1958年のワールドカップでは当時まだ無名だったペレが、1990年にはトト・スキラッチが、 1998年にはマイケル・オーウェンが、2010年にはアサモア・ギャンが活躍するなど、サッカーワールドカップはその歴史において若手選手が開花する瞬間を目撃してきた。
そしてそれは、2022年のカタール大会も同じだろう。
フランス代表のメンバーだけを見ても、オーレリアン・チュアメニ(22)、エドゥアルド・カマヴィンガ(19)、キリアン・エムバペ(23)、ウィリアン・サリバ(21)、ジュール・クンデ(23)といった多くの若手選手が挙げられる。
さらにスペインのガビ、ペドリのコンビや、ブラジルの攻撃の逸材、ヴィニシウスJr(22)、アントニー(22)、ロドリゴ(21)、マテウス・クーニャ(23)などが、オリンピック王者のネイマールと一緒にプレーする可能性を秘めているのだ。
今大会ではハーラント、ディバラ、ウーデゴールなどのスーパースターを見ることはできないが、次世代を担う選手たちのほとんどがカタールに集結する。
ここでは、FIFAワールドカップ2022で注目の若手選手10人を紹介する。彼らの多くは2001年1月1日以降に生まれているため、FIFA最優秀若手選手賞を受賞する可能性もある。
10. 久保建英 - 日本
- 生年:2001
- クラブ:レアル・ソシエダ
久保がサッカー界を賑わすようになってからしばらく経つように感じられるが、彼はまだ21歳。
バルセロナの有名な「ラ・マシア」アカデミーに入団した際に「日本のメッシ」と賞賛された久保は、最終的に2019年にレアル・マドリードと契約した。
その後、マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、そして再びマジョルカを経て、2022年にレアル・ソシエダへの期限付き移籍を果たした。
若きメッシを彷彿とさせる、豊富な技術とスピード、そしてドリブルの高い能力を持つ久保は、試合を決定づけ、ファンを喜ばせる才能を持っている。
母国開催となった東京2020オリンピックの南アフリカ戦で日本代表チームの最初のゴールを決め、最初の3試合でネットを揺らしたが、準決勝でスペインに敗れ、さらには銅メダルもメキシコに奪われ、久保にとっては悔しい結果に終わった。
しかし、久保のパフォーマンスは、彼がチームのリーダーとなり、世界の舞台で活躍できることを証明した。
現在21歳の久保は、このワールドカップを自分のものにし、大韓民国のソン・フンミンと並ぶアジアのビッグネームとして名乗りを上げることになるのだろうか。
9. アルフォンソ・デイヴィス - カナダ
- 生年:2000
- クラブ:バイエルン・ミュンヘン
アルフォンソ・デイヴィスの物語は、彼の両親が2005年に情勢不安定なリベリアから難民としてカナダに逃れてきたところから始まった。
サッカーは彼の初恋のようなものであり、わずか14歳でMLS(アメリカ合衆国・カナダのプロサッカーリーグ)のバンクーバー・ホワイトキャップスFCレジデンシーに入団した。
それが2015年のことで、2018年にはバイエルン・ミュンヘンの選手となり、2019/2020シーズンのチャンピオンズリーグではバルセロナ戦(かの有名な8-2の準決勝)と決勝のパリサンジェルマン戦で周囲を圧倒した。
カナダ男子代表選手としてチャンピオンズリーグを制したのはデイヴィスが初めてで、カナダのサッカーファンの若い世代に影響を与え、その後、同国代表チームを36年ぶりにワールドカップに導くことに貢献した。
左ウイングバックのポジションから試合をコントロールできる攻撃力とディフェンス力を持つデイヴィスは、ピッチ上で輝きを放ち、見るものを楽しませる存在だ。
8. パペ・マタル・サー – セネガル
- 生年:2002
- クラブ:トッテナムホットスパー
セネガルは、エル・ハッジ・ディウフやパパ・ブバ・ディオプのような才能あふれる選手を数多く世に送り出し、サディオ・マネやカリドゥ・クリバリといった選手が現在バイエルンとチェルシーでその力を世界に見せつけている。
そして、パペ・マタル・サーは、リーグ・アンのメスで2020/2021シーズンに目を見張る活躍をしたことで、アントニオ・コンテ率いるトッテナムホットスパーへの移籍が決まり、その知名度を上げた。ローンで再びメスに戻った19歳の彼は、降格圏で苦戦するチームでのプレーにもかかわらず、強い印象を残した。
現在、トッテナムでの出場時間は長くはなく、メンバー入り争いを続けているサーだが、2022年のアフリカネイションズカップではセネガルの優勝に貢献。カタールでブレイクする才能を秘めた彼は、このワールドカップで本領を発揮することができるだろうか。
7. オーレリアン・チュアメニ - フランス
- 生年:2000
- クラブ:レアル・マドリード
え? カゼミーロが移籍?
