パリ2024オリンピック閉会式を振り返る「過去に敬意を表し、未来を受け入れる、記憶に残る祭典に」

フランスの首都パリを優雅に流れるセーヌ川をステージにした革新的な開会式から16日間、光の都で32競技329種目の熱戦が繰り広げられたパリ2024オリンピック。

大会最終日となる8月11日、数々のドラマが生まれた8万人を収容できるフランス最大のスタッド・ド・フランスが巨大なコンサートホールに変身し、パリ2024を締めくくる盛大な閉会式が行われた。この式典は、大成功を収めた今大会の開会式を手掛けた芸術監督トマ・ジョリー氏が再び指揮を執り、記憶に残る壮大な大会にふさわしい演出のもと、4年後の夏季オリンピック、ロサンゼルス2028（LA28）への引き継ぎ式が行われた。

「過去に敬意を表し、未来を受け入れる、記憶に残る祭典に」と語る、トマ・ジョリー監督が掲げた閉会式のテーマは「記録（Record）」。

250人を超えるパフォーマー、サーカスアーティスト、世界的に著名な歌手、俳優たちを起用し、フランス文化の要素を取り入れつつ、未来を見据えた演出が式典を彩った。

1世紀ぶりのパリでのオリンピック閉会式

オリンピック聖火台のあるチュイルリー公園で、ザホ・ド・サガザンとアカデミー・ヘンデル＝ヘンドリクスの合唱団が、エディット・ピアフの「Sous le ciel de Paris」を歌いあげると、パリ2024で競泳4冠に輝いたフランス代表のレオン・マルシャンが聖火台から引き継いだ聖火を入れたランタンを手にし、それをスタジアムに運ぶところから閉会式がスタートする。

伝統的な閉会式とは異なり、206の国と地域の代表団の旗手が選手団を先導するのではなく、男女一組になった各旗手が国旗を持って最初にスタジアムの中心にある5大陸の形をしたステージに登場し、そこを通過してステージの周りを円になって囲むと、その後に、9,000人を超える選手・スタッフが行進で登場した。

日本代表団は、女子やり投げで日本女子初となるフィールド種目の金メダルを獲得した北口榛花と、開会式に続き、新種目のブレイキンで活躍したBボーイShigekix（半井重幸＝なからい・しげゆき）が旗手を務めた。TEAM JAPANには、8個の金メダルを獲得したレスリング代表選手の姿や、陸上競技を盛り上げた桐生祥秀や田中希実、スポーツクライミングで銀メダルを獲得した17歳の安楽宙斗や森秋彩（あい）、仏領ポリネシアのタヒチ島で行われたサーフィンの女子代表、松田詩野などの姿が見られた。

注目のフランス代表団の旗手は、4大会目にして念願の金メダルを獲得したマウンテンバイク代表のポリーヌ・フェラン＝プレヴォとラグビー代表のアントワーヌ・デュポン。また、ケイティ・レデッキー（アメリカ合衆国）、ケイリー・マキオン（オーストラリア）、グレゴリオ・パルトリニエリ（イタリア）などの選手が旗手を務め、競泳で3冠に輝いた17歳のサマー・マッキントッシュ（カナダ）など水泳界からの代表も多く見られた。

選手たちはスタッド・ド・フランスに集まった7万人以上の観客に手を振りながら応え、音楽に合わせてダンスをしたり歌を歌ったり、他国の選手と写真撮影をして挨拶を交わすなど、閉幕のセレブレーションを楽しんだ。

選手団入場後は、男女平等の精神を反映する目的で、オリンピック史上初めて最終日に実施された女子マラソンの表彰式が行われ、歴史的なオリンピックの開催を支えた約4万千5人の大会ボランティアの舞台裏での努力と貢献度を称え、ボランティア代表に花束が贈呈された。

夜が訪れ、スタッド・ド・フランスは、暗く神秘的な巨大劇場に姿を変えると、「バスティーユの魂」などフランスの歴史からインスピレーションを得たキャラクター、黄金の「ゴールデン・ボイジャー」が時空を超えて空から現れる。

