実に1年7か月ぶりとなる男子バレーボール日本代表の国際親善試合が、5月1・2日の両日、Tokyo2020(東京五輪)の会場となる有明アリーナで開催された。試合は3-2、3-1で日本が中国に連勝した。
さらにその翌週、7・8日には高崎アリーナ(群馬県高崎市)で紅白戦も実施。こちらは有観客で行われ、50パーセントの収容制限はあったものの、2,070名(2日目は2,072名)の観客からは、久しぶりに「JAPAN」のユニフォームを着て躍動する選手へ大きな拍手が送られた。
中国との親善試合と紅白戦の計4試合は、来る東京五輪に向けた選手選考も含まれており、選手にとってはワールドカップや世界選手権などこれまでの試合と同様に、重要な戦いであるのは変わりない。
しかも東京五輪本番はリベロも含め、最終メンバーとして登録されるのは12名。厳しいライバル争いの中、新戦力として台頭したのが現役大学生のアウトサイドヒッター、髙橋藍だ。
東山高校(京都)で2020年の春高バレーを初制覇。チームの主将でエースとして活躍し、日本体育大学へ進学した髙橋は昨年度の日本代表登録選手にも選出された。中学生の頃は守備専門のリベロとしてプレー経験もあり、攻撃だけでなく、守備力や将来性を評価されての選出ではあったが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大により、国際大会が軒並み中止を余儀なくされた。
それでも年末に開催された全日本インカレ(第73回秩父宮賜杯全日本バレーボール大学男子選手権大会)では、1年生ながら日本体育大学を準優勝に導く活躍を見せた。今年度も日本代表登録選手に名を連ね、満を持しての日本代表デビューが中国との親善試合だった。
エースで、今季から主将を務める石川祐希(パワーバレー・ ミラノ/イタリア)や、昨季まで主将の柳田将洋(サントリーサンバーズ)を欠く中、試合序盤こそ緊張が目立った髙橋だが、徐々に本領発揮。得意のレシーブからスピードや高さを活かした攻撃でアピールし、中垣内祐一監督も「19歳でここまでプレーできる選手はなかなかいない」と目を細めた。
まだまだ国際試合の経験は少なく、高さやパワーで勝る海外の強豪相手にどこまで通用するかは未知数でもある。だが、試合を重ねるたびに成長を遂げ、期待のレシーブだけでなく、中垣内監督が期待するバックアタックやサーブでも抜群の存在感を発揮している。
5月28日からイタリア・リミニで開催されるネーションズリーグで髙橋はもちろん、同じくこれが日本代表で初めての経験となる大塚達宣(早稲田大)、高梨健太(ウルフドッグス名古屋)ら若手選手がどのような活躍を見せるのか期待したい。
新戦力が続々台東し、東京五輪を前に期待値が高まる一方、ポジション争いは熾烈だ。ベテランの福澤達哉(パナソニックパンサーズ)や柳田、さらにイタリアリーグを終えて帰国し、自主隔離期間を経てチームに合流する石川も含めたアウトサイドヒッター陣の層は厚く、誰が選ばれてもおかしくない反面、誰が落選するかもわからない。
中国戦は登録メンバーから外れた柳田は「自分を見つめる材料にしながら取り組んでいきたい」と話すように、置かれた現状に危機感をのぞかせる。これまで大舞台で何度も見せて来たように、勝負がかかった後半のサービスエースなど柳田にしかない持ち味もあるが、伸び盛りの若手や、経験豊富でサーブレシーブにも定評がある福澤、世界最高峰のイタリアで経験を重ねる石川などライバルたちは強力だ。
「今、出せることに集中していく」と言う柳田がネーションズリーグで、どこまで巻き返すことができるか。同様にオポジットやセッター、ミドルブロッカーのポジション争いの行方に注目が集まる。
五輪本番までのカウントダウンが進む中、心配なのが紅白戦の初戦で負傷退場したオポジットの西田有志(ジェイテクトSTINGS)だ。ブロックの着地時に隣で跳んだ選手の足を踏んでしまい、右足首を捻り立ち上がることもできず、そのまま病院に運ばれた。
診断の結果、中垣内監督は「骨に異常はない」と言い、右足首のねんざと発表。さらに精密検査を行い、今後の状況を判断していくそうだが、東京五輪へ向けネーションズリーグにも帯同させる予定だと言う。
2019年のワールドカップで4位と日本の躍進に貢献し、ベストオポジットにも輝いた西田はバレー男子日本代表にとって欠かせぬ攻撃の柱であるのは間違いない。大事に至らなかったことを幸いとし、五輪に向け万全の復帰を願うばかりだ。
28日からのネーションズリーグを経て、東京五輪に出場する12名が決定する。まさに“過去最高”とも言えるチーム内競争を制した12名の顔ぶれはどうなるのか。今から待ち遠しい。