トニ・クロース、カゼミーロ、ルカ・モドリッチというレアル・マドリードのアイコニックな中盤のトリオが、カゼミーロのマンチェスター・ユナイテッドへの移籍によって崩れ去るというビッグニュースにより、世界中が息をのんだ。
だが、カルロ・アンチェロッティ監督が動揺することはなかった。カゼミーロの次には、この上なく冷静なオーレリアン・チュアメニが控えていることをわかっていたからだ。
ボルドー、モナコでプレーしてきた守備的ミッドフィルダーのチュアメニの存在により、レアル・マドリードは今後10年ほどはそのポジションの安定性を保証されたと言えるだろう。
戦術、技術、ポジショニングの感性、そしてゴールを狙う目。チュアメニは、ワールドクラスの守備的ミッドフィルダーに必要な自信と冷静さを備えたプレーで、レアル・マドリードのリーグ優勝、チャンピオンズリーグのグループリーグのパフォーマンスに貢献した。
フランスのワールドカップ2連覇に向け、彼の活躍が期待されている。
6. リカルド・ペピ – アメリカ合衆国
- 生年:2003
- クラブ:フローニンゲン(FCアウクスブルクからレンタル移籍)
クリスチャン・プリシッチ、ウェストン・マケニー、ジョバンニ・レイナといったスター選手を輩出するアメリカ代表は、カタールでサッカー界の秩序を覆すことができるだろうか。
もし、若手のリカルド・ペピに火がつけば、チームUSAがワールドカップで騒ぎを起こすのを見ることができるだろう。
MLSのFCダラスで2020/2021シーズンに16ゴールを挙げ、ドイツのFCアウクスブルクが彼をブンデスリーガに呼び寄せたのは2022年1月。しかしヨーロッパに移籍後、ストライカーの彼はブンデスリーガの15試合に出場して得点を挙げることができず不安視され、オランダのフローニンゲンにレンタル移籍。19歳の彼は、リーグ戦最初の5試合で4ゴール1アシストを記録し、再び得点の感触を取り戻した。
5. ジャマル・ムシアラ - ドイツ
- 生年:2003
- クラブ:バイエルン・ミュンヘン
ワールドカップの常連国であり、4度の優勝を誇るドイツには、大舞台で躍動する若きエースが常に存在する。
バイエルン・ミュンヘンに所属するジャマル・ムシアラは、今シーズンの開幕戦から9試合で5ゴール4アシストと、9つのゴールに貢献しており、熱狂的な支持を得ている。
19歳にして世界を股にかける彼は、カタールでのドイツの可能性に期待を寄せている。
ドイツは9月に欧州ネーションズリーグでイングランドと対戦し、1-1で引き分け。その後、ムシアラは「我々は良い方向に向かっている」と語り、「ネーションズリーグでのイングランド戦は、我々の成長を示してくれた。ワールドカップでイングランドと戦う準備はできていると思う。カタールで僕らを倒すのは簡単じゃないだろうね」と続けた。
4. アントニー・マテウス・ドス・サントス - ブラジル
- 生年:2000
- クラブ:マンチェスター・ユナイテッド
マンチェスター・ユナイテッドへの記録的な移籍を果たしたブラジルのスーパースター、アントニーが、サッカーの祭典を前に注目を集めている。
ユナイテッドのユニフォームを身にまとい、4試合で3ゴールを挙げたアントニーにとって、それは決して悪くないスタートだ。特に、そのうちの1ゴールはデビュー戦となったアーセナル戦で放たれたもので、彼は3-1での勝利に貢献した。
同チームではウイングのポジションで活躍するが、前線でもプレーできる素質も十分に備えている。2022年ワールドカップでブレイクできるかどうか、それはチームメートとのポジション争い次第なのかもしれない。
3. ヴィニシウスJr - ブラジル
- 生年:2000
- クラブ:レアル・マドリード
最高の若手選手を予想する上で、直近のチャンピオンズリーグ決勝で決勝ゴールを決めたヴィニシウスJr.の存在を忘れてはならない。
昨シーズンはレアル・マドリードで22ゴールを挙げ、カリム・ベンゼマに次ぐ2位。UEFAチャンピオンズリーグの最優秀若手選手賞にも選出された。
ブラジル代表としては、最近の7試合でわずか1ゴールとそれほど目立ってはいないが、ヴィニシウスJrはこの3年間、一度も負けたことがないブラジル代表メンバーのひとりである。
このワールドカップで、彼が最も輝く選手となる可能性は少なくない。
2. ジュード・ベリンガム - イングランド
- 生年:2003
- クラブ:ボルシア・ドルトムント
ジュード・ベリンガムは今シーズンのチャンピオンズリーグで4試合中4得点を挙げ、ドルトムントで輝きを放っている。そのことからも、彼はカタールでブレイクする可能性のある選手として話題を集めている。
2019/2020シーズンのEFLカップで、バーミンガム・シティ史上最年少の16歳でトップチーム入りし、ボルシア・ドルトムントでは史上最年少選手として得点を挙げ(当時17歳2カ月)、英国人最年少でチャンピオンズリーグにデビューし(17歳113日)、同大会では、2番目に若い選手としてゴールを決めた(17歳281日)。
チームを前進させるダイナミックなミッドフィルダーで、カタールで上位を狙うイングランド代表のカギを握る存在になるかもしれない。
1. パブロ・パエス - スペイン
- 生年:2004
- クラブ:バルセロナ
今まさにバルサを再建しているシャビ・エルナンデス監督が抱える天才のひとりであり、才能あふれる18歳のパブロ・パエスには多くの期待が寄せられている。
ガビの愛称で知られる彼の活躍はすでに認められており、2022年10月のバロンドールでコパ・トロフィーを受賞。2022年において、21歳以下の選手の中で世界最高であると審査員は称える。
スペインはガビの他にも優秀な若手選手を擁しており、彼のチームメイトで、オリンピックの銀メダリストでもあるペドリも大会で注目される存在だ。
ペドリとガビは、ワールドカップの勝利でスペインの次世代の選手たちをインスパイアすることができるのだろうか。