パリ2024トライアスロン観戦ガイド! 注目ポイント・競技形式・試合日程

執筆者 Risa Bellino
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ワールドトライアスロン パリ2024オリンピックテストイベント
写真: ©World Triathlon Wagner Araujo

シドニー2000大会からオリンピック公式競技として採用され、パリ2024オリンピックで7回目の開催を迎えるトライアスロン競技。

日本は初開催の2000年から全てのオリンピックに日本代表男女を派遣しており、女子の過去最高順位は北京2008で5位入賞を果たした井出樹里で、男子はアテネ2004で13位に入った田山寛豪となる。

近年は男女ともにヨーロッパ諸国が世界ランキングの上位を占め、特に直近3年は開催国フランスの強さと選手層の厚さが抜きんでている。次々に強豪選手を輩出する欧州以外では、女子はアメリカ、男子はオセアニアの勢力も見過ごせない。東京2020から新種目として加わった混合リレーは、パリでも実施が決定しており、初代王者のイギリスほか、フランス、ドイツ、ベルギーなどがメダル有力候補に挙がる。

トライアスロン競技初日まであと2カ月と迫る、5月30日、日本トライアスロン連合は都内で記者会見を開き、日本代表内定選手3名を発表した(※)。クオリフィケーションランキング順に、東京2020に続き2大会連続出場となる、高橋侑子、ニナー賢治、小田倉真が選出され、パリへの意気込み、コースの見どころなどについて、内定発表記者会見で語った

パリ大会では、シャンゼリゼ通りなど『光の都』パリを象徴するランドマークと美しい街並みを駆け抜けるコースを舞台に、個人男女と混合リレーの決勝レースが3日間にわたり開催される。スタートとフィニッシュ地点となるセーヌ川に架かるアレクサンドル3世橋の観客席以外は、チケットの購入なくコース上で選手を応援し、観戦を楽しむことができるため、オリンピックファンには嬉しい屋外競技のひとつだ。

ここでは、トライアスロン競技の日程、実施種目、会場とともに、注目の日本選手を紹介する。

※オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。

【2024年5月30日更新】

パリ2024トライスロンの競技形式

パリ2024トライアスロンの個人競技は、スイム1,500m、バイク(自転車)40km、ラン10kmを続けて行い、その合計タイムで順位を争う。昨年同コースで行われたパリ2024テストイベントでは、男子のトップ選手が約1時間41分、女子は約1時間51分でフィニッシュした。

混合リレーは、男女2人ずつの4人で1チームが構成され、各選手はスイム300m、バイク5.8km、ラン1.8kmの距離を1人で行い、次の選手にハイタッチでつなぐ。パリでは、東京2020とは出走順が逆になり、女子→男子→女子→男子の順でリレーが行われる。1選手あたり16分~20分という速さでスーパースプリントと呼ばれる短距離トライアスロンを行う混合リレーは、次々に変わるハイスピードな展開が見どころで、4選手合計約1時間12分~15分の競技時間でオリンピックメダルの行方が決まる。

パリ2024では、男女110名(開催国フランスと、三者委員会が決定するユニバーサリティ枠男女各2名ほか、102名)のアスリートがトライアスロン競技に出場する。2024年5月27日に選考期間が終了し、日本は女子1枠、男子2枠を獲得した。しかし、日本は女子の2枠目が獲得できなかったため、女子2名、男子2名で構成される混合リレーの編成ができず、リレーの出場枠を逃している。内定選手発表内容の詳細はこちら

トライアスロン競技の日本代表選手

2010年から2023年までに開催されたアジア競技大会で、男女個人と混合リレー(2014年から)で無敗のチームジャパンは、長年アジア大陸の国と地域を牽引している。その中でも近年頭角を現し、世界に最も近い選手として注目を浴びているのが、東京2020でオリンピック初出場を果たしたニナー賢治高橋侑子だ。

オーストラリア・パースで生まれ育ち、日本人の母とオーストラリア人の父を持つニナーは、2018年12月より日本トライアスロン連合所属としてレースに参戦。2023年杭州で行われたアジア競技大会個人・リレーでW優勝、2023年日本選手権制覇、アジア選手権2連覇のほか、今年3月のホンコンチャイナで開催されたワールドカップで初の表彰台を飾った。オフシーズンは東京2020金メダリストのクリスティアン・ブルメンフェルトを擁するノルウェーチームと合宿を行ったり、銀メダリストのアレックス・イー(イギリス)、銅メダリストのヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)と海外で練習を積むなど、質量共に世界トップのトレーニングを重ね、スピード、スタミナ共に全種目で進化してきた。2024年5月に開催されたワールドトライアスロンシリーズ横浜大会では、特にランの技術的な部分で練習の成果が表れ、日本男子最高順位の7位、メダル圏内まであと16秒という結果で、パリ内定を確かなものにした。「パリでの目標はメダルの獲得」と力強く語る。

