中華人民共和国のレジェンド、マ・ロンが卓球界へ残したもの
8月9日、パリ2024オリンピックの卓球男子団体で中華人民共和国が勝利したことをもって、同国のレジェンド、マ・ロンの競技人生に幕が下ろされたと言えるかもしれない。
中国代表チームのキャプテンであるマ・ロンは、彼の競技人生にとって最後となるかもしれないオリンピックで6個目の金メダルを獲得した。これは世界中の卓球選手の誰もが到達したことのない偉業だ。
35歳の彼は今年初め、今後、世界選手権にはもう出場しないと発表した。したがって、彼が次のオリンピック、ロサンゼルス2028でプレーする可能性は低いと言える。決勝後の記者会見で、これが旅の終わりであることを示唆している。
もしこれが本当にマ・ロンの最後のオリンピック舞台であるとしても、彼はオリンピックの卓球の歴史に偉大なレガシーを残したことになる。
4回のオリンピックと無数の世界選手権に出場し、史上最高の選手と言えるマ・ロンが与えた卓球界への影響の大きさは計り知れない。
Olympics.comは、中国および世界中のマ・ロンと同時代を過ごした選手たちに、彼が卓球界に与えた影響について尋ねた。
さまざまな障壁を乗り越えたマ・ロンの貢献とロールモデルとしての姿
中国チーム内で、キャプテンとしてのマ・ロンの存在は、ジュニアからナショナルチームまで男女両選手の間で浸透している。彼の貢献度と尊敬のレベルは非常に高く、パリ2024開会式で同国の旗手に選ばれたほどだ。
女子シングルスのオリンピック金メダリストであるチェン・ムンは昨年、Olympics.comとワールドテーブルテニスに次のように語った。
「私は常にマ・ロンから多くのことを学んでいます。彼の競技への集中力と献身、コートに立ったときの決して諦めない態度など、彼から多くのことを学びました。チームでの責任を引き受ける姿勢も含め、彼は素晴らしいロールモデルです」
男子世界ランキング1位、マ・ロンより12歳若いワン・チューチンも同意する。
「彼がする多くのことは私にはできませんが、彼から学ぶべきことはたくさんあります」
「2015年世界卓球選手権での悲願の初勝利、膝の手術からわずか3か月後の2019年に3連覇を成し遂げたロン兄は、私が疲れたり自信を失ったりした時の精神的な支えとなってくれます」とワンは話した。
「彼は、最初は華やかな選手ではありませんでした。主力選手で才能はありましたが、それほど成果は挙げることができなかったのです」
「しかし、忍耐力と精神力で彼は成功を遂げました。ただあきらめたり屈したりしなかっただけでなく、プレーする全ての試合、全てのゲーム、全てのポイントに対して強い執着と姿勢で臨んだのです」
史上最高の選手、マ・ロン
マ・ロンはすぐに競技から引退するとはまだ明言しておらず、ツアー大会や国内大会でプレーを続ける予定とのことだが、オリンピックや世界選手権では栄光とともに終わりを迎えていると言えるだろう。
「パリオリンピックを私のキャリアの最終地点と考えているので、このような完璧な形で終えることができて非常に嬉しいです」と彼は話した。「しかし、パリで全てが終わりではなく、人生はまだまだ長い道のりがあります」
次のステージはコーチになることだろうか?
「まだ考えていません。中国代表チームにはすでに多くの優れたコーチがいますから。しかし、将来的にはその可能性もあります。ただ、今はまだ何とも言えません」
「これまではただ競技に集中していました。もし落ち着いて考える日が来たら、将来の道についてじっくり考える時間を取りたいと思います」
マ・ロンは史上最高の選手のまま国際大会から引退する。6つのオリンピック金メダル、14の世界選手権タイトル、そして11のワールドカップ金メダルとともに。男女を通じて、誰もそのレベルに近づく選手はいない。
トップレベルの選手に聞いてみても、彼は史上最高の選手と口をそろえて言う。
「マ・ロンは卓球選手として最高のキャリアを持っています」と、フランスのシモン・ゴージーは、同国が中国に敗れた準決勝後にOlympics.comに話した。
「私は、彼こそが史上最高の選手と思います。彼が引退するのを見るのはさびしいです」とゴージーは続けた。
「彼は非常にカリスマ的で、とても謙虚な人です。だから彼が大好きです」
フランス代表チームのコーチであり、アレクシスとフェリックスのレブラン兄弟を指導してきたナタナエル・モリン氏もマ・ロンを称賛した。
「私にとって、マ・ロンはレジェンドです。世界で最高の結果を出した最高の選手です」
「彼がオリンピックや世界選手権で何枚のメダルを持っているのかわかりませんが、私にとって彼は紛れもなく史上最高の選手です」
マ・ロンが引退した後の大きな影響とは
しかし、ある意味では、もしマ・ロンが本当にパリ2024を最後のオリンピックと決心した場合、大きな影響が現れるかもしれない。
彼の経験とチームへの貢献を考えると、彼がいなくなることで中国男子代表チームは力を落とすことになるかもしれない。
一方で、「それはよいことです!」とゴージーは素直に認めた。「彼と対戦するのは非常に厳しいですから!彼がいないとなると、我々にもチャンスがあるかもしれません」
「私たちは、彼と何度も対戦できたことを光栄に思います。あと少しで彼を破るところまで行ったこともありましたが、結局はできませんでした」