サーファー和井田理央、日本人の母親が導いたサーフィンの道

執筆者 Olympics.com|公開日:9月27日
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写真: Ryan Pierse

2022年ISAワールドサーフィンゲームズで団体優勝を果たした日本男子に続いたのは、アメリカ合衆国、そしてインドネシア。そのインドネシア・サーフィン界のアイコン的存在として知られ、今シーズン世界を舞台に躍進を遂げた22歳のリオ・ワイダとは?

2022年ISAワールドサーフィンゲームズの男子決勝は、五十嵐カノアの優勝で幕を閉じたが、2位となったリオ・ワイダ(和井田理央)というサーファーをご存知だろうか。

インドネシア代表として活躍する和井田は2000年1月、インドネシア人の父親と日本人の母親のもと、埼玉県に生まれた。

ワールドサーフィンゲームが行われた9月、会場となった米カリフォルニアのハンティントンビーチで和井田はOlympics.comのインタビュー(英語)に応え、サーフィンとの出会いやパリ2024オリンピックへの思いを語った。

最初は怖かったサーフィン

「両親が毎日ビーチに行っていて、僕も連れられて行っていました」。5歳のときに家族でインドネシアのバリ島に移住した和井田は、父そして母に導かれるようにしてサーフィンを始めた。

「初めは海が怖かったのですが、両親は怖がる自分をよそにサーフボードに乗せたんです。それが始まりでした」

最初はサーフィンが好きではなかったという和井田だが、友達もサーフィンを始めるようになると、いつしか競技の道に。

「両親はとても真面目で、フィフティフィフティ(中途半端)というのはありえません。100%でやるか、やらないかのどちらか」

「覚えてはいないのですが、母曰く、僕が(幼い頃)『世界チャンピオンになりたい』と言ったらしいんです。おそらくそれがきっかけで母は僕を頑張らせたんだと思います。母は厳しい人で、とても真剣に考えてくれました」

「僕と一緒に毎日ビーチに来て、アドバイスをくれました。母はサーファーではないのですが、僕の苦手なところをわかっていましたから」

「今の僕があるのは、母、そして父のおかげです」

東京2020の経験、パリ2024の夢

サーフィン競技がオリンピックで初めて実施された東京2020。21歳だった和井田はインドネシア代表としてその舞台に立ち、開会式では旗手にも選出された。

「国旗を持って歩きながら、涙が込み上げてきそうになりました。最高の思い出です」

「東京2020ではインドネシアの他競技の選手とも出会いました。バドミントンでは金メダルを獲得した選手もいて、インスパイアされました」

東京オリンピックには男女それぞれ20人のサーファーが参加し、和井田は9位。サーフィン選手だけでなく他の選手たちからも刺激を受け、自分の中でチャレンジ精神がより強くなるのを実感した。

「僕の人生が変わりました。最高のアスリートになる方法を見聞きし、メダルを獲得することが簡単ではないこともわかりました。トップに立つためには努力を重ねなければなりません」

「もう一度オリンピックに行きたい。パリ2024でメダルを獲得することは僕の夢です」と和井田は目を輝かせる。

和井田理央、飛躍の2022年

サーフィン競技の世界では、トップサーファーのみが参加できるワールドサーフリーグ(WSL)主催のチャンピオンシップツアー(CT)や、その下部大会にあたるチャレンジャーシリーズ(CS)などで、選手らが戦いを繰り広げる。

和井田は2022年9月現在、CSランキングの首位に立ち、来季のCT昇格に限りなく近い位置にいる。彼が一躍ランキング上位に躍り出たのはシリーズ2戦目のことだ。

シドニーで行われたこの大会でCS初優勝を果たした和井田は、「メンタル面や体調の面を整えたことがよかったと思います」と分析する。

「(昨年の)オリンピックの後、メキシコに行きました。ワールドツアーに参戦することができ、ベストサーファーたちと時間を過ごしました。カノア五十嵐もいて、彼がどのように準備するかを見たり、考え方などに触れたりして多くを学びました」

「学んだことを自分の中にも取り入れ、もちろん水の中だけでなく外でもトレーニングをしました」と、和井田は振り返る。

その成果が2022年5月、シリーズ2戦目のCS初優勝という形になってあらわれる。

「いつかは実現できると思っていましたが、突然やってきました。とても驚きましたし、運が良かったのだとも思いました」

だが、それが運ではなかったことを同7月の3戦目で自ら証明してみせる。

「次のバリート(南アフリカ)でも再び勝つことができました。練習や準備してきたことが間違っていなかったことを実感しました」と、和井田は胸を張る。

今季のCSは残すところ3戦。その結果によって上位の大会となるチャンピオンシップツアー(CT)出場が確定する。

「(CT昇格は)間違いないだろうってみんなは言いますが、僕は自分を甘やかしたくはない。勝ち続けたいし、学び続けたいし、もっと上手くなりたい」と続ける。

今季のCTでは五十嵐カノアが5位でレギュラーシーズンを終えた。2023年1月29日から始まる新シーズンに和井田が加わる可能性は高い。男子36選手、女子18選手で構成される来季のCTはパリオリンピック出場権がかかった、さらに重みのあるツアー戦でもある。まずは和井田がCT昇格を果たすのか、そしてその先でどのような戦いを繰り広げるのか。今から楽しみにしたい。