女子不動のエースに成長した高橋侑子は、3種目のバランスが取れた選手だ。幼少からトライアスロンをはじめ、日本学生選手権4連覇、FISU世界大学選手権で世界チャンピオンに輝くと、卒業後は2017年からヨーロッパを主な練習拠点として多国籍の国際色豊かなチームに加入し、世界で戦える実力をつけてきた。アジア競技大会2連覇、アジア選手権3大会チャンピオン、3度の日本選手権制覇を果たし、アジア大陸女王に君臨する高橋は、2度目のオリンピックで「経験してきたことを糧に、(パリ大会で)すべて注ぎ込みたいなと思っています」と、意気込みを語る。

男子2枠目は、2年間にわたるオリンピック選考期間の最終選考レースまで激しい代表争いが繰り広げられ、小田倉真が2度目の代表内定を決めた。ランの粘り強い走りを強みとする小田倉は、2023年ワールドカップで自己ベストとなる威海大会2位、成都大会5位入賞の結果を残し、最終選考レースとなった今年5月のワールドトライアスロンシリーズ・カリアリ大会で、落車のアクシデントに見舞われるも、日本男子最高順位でフィニッシュし、クオリフィケーションランキングをニナーに次ぐ2番手につけ、パリへの切符を掴んだ。フィニッシュまで諦めず、順位を上げていく根気強い走りに注目したい。

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レース観戦ポイント

見どころは、レースの流れを左右することもある、重要な種目のつなぎ目、「トランジション」だ。

選手には、トランジションエリアと呼ばれる場所に、それぞれのレースナンバーと名前が書かれたバイクスタンド、ボックスが用意される。次の種目に移行するために、選手はそこで競技用具やシューズなどを瞬時に取り換え次へと進む。ここで素早くトランジションを行うことで、前を行く選手たちに追いつくことができたり、反対に、集団を逃してしまい、苦しい展開に陥ってしまったりすることもある。レースの勝敗を分けることもあるトランジションは、トライアスロンの第4の種目とも呼ばれ、スムーズに切り替えを行うことで、レースを有利に進めることがきる、外せないポイントだ(この時間も記録に含まれる)。

日本の高橋侑子は、「高速トランジション」で世界でも定評があり、これまでも多くの大会でその素早い切り替えにより集団の良い位置に入ってレースを展開してきた。プレッシャーもかかる重要な局面で、選手がどのようにトランジションを行うかも見逃せないポイントだ。

パリ2024では、流れのあるセーヌ川を泳ぐ。スイムコースにはコースロープの代わりに目印となるブイが浮かんでいて、それを目印に泳ぐため、オープンウォーター特有の集団泳の位置取りやコース取りがポイントとなる。バイクは平地基調のコースでありながら鋭角なカーブや石畳が含まれており、テクニカルなコースレイアウトとなっているため、どれだけ集団で協力し合いながらスピードを落とさずに攻略できるかがカギとなる。ランではオリンピックメダルをかけた駆け引きに注目してほしい。

パリ2024トライアスロンの試合日程

以下、現地時間と括弧内が日本時間。日本はパリより7時間進んでいる。※日程は変更になる可能性もある。

  • 7月30日(火)08:00(15:00) 男子個人決勝
  • 7月31日(水)08:00(15:00) 女子個人決勝
  • 8月5日(月)08:00(15:00) 混合リレー

パリ2024オリンピックトライアスロンの競技会場

エッフェル塔を望むアレクサンドル3世橋を発着地として、橋の下に設置されるポンツーン(浮桟橋)から飛び込みスタートするトライアスロン競技。(個人・混合リレー)

選手はセーヌ川を泳いだ後、32段の階段を上って橋の上に設置されるトランジションエリアでバイクに切り替える。グラン・パレ、プチ・パレ、オルセー美術館を通過し、世界で最も美しい通りのひとつとされるシャンゼリゼ通りやモンテーニュ通りを経て、パリの象徴的なランドマークを眺めながら走り抜けるバイクとランコースは必見だ。

51.5kmの個人と混合リレーのフィナーレを迎えるのは、アレクサンドル3世橋の上に設置されたフィニッシュガントリー(ゴールゲート)だ。ここには、約1,000席の観客席が設けられ、選手たちは大歓声の中フィニッシュする。

同会場のセーヌ川では、オリンピック史上初となる川での開会式の開催に加え、マラソンスイミングが8月8日(木)・9日(金)に開催される。