキーパー)
- # 2 永田美香(ピヴォット)
- # 3 佐原奈生子(ピヴォット)
- # 4 初見実椰(ピヴォット)
- # 5 金城ありさ(ライトバック)
- # 6 北原佑美(レフトバック)
- # 7 服部沙紀(ライトウィング)
- # 9 笠井千香(ピヴォット)
- #12 馬場敦子(ゴールキーパー)
- #13 中山佳穂(ライトバック)
- #18 松本ひかる(レフトウィング)
- #20 秋山なつみ(ライトウィング)
- #22 犀藤菜穂(ゴールキーパー)
- #23 相澤菜月(センターバック)
- #24 岡田彩愛(センターバック)
- #32 佐々木春乃(レフトバック)
- #47 吉野珊珠(ライトバック)
- #51 吉留有紀(レフトウィング)
- #56 菊池杏菜(レフトバック)
- #89 石川空(ライトバック)