早田ひな、パリでの「目標は金メダル」言葉にすることで見えてくる
「目標はパリオリンピックで金メダルを取ること」
パリ2024オリンピックの目標を問われると、早田ひなは迷うことなく、言い淀むこともなく断言する。それは繰り返し言葉にし、パリオリンピックに向けた選考レースが始まったときから、アスリート早田ひなに深く刻まれた目標である。
「団体に関してもシングルスに関しても一緒です」と早田は続ける。
3年前の東京2020オリンピックでリザーブ(補欠)として大会にチームに帯同し、サポートに徹した早田は、今度はチームの柱となって「負けない卓球+勝つ卓球」でオリンピックに挑む。
国際卓球連盟(ITTF)を通じたOlympics.comのインタビューで、早田ひながパリ2024オリンピックに向けた思いを語った。
オリンピックは競技を始めたときの憧れの舞台
東京で2021年に開催されたオリンピックでは、混合ダブルスで伊藤美誠&水谷隼が初代金メダリストに輝き、日本卓球界に初のオリンピック金メダルをもたらし、女子シングルスでは伊藤が同種目において日本初のメダルを獲得した。
補欠として参加した早田が戦いの表舞台に立つことはなかったものの、大会後、早田は自身のソーシャルメディアで「頂点にのぼる選手、どんな状況でも最後勝ち切る選手は、心・技・体・智の全てが究極の状態にあり全てを兼ね備えている」とつづるなど、他の選手や4年に1度の大舞台を知る絶好のチャンスとなったことを認める。
「東京オリンピックはリザーブという形で経験させていただいて、そのときに普段プロツアーで見ている選手たちの気迫だったりとかが違うなっていうのを感じた。パリオリンピックもいろんな人が向かってくると思う」
「自分の目標や、自分が成し遂げたいものをしっかり成し遂げられるように、パリオリンピックで120%のパフォーマンスが出せるように頑張りたいなと思っています」
「オリンピックはどのアスリートも目指す場所であって、競技を始めたときの憧れの舞台でもあると思うので、オリンピックに出るというのはすごく特別だと思います」
「(だけど)出るだけじゃなくてメダルを取ること」
「私の目標は、ずっと言っていることでもあるんですけど、パリオリンピックで金メダルを取ること。それは団体に関してもシングルに関しても一緒です」
「そして日本の卓球界に貢献することが自分たちの役割だと思うので、(メダルを)取れるようにしっかり練習を積み重ねていきたいと思っています」
立ちはだかるライバル、早田ひなの挑戦
卓球界では、男女ともに中華人民共和国の選手たちが競技レベルを日々押し上げている。それもひとりやふたりという話ではない。世界ランキングの上位には常に彼らの名前が並び、4月30日時点の世界ランキングではシングルス男女ともに4位までに中国選手の名が並び、トップ10まで広げてみると半数を同国の選手が占める。
そのライバルたちに追いつき追い越すため、早田は挑戦を続けてきた。そして、2023年5月に南アフリカ・ダーバンで行われた世界選手権の準々決勝で、世界ランキング3位(当時)のワン・イーディを相手に激闘を繰り広げ、まずは1勝をあげたのである。
9度のマッチポイントを制して勝利を飾ったこの試合は、卓球ファンを熱くし、早田に希望と現実を感じさせた。
試合後、早田は「(中国選手の)壁が分厚すぎて、これを越えてもあと4人いるのかと、その現実を突きつけられた感じもありますし、だけど1度乗り越えることで何かが自分の中で変わってくるはず」と語り、「自分が今まで、東京オリンピックが終わってから中国選手に勝つためにやってきたことは間違っていなかったんだと、今日思いました」と続けた。
「1度乗り越えることで何かが変わってくる」。その直感は間違いなかったと言っていいのかもしれない。あるいは、そう言葉にすることによって、早田は「何かを変えてきた」とも言える。
同年秋のアジア競技大会でもワンを相手に勝利をあげ、2024年2月に行われた世界選手権団体戦・決勝では、東京2020金メダリストで、世界ランキング4位に立つチェン・ムン(陳夢)と対戦し、相手に強打させない、粘り強く戦う「気持ち悪い卓球」の末に3-1で勝利をおさめた。
確実に技術を高め経験を積んでいる早田だが、世界ランキング1位に君臨するスン・インシャ(孫穎莎)とはこれまでに何度も対戦してきたが、まだ1勝を挙げたことがない。
「世界一になることが目標のひとつでもあるので、世界一になるために技術を習得しなきゃいけなかったりとか、本当に毎日やることがありすぎて…」。そう語る彼女の声は、その挑戦自体を楽しんでいるようにも聞こえる。
「私にとってチャレンジは自分の可能性を広げてくれるものだと思います。それが広がることによって、今まで見えていなかった景色が見えるようになってより楽しくなると思う」と早田は明るく語る。
エースとしての役割
世界を転戦し、自分のスキルを磨いていく中で、早田はエースとしての役割をこう考えている。
「日本の女子選手のレベルは本当に高くて、何回試合をやってもいつ勝つかいつ負けるかっていうのは本当にわからないレベルで切磋琢磨しています。そういった中で自分がやれることは少ないのかなとは感じてるんですけど、一番はプレーで引っ張っていくことが自分としてはすごく得意だと思うので、しっかり声を出したりとか、チームを盛り上げられるように頑張っていきたい」
そして目指すはオリンピック金メダル。
「金メダルを取ることは簡単なことではないと思いますし、それを言っても信じてもらえないとは思うんですけど、でもやっぱり言っていくことで、自分がこの後、何をしなきゃいけないかとか、そういったことを考えながら過ごす日々になると思う」
「自分の目標は変わらず、頑張り続けたいなと思います」
早田ひなのオリンピック金メダルに向けた本番は、まもなくその時を迎えようとしている。
パリ2024で第3シードの早田は、初戦でデボラ・ビバレッリ(イタリア)と対戦し、順当に勝ち進めば、準決勝で世界ランキング1位のスン・インシャ(孫穎莎/中国)と対戦する。トーナメントの反対側のブロックには、東京2020金メダリストのチェン・ムン(陳夢/中国)が第2シード、シン・ユビン(大韓民国)が第4シードに入っている。早田とともに日本代表の女子シングルスの座をつかんだ平野美宇(みう)も入り、順当にいけば、準々決勝でシンと平野が対戦し、その勝者とチェンが準決勝の舞台に立つことになるだろう。
早田が掲げる金メダルのためにはどのステージで誰にあたろうと、その試合を制することが必須となる。世界の壁にどう挑んでいくのか? 戦いを見届けよう。
【早田ひなプロフィール】