2,800年前にギリシャで誕生した近代オリンピックの創設に敬意を表し、19世紀末に古代のオリンピックを復活させたピエール・ド・クーベルタンの足跡をたどりながら、明暗の巧みな光の演出で観客を人類の根源、夢の探求の旅へと導いていく。

ゴールデン・ボイジャーは、オリンピックの遺産を探し求める旅を続け、他の探検者たちと巨大なオリンピックリングを発掘すると、5つのリングがスタジアムの中央で空中に浮かび、光を放って盛大な花火と共に閉会式を祝福した。

フランスで人気のインディーロックバンド 、フェニックスやフランス語圏で人気のシンガー・ソングライター、アンジェルがステージに登場しパフォーマンスで盛り上げると、エールとヴァンダ、エズラ・クーニグ（ヴァンパイア・ウィークエンドのヴォーカル）が加わり、選手と観客を大いに沸かせた。

選手たちの活躍を称え開催都市の成功を祝う

国際オリンピック委員会（IOC）のトーマス・バッハ会長はスピーチで、選手たちのパフォーマンスが「世界中に興奮を巻き起こした」と語り、オリンピックムーブメントの転換点となる「新時代」についても言及した。

「パリ2024オリンピックは、選手たちとスポーツの真髄を最良の形で祝う大会でした」と振り返ると、「これは、私たちのオリンピックアジェンダ改革のもとで完全に実施された最初のオリンピックです。より若く、より都市的で、より包括的、そしてより持続可能な大会。男女のジェンダー平等が完全に実現した初めてのオリンピックでもありました」と語った。

ロサンゼルス2028への引継式

フランス陸軍の複数の部隊のメンバーによってオリンピック・フラッグが降ろされた後、アンヌ・イダルゴ・パリ市長からトーマス・バッハIOC会長へ、そしてカレン・バス・ロサンゼルス市長へと引き継がれると、共にステージに上がった今大会の体操競技で3冠を達成した米国代表のシモーネ・バイルズにフラッグが渡された。

グラミー賞、アカデミー賞、エミー賞受賞アーティスト、H.E.R.による米国国歌が歌われると、ロサンゼルス2028のショーがスタートした。

ミッションインポッシブルの音楽に合わせてスタッド・ド・フランスの上から俳優のトム・クルーズが飛び降りて登場。オリンピックフラッグを受け取り、モーターバイクでスタジアムの外に持ち出すと、そのまま飛行機に乗り込みロサンゼルスへと向かった。

その後、パラシュートで着地するロサンゼルス2028のビデオプレゼンテーションへと切り替わると、マウンテンバイク競技オリンピアンのケイト・コートニーとジャガー・イートンがオリンピック・フラッグを運び、陸上競技レジェンドのマイケル・ジョンソンも登場した。

ロサンゼルス2028組織委員会は、セレブスターを起用したハリウッドらしい演出で、4年後の成功を予感させる盛り上がりを観客に見せた。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ビリー・アイリッシュによる音楽パフォーマンスに加え、チームUSAのファンであるスヌープ・ドッグも登場。

パリ2024オリンピック閉会式はフィナーレへ

冒頭で登場したフランス代表のレオン・マルシャンが聖火を入れたランタンを手にスタッド・ド・フランスのステージへ再び登場すると、バッハ会長が大会の閉幕を宣言し、マルシャンが6大陸のアスリート代表選手と共にランタンの炎を吹き消した。

「伝統に則り、4年後にアメリカ・ロサンゼルスで開催される第34回オリンピックを世界中の青少年とともに祝うことを呼びかけます」とバッハ会長は付け加えた。

最後に、フランスと米国を強く結びつける象徴的なヒット曲「マイ・ウェイ」をフランスのアーティスト、イゾルトが情感こめて歌い上げ、花火がスタジアムの空を彩り、その光が消えると同時にパリ2024が閉幕した。