史上最強のスポーツクライマー、ヤンヤ・ガンブレットのトレーニングにフィットネス・インフルエンサー、ナターシャ・オセアンが挑戦/パリ2024オリンピック
「これはすごい!」
東京2020オリンピックのスポーツクライミングで金メダルを獲得したヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)は、彼女のトレーニングを初めて試みたフィットネス・インフルエンサーのナターシャ・オセアン(英国)に感激した。
スロベニアのスポーツクライミングの天才は、オセアンに対して単なるお世辞を言っているわけではない。これまでに64万回視聴されているオセアンのYouTubeビデオ「I Trained with the Greatest Competition Climber Ever(史上最強のスポーツクライマーとのトレーニング)」を見ればわかるだろう。
オセアンは今年1月、ガンブレットの本拠地であるスロベニア・スロヴェニ・グラデツを訪れた。その時、8つの世界タイトルと記録的な45回のワールドカップ優勝を誇り、史上最も成功した女性スポーツクライマーとされるガンブレットのトレーニングメニューを試したのだった。
16歳で初めてワールドカップに出場してから9年後、ガンブレットはパリ2024オリンピックで2回目のオリンピックに出場し連覇を狙う。ボルダー&リード種目のスペシャリストであるガンブレット以上の勝利を収めた選手はこれまでにいない。
一方、生物物理学の学生であるオセアンは、Instagramの100万人のフォロワーと、YouTubeの168万人の登録者向けにフィットネスのノウハウを解説する「Science Explained」シリーズで知られている。
彼女のフィットネスプランと栄養・食事の考え方は、ロンドン2012とリオ2016パラリンピックで英国代表チームをサポートしたパフォーマンススペシャリスト、レニー・マクレガーも認める。
オセアンはよくトレーニングをして非常にフィットしており、昨年11月には100マイルウルトラマラソンを完走したほどだが、スポーツクライミングに必要なトレーニングはこれまで彼女が経験してきたどのトレーニングとも異なることを知った。ただ、ガンブレット自身、彼女の専門種目の中であっても特別な存在であり、トレーニングもユニークだ。
さて、いったいガンブレットはオセアンの何に感激したのだろうか?
オセアンがガンブレットのトレーニングに挑戦!
オリンピックチャンピオンのガンブレットが称賛したのは、横移動しながら体幹を中心とした全身をトレーニングするためのドリルだった。オセアンは、ガンブレットがトレーニングする市内のトレーニング施設「リハボセンター」を訪れ、彼女の基礎トレーニングにチャレンジした。
最初に行ったドリルは、両膝にラバーのエクササイズバンドを巻き、壁に対して垂直に立つところから始まった。そして、両腕を挙げてケーブルに取り付けられたバーを握り、変化する重さで横に引っ張られるのに耐えながら、左右に体を側屈させたり移動したりする風変わりなドリルで、次にどうなるのかぜんぜん予想ができない。これはオセアンにとって全く新しいものだった。
ガンブレットが行った時の重さの70%でこのドリルを試みたオセアンは、なんと最初からうまくこなせたのだった。
「次に何が起こるか想像できないので、何にでも対応できるように心の準備をしないと!」とオセアンはコメントした。
次に、ガンブレットが使用した同じ抵抗で試み、これもうまくこなしたのだった。これを見たガンブレットは「これはすごい!」と感嘆の声を上げた。
ラテラルエクササイズは、オセアンのお気に入りのひとつだ。
「もし100マイルを横方向に走れるならそうするでしょうね。それくらい好きなんです」と、前世ではカニだったのではないかと思われる彼女は笑った。
しかし、続くバランステストはオセアンにとってタフなものだった。
ぐらぐらするボード(BOSU)の上でバランスを取りながら、足を少しずつ動かし、それによって画面上のアイコンをターゲットに当てるという、コンピュータゲームと組み合わせたドリルで、 オセアンのスコアはゼロだった。
「私はBOSUを使ったトレーニングはしていますが、これは全く違いますね」とオセアンは驚いた。
「私も最初にここに来た時は、スコアがゼロだったので心配しないで」とガンブレットは笑顔で話した。クライミングのパフォーマンスを高めるためには、いろいろな要素を組み合わせて、遊び感覚を取り入れることも重要だと明かした。
「このエクササイズは楽しいですよ。ゲーム感覚で弱点を克服することができるし、トレーニングだと思わないほど集中できます」と彼女は話した。
「私は楽しんでいないと、絶対によい結果を出せないタイプの人間です。楽しんでいれば、すべてがうまくいくと思います」と、ガンブレットは2021年にTIME誌の記事の中で語っている。
パリ2024のためのガンブレット独自の工夫とは
ガンブレットは、デッドリフト、ランジ、スクワットなどの通常の筋力トレーニングは行わないとオセアンに話した。語りました。
「驚くかもしれませんが、私は一般的な筋力トレーニングはほとんどやりません。なぜなら、重たい筋肉は必要ないからです」とガンブレットは説明した。言いました。
「私たちには強くて、無駄がなく引き締まった筋肉が必要なのでデッドリフトは行いません」
「東京オリンピックの前には、スピード種目があったのでスピードをつけるために行っていましたが、それはそのオリンピックのためだけです」とガンブレットは言った。スポーツクライミングが初めて実施された東京2020では、ボルダーとリード、そしてスピードの3つの種目が組み合わされており、パリ2024のようにボルダー&リード種目とスピード種目の2種目に分かれていなかった。
「東京では、3つの種目が組み合わされていたので勝つために必要でした」 そしてガンブレットは金メダルを勝ち取った。
しかし今は、より持久力が求められるボルダーとリードに焦点を当てているため、主に、体幹トレーニングとモビリティトレーニング、そして全身のファンクショナルトレーニングに取り組んでいる。
これは、マラソンやトライアスロンに挑戦するオセアンにとって身近な考えかもしれない。
「スポーツにおける私の最大のインスピレーションは、人間のもつ可能性が実は自分が思っている以上に大きいことを教えてくれるアスリートたちとの出会いです」とオセアンは話した。
オセアンを含め多くの人にとって、史上最強クライマー、ガンブレットの存在は、人間の可能性を押し広げる大きなインスピレーションのひとつであることは間違いない。
パリ2024スポーツクライミング女子ボルダー&リード決勝の日程
以下、現地時間と括弧内は日本時間。日本はパリより7時間進んでいる。
8月10日(土)
- 10時15分(17時15分)~ 女子ボルダー&リード複合・ボルダー決勝
- 12時35分(19時35分)~ 女子ボルダー&リード複合・リード決勝