ハーバー卒の200m金メダリスト、ガブリエル・トーマスの夢/パリ2024陸上競技
8月6日の陸上競技を締めくくるガブリエル・トーマス(アメリカ合衆国)の表情は、この日の驚きと感動を象徴するものだった。スタッド・ド・フランスの8万人の観客が歓声を上げる中、27歳のトーマスはパリ2024オリンピック女子200m決勝のフィニッシュラインを誰よりも速く走り抜け、新たなオリンピックチャンピオンとなった。
「オリンピックで金メダルを獲得することは私の最も大きな夢だったので、本当に信じられません」とトーマスは話した。
「それを手に入れるためにどれだけの努力をしてきたことか。これは6年間の努力の成果です。前だけを見て進み、一生懸命に取り組み、厳しい試合にも出場し、自分を追い込んできました。そして今、私はこれを成し遂げ、夢がついに現実となりました。私の人生の中で最も幸せな瞬間です」
トーマスは、8月6日の女子200m決勝に優勝候補のひとりとして出場したが、スタートラインには女子100mで金メダルを獲得しているジュリアン・アルフレッド(セントルシア)や同郷のブリタニー・ブラウンの間に挟まれるように並んだ。その2人を抑えてフィニッシュラインを越えたとき、あふれ出る喜びの感情を抑えることができなかった。
東京2020では、トーマスは女子200mに出場し銅メダル、4×100mリレーで銀メダルを獲得していたが、今大会では悲願の金メダル獲得となった。
7レーンのトーマスは、スタートでやや出遅れたものの、最初の100mでスタートが最も速かった8レーンのアルフレッドを抜き去ると、さらに加速して差を広げ、そのままトップでフィニッシュした。
トーマスは、レースの前評判で自分が優勝候補に挙げられていることを知っていた。しかし、自分以外の7人の世界トップのスプリンターたちも全力で金メダルを目指している中では、そんな評判は意味をなさなかった。スタート前の緊張感はピークに達した。
しかし、観客の中にたくさんの見慣れた顔を見つけたことで、トーマスは表彰台の頂点に立つ決意をした。
「このスタジアムに入ったとき、友人や家族がみんなここにいると知って、私は自信をもつことができました」とトーマスは話した。
「それは本当に言葉では表現できない自信でした。もちろんプレッシャーもありましたが、それ以上に大きな自信がありました」それでも、フィニッシュラインでは「信じられない!」という表情が彼女の顔には浮かんでいたようだ。
スプリント競技の頂点に立つハーバード大卒業生
トーマスを語るにはスプリントの話だけでは足りない。悲願のオリンピック金メダルが、新たな一章として彼女の物語に加わったとしても、彼女にはさまざまな一面がある。
ハーバード大学を卒業したトーマスは、テキサス大学大学院で公衆衛生学の修士号を取得し、大学院修了後では少数民族の睡眠パターンについて研究した。
もっとも、金メダルを獲得した夜は、喜びに興奮し過ぎて、彼女が研究する質の高い睡眠を確保することは難しいかもしれないが、金メダルは間違いなくトーマスにとって今後の人生を変えるような経験となるはずだ。
彼女は、自分自身が描いたパリ2024での夢と同じくらい大きな夢を持つ、若い世代の少女たちを支援する活動に取り組みたいと考えている。
「私たちを強い女性アスリートの代表として見てもらい、彼女たちにも同じようになれると自信をもってもらいたいと思います」と、トーマスはレース後の記者会見で語った。
「私は、プロスポーツを目指す彼女たちを応援したいと思いますし、どんなに大きくても小さくても夢を追い求めることが大切なことを彼女たちに感じてほしいと思っています」
今後、オリンピック金メダリストのトーマスには、このような取り組みにも期待が寄せられている。
パリ2024陸上競技女子200mのメダリスト
- 🥇 ガブリエル・トーマス(アメリカ合衆国) 21秒83
- 🥈 ジュリアン・アルフレッド(セントルシア) 22秒08
- 🥉 ブリタニー・ブラウン(アメリカ合衆国) 22秒20