東京オリンピックにはあなたも参加可能! ボランティアとして大会運営をサポート

「おもてなし」の心で東京五輪を成功に導く

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利他的な精神が根づいたイギリスではボランティアは日常の営み。ロンドン五輪ではエリザベス女王に

過去の歴史が示すように、オリンピックの成功にはボランティアの存在が欠かせない。競技運営から開催都市の案内まで、オリンピックに際して来日する人々の活動をサポートする重要な役割を担う。東京五輪では約11万人のボランティアを動員し、「おもてなし」の心で日本を世界にアピールする。

大会運営、競技、式典などをサポート

オリンピックは4年に一度、華々しく開催されるスポーツの祭典だ。競技結果や選手、チームの背景にあるドラマがメーンストーリーだが、それらの陰には、大会運営をサポートするオリンピックボランティアの存在がある。

歴史をさかのぼると、オリンピックで一般ボランティアの募集を開始したのは、1948年のロンドン五輪からとされている。1992年のバルセロナ五輪では、それ以前のように経費節約のためにボランティアを雇うのではなく、開催都市としてのプライドを高め、市民の参加意識を強めたことが成功の一因となった。2000年のシドニー五輪からは、開催国外からのボランティアの募集も始まり、2004年のアテネ五輪では、188カ国から参加者が集まった。

ボランティアの活動内容は、会場内等での案内や競技運営のサポート、外国人のアテンド、ヘルスケア、式典の運営サポートなど多岐にわたる。参加人数は、1984年のロサンゼルス五輪までは約2万8000人だったが、以降は増加傾向にあり、2004年のアテネ五輪は約4万5000人、2012年のロンドン五輪では約7万人。2020年開催の東京五輪では、オリンピック・パラリンピック組織委員会が「大会ボランティア」として約8万人、東京都が「都市ボランティア」として約3万人を募集しており、合わせて約11万人と過去最大規模のボランティアが参加する見込みとなっている。

東京五輪のボランティアは2種類

2018年9月26日から、東京五輪のボランティア募集が行われている。基本条件は、「大会ボランティア」は1日8時間程度で10日以上、「都市ボランティア」は1日5時間程度で5日以上参加できること。いずれも休憩時間を含む。参加者にはユニフォーム一式や活動中の飲食物に加え、交通費補助として1日あたり1000円相当が支給される。ボランティア活動向けの保険も加入されるが、交通費及び宿泊は自己負担、自己手配となる。

2種類のボランティアの違いを見てみると、オリンピック・パラリンピック組織委員会が募る「大会ボランティア」は、大会運営に直接かかわるボランティアで、競技会場や選手村などの大会関係会場が主な活動範囲となる。観客サービスサポートや競技運営サポート、通訳などのなかから参加者は希望の活動内容を最大3つまで選択することができる。

一方、東京都が運営を主導する「都市ボランティア」は、大会期間中の観光案内がメーンとなる。競技会場がある都道府県が主な活動場所となり、空港や駅、観光スポットなどで、五輪開催に伴って国内外から大勢集まる人々に多言語での案内を行う。2019年以降になると、ボランティア参加者はオリエンテーションや研修を受ける必要がある。

2018年11月には、「大会ボランティア」への応募者が目標の8万人を突破。8万1000人を超える応募のうち44%が外国籍だという。一方、「都市ボランティア」への応募者は11月21日時点で1万5180人にとどまっており、東京都は引き続き募集をかけている。

イギリスでは24万人が参加を希望

何万人という単位のボランティアを動員しながら、うまく機能させてオリンピックを見事に成功させたのが2012年のロンドン五輪だ。

イギリスはもともと、慈善組織が運営している「チャリティーショップ」が街中にの至るところに設置されていたり、困窮状態に陥る人を支援する仕組みが整えられていたりと、利益を求めず他人のために行動する考え方が多くの人々に浸透している。NCVO(英国・ボランタリー団体全国協議会)の調査によると、イギリス内で年間を通じてボランティア活動をする人は約3割にも上る。

文化的にボランティア精神が根づいたイギリスでのオリンピック開催にあたって、2010年9から10月にかけてオリンピックボランティアの募集を開始すると、定員の7万人に対して24万人を超える応募があった。参加者たちは「あなたたちがオリンピックをつくる」という意味で「ゲームズメーカーズ」と名づけられ、誰もが当事者意識を持って、会場や選手村の運営、開閉会式のパフォーマンスなど860業種にもわたる役割をこなした。五輪終了後、ロンドンの中心部で行われた選手団の祝勝パレードでは、大会ボランティアたちも選手団の後ろについて行進。ボランティアの存在あってこそのオリンピック開催成功だったという事実を印象づけた。

日本の「おもてなし」を世界に発信

夏季オリンピックが自国で開催されるのは、生涯で1、2度あるかどうか。日本では2020年が2度目の開催だが、前回の1964年から56年の時を経ている。競技を観戦するだけでも貴重な経験となるが、「自分自身も参加した」となれば、その思い出は特別なものになるだろう。特に語学力や医療など、持っているスキルを生かした活動ができれば、得られる達成感も大きく、その経験はのちの人生において大きな意味を持つはずだ。

過去にスポーツの国際大会にボランティアとして参加経験のある人からは、「世界中の人との出会いがある」「会場の熱気を体感できる」といった声が挙がっている。ボランティアの振る舞い一つで日本全体の印象に影響を与えることを踏まえると、単なる慈善活動ではなく、自分自身が「もう一つの日本代表」という意識を持って参加することも大切になる。

東京五輪招致のプレゼンテーションで、アナウンサーの滝川クリステルさんは「おもてなし」の精神を世界中に発信した。その言葉どおり、世界中から集まるアスリートや大会関係者、観客たちを思いやりの心を持って接することで、日本らしさをアピールしていける。そのためには、「東京五輪を成功させたい」という熱意を持ったボランティア参加者の活躍が不可欠だ。

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