世界で活躍したジョーダン・ラーソンが険しい道を歩んだ15年間で学んだこと「困難な時にこそ、恐れず全力で挑戦してほしい」/独占インタビュー

執筆者 Nick McCarvel
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Jordan Larson is a three-time Olympic medallist in volleyball
写真: Dustin Satloff/Getty Images for the USOPC

インタビューの途中で、ジョーダン・ラーソン(アメリカ合衆国)はいったん大きく息を吸って、「感情的になってしまいます」と涙をこらえた。

ラーソンは5月、Olympics.comの独占インタビューで、3度のオリンピックメダリストであり、女子バレーボール界のレジェンドである現在に至る前の、若き日の自分自身に向けたメッセージを依頼された。

「初めてのオリンピックの経験を振り返ると、会場に初めて入った時のことや、感じた重圧を今でも覚えています」と、先月の対談でラーソンは話していた。

「『信じられない』と最初、私は思いました。でも、『いつものように振る舞えばいい。実際、毎日、同じことをやっているのだから。ただここがオリンピックと呼ばれているだけ』と自分に言い聞かせました」

「そう思うことで、その時はプレッシャーを受け入れることができますが、これから起こることを普段通りにこなせるかどうか、やはり不安であることを次の瞬間に気づきます」

数々の経験に散りばめられた競技人生を過ごしてきたラーソンは、東京2020での金メダル獲得後、いったんは引退を考えた。しかし、彼女はその競技人生をさらに歩む決断を下し、現在、パリ2024オリンピックで4個目のメダル獲得を目指している。

ラーソンは、ティッシュを1枚取り、かつてのネブラスカの少女だった自分へ「事はうまく進んでいて、全ては予定通りです」と語りかけた。「でも困難な時にこそ、恐れず全力で挑戦してほしい。そして、それを乗り越えることを願っています。粘り強く続けてください。きっとやり遂げることができるはずです」と言葉を贈った。

ジョーダン・ラーソン:オリンピック金メダルは「長年の努力の結晶」

長いキャリアを過ごした37歳のラーソンは、当時を振り返り感情にあふれた。彼女はネブラスカ大学で優秀な成績を収めた後、2009年にアメリカ合衆国の女子代表チームのメンバーに選ばれたのだった。

米女子代表チームは、ロンドン2012で銀、リオ2016で銅、東京2020で金メダルを獲得し、ラーソンは10年以上にわたり世界トップレベルのチームメンバーとして活躍した。2014年にFIVBバレーボール女子世界選手権を制覇し、2018年、2019年、2021年にはネーションズリーグで金メダルを獲得した。

「東京での金メダル獲得は、私たちの長年の努力の結晶です」とラーソンは説明し、これが米女子代表チームにとって初めての金だったことを付け加えた。

「金メダルはこれまでの時間の一瞬を切り取ったスナップショットに過ぎません。いつまでも覚えていることは、そこに到達するまでの長い道のりです。結果にばかり重きを置かず、毎日の努力の繰り返しとそれまでの道のりを大事にし、日々少しでもよくなる努力をすること。望むものを手に入れるために、必要な努力をしていることはわかっているはずです」

これは、ラーソンが世界のトップレベルで競技をする中、チームメイトと共有して実際に試みた考え方だ。

「時間と共に、私たちは失敗や欠点から学び、どうすればよくなることができるか学びました」とラーソンは続けた。「私たちは、よいチームであろうとするチーム文化の基盤を築きました。チーム文化はとても大切です。もしチームメイトとどのように取り組んだらよいかわからなければ、よい感じはしないものです。しかし、チームはそれを改善し育んでくれるのです」

「私は常に進化しています」とラーソンは付け加えた。「新しい世代がチームに来て、これまでとは違う環境になっていくでしょう。このまま続けるなら、その新たな環境の中でどのように取り組むかを考えなければなりませんでした。私は、代表チームに入った最初の年の自分とは全く異なるほど成長できたことに今とても感謝しています」

「私は、これまでに得た機会が当然のことだったとは思っていませんが、次に何を選んだとしても、それがうまくいくことを願っています」

なぜネブラスカ州で女子バレーボールが人気なのか?

ラーソンは人口1,000人未満の小さな町、ネブラスカ州フーパーで育った。多くの米国のバレーボールファンなら知っているように、ネブラスカ州は他のどの州よりも女子バレーボールの人気が高い。

昨年、ネブラスカ大学は女子のスポーツ大会における観客動員数で世界記録を樹立し、92,003人のファンが、ハスカーズ(ネブラスカ大の愛称)と州内のライバル、オマハとの対戦に歓喜した。女子スポーツにとっては記念すべき瞬間となった。

ラーソンはアシスタントコーチとして、コートサイドに立った。

「そこには純粋に唯一無二の環境があり特別な場所です」と、ラーソンは自らの出身州について表現した。「ネブラスカの人々は本当にバレーボールが大好きです」

ラーソンは、チームがホームゲームのたびに平均9,000人のファンを集め、チケットはいつも売り切れになると話した。「本当に大きな話題になりました」と、昨年のオマハ戦がいまだに話題になっているという。「私たちの学校は、いつも『サッカーで有名な大学』でしたが、今では『バレーボールで有名な大学』でもあります。女子スポーツの認知がまた向上した証です」

ラーソンは世界中でバレーボールの人気向上に貢献してきた。米代表チームと共に世界中を巡り、ロシア、トルコ、中華人民共和国、最近ではイタリアのクラブチームでもプレーした。

「イタリアではコーヒーを一杯、ぜひ試してみて。ディナーの前には食前酒を楽しんで」と、ラーソンは若き日の自分にアドバイスした。「日本では、おいしいラーメンと焼肉を食べてみて。それは驚くから」

さて次はどこからのアドバイスになるだろうか?パリのバゲットを勧めるのだろうか。ラーソンと彼女のチームは、もうひとつのメダル獲得を目指しパリの舞台へと向かう。

東京2020オリンピック16日目の2021年8月8日、有明アリーナで行われたブラジルとの決勝で勝利し金メダルを獲得したチームUSA (Photo by Toru Hanai/Getty Images)

写真: 2021 Getty Images