Tokyo 2020(東京五輪)の予選を含む、さまざまな大会が中止・延期を余儀なくされている。それはリオネル・メッシや東京五輪世代の久保建英らが所属するスペインサッカー「ラ・リーガ」も例外ではない。ここではラ・リーガの再開、あるいは中断・終了した場合について解説する。
■ラ・リーガは6月11日に再開予定
スペインサッカーリーグ「ラ・リーガ」は3月10日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する安全対策として、以降2週間の試合に関して無観客で実施すると発表した。しかし、12日には、スペイン政府の要請に従い、直近2節の延期を発表。また13日には「再開日を定義せずに延期する」と発表した。17日に「新型コロナウイルスによる健康上のリスクが収まり次第、団結して最善の方法を見つける」と声明を出した。
5月23日、ラ・リーガは公式Twitter上で、6月8日の週から公式戦を開催すると伝えた。また、スペインのサンチェス首相は、「スペインはあるべき姿、多くの日常を取り戻す。6月8日から、リーガ・エスパニョーラは戻ってくる」とコメント。その後リーグ公式ホームページ上で、6月11日に再開すると発表した。11日にはセビージャ対ベティスの"アンダルシア・ダービー"が開催される。その他のクラブは13日と14日が再開初戦となる。
また、ラ・リーガは公式戦開催に向けて4つ段階を設け、それに従い各クラブがトップチームの活動を行ってきた。まずは5月9日よりクラブ施設での個人練習を開始。18日には、最大10人までの少人数グループでのトレーニングが始まり、すぐに14人に拡大された。6月1日からは最終段階として、人数制限なしの集団トレーニングが実施される。
■再開できた場合の日程消化について
ラ・リーガ1部は20チームによる2回戦総当たり(ホーム&アウェイ)により、獲得した勝点で順位を争う。現時点で第27節まで終了。最終節まで残り11節を消化する必要があるため、1週間に1節ずつだと2カ月あまり、1週間に2節ずつ紹介しても1カ月半は必要になる。ただし、これはあくまで机上の空論。
ヨーロッパ最強クラブを決定する大会・UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグ(CL)も現在中断されており、ラ・リーガ所属のアトレティコ・マドリーやレアル・マドリー、バルセロナは試合を残している。またUEFAヨーロッパリーグ(EL)にも、セビージャやヘタフェといったスペインのクラブが残っている。CLやELと並行してリーグ戦を最後まで行うとした場合、4月に再開しても6月末まで掛かる計算だ。なお6月開幕予定のEURO2020やコパ・アメリカは、1年延期が発表されている。
■再開できなかった場合のシナリオ
優勝チームは?
仮に全日程を消化できなかった場合、3つの選択肢が考えられる。1つは、現時点(第27節)あるいは消化できた節までの順位をシーズンの最終結果とするというもの。第27節で終了となった場合、優勝はバルセロナとなるが、2位のR・マドリーとの勝点差は「2」。1試合でひっくり返る微差であること、そして両チームのライバル関係を考えれば、多くの人にとって不満の残る結果となる。
“平等”であることを考慮すれば、前半戦が終了した第19節の結果を参考にする方法もある。この場合、バルセロナとR・マドリーが勝点で並び、得失点差で優位に立つバルセロナの優勝となる。ただ、リーグ前半で行われた両者の対決「エル・クラシコ」はバルセロナのホーム開催で、スコアレスドロー。R・マドリーが、この判断を平等とみなすことは難しいだろう。(第26節は、R・マドリーが2-0で勝利)
第3の選択として、2019-20シーズンを無効にするということもあり得る。完全な平等である一方、チームや選手、ファン、誰にとっても平等に残念な判断と言える。
欧州大会への出場資格について
第27節でシーズン終了、シーズン最終成績とする場合、CL出場権はバルセロナ、R・マドリー、セビージャ。レアル・ソシエダが獲得。ヘタフェとA・マドリーはELに回る。前半戦終了時点の場合は、バルセロナ、R・マドリー、A・マドリー、セビージャがCL、R・ソシエダとバレンシアがELとなる。
昇降格について
いずれの案を採用した場合も、マジョルカ、レガネス、エスパニョールが2部降格となる。一方、2部から1部への昇格は事情が複雑だ。1位と2位は自動昇格となるが、残り1枠は3位から6位までのプレーオフ勝者が得るレギュレーションを採用しているからだ。現時点(第31節)終了時点の1位カディスと2位レアル・サラゴサ、あるいは前半戦終了時点の1位カディスと2位アルメリアが昇格するにしても、残り1枠を3位に与えることが妥当なのか、慎重な議論が必要となる。
チャンピオンズリーグ・ヨーロッパリーグその他大会への影響
A・マドリーは前回王者リバプール(イングランド)を下し、CL準々決勝進出を決めている。R・マドリーとバルセロナは、第1レグで白星を挙げられなかったものの、ベスト8進出の可能性は十分に残している。一方、ELで勝ち進んでいるセビージャとヘタフェは、まだベスト16の第1レグを行えていない。CLもELも新しい日程が発表されていないが、再開されるとしたら、5チームはラ・リーガとの過密日程をこなす必要が出てくる。
来シーズンへの影響
ラ・リーガ1部は例年5月にシーズンが終了する。そして6月・7月は、各国代表選手がFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップや各大陸選手権に出場。8月中旬にシーズンを迎える。
仮にリーグ戦を最終節まで行う場合、6月や7月も試合を行うことになるが、2020年に予定されていたEUROやコパ・アメリカは1年延期となったため、選手を確保することは可能だ。しかし、仮にシーズン開幕が例年通り8月だとすると、各チームのフロントは、短期間でのチーム編成を余儀なくされる。次のシーズンを1部で戦うのか2部で戦うのか、CLに出るのかELに出るのか、それとも出ないのか。全てのチームに影響が出ることは間違いない。
リーグを再開せず、このままシーズン終了となった場合はどうか。これならば時間的な余裕は十分にあるが、試合を行わないことによる経済的な影響は小さくない。リーグを再開するにしても終了するにしても、大きな影響が出ることに変わりはない。