「エッフェル塔」と「パリ2024のメダル」
1位から3位になった選手だけが手にできるオリンピックのメダルは、公開されるたびに大きな好奇心の対象となる。夏に行われるパリ2024のメダルは、エッフェル塔の鉄が組み込まれた、希少で貴重な、そして何よりもユニークなものとなった。
世界中の何千人ものアスリートにとって、オリンピックメダルは長年追い求めてきた夢のようなものである。メダルは歴史の一部であり、スポーツ界におけるその重要性は、さまざまな世代や競技で共有されているものだ。
パリ2024では、オリンピックの最大のシンボルのひとつであるメダルと、フランスのシンボルであるエッフェル塔を組み合わせるというアイディアで製作が進められた。これを実現するために、フランスの宝飾工芸における重要性とエレガントさで世界的に知られるジュエリー専門のChaumet(ショーメ)がメダル製作に選ばれた。
オリンピックとパラリンピックのすべてのメダルに、史上初めて非常に象徴的で貴重な金属片があしらわれる。それは、かつてエッフェル塔の一部としてフランスの文化・歴史を見守っていた鉄である。
エッフェル塔とパリ2024、複雑なプロセス
1889年に完成したエッフェル塔は、誕生まもない頃からエレベーターが設けられ、訪問者を運んできた。その歴史の中で何度か工事が行われ、20世紀に行われたエレベーター工事の際には、「鉄の貴婦人」の愛称を持つこの塔の一部が取り外され、その一部は慎重に保存されることになった。
エッフェル塔運営会社である「Société d’Exploitation de la Tour Eiffel」は、2024年夏に開催される大会のため、パリとフランスの歴史の一部と言えるその保存物を新たに活用すること許可し、そのプロジェクトが本格化した。
フランス東部ロレーヌのポンペにある鍛冶場で製造された鋳鉄は、鉄鉱石を還元し、パドル法と呼ばれる工程を経て精錬された。鋳鉄から余分な炭素を取り除くと、残る鉄はほぼ純粋で非常に頑丈になる。
フランスで最も希少な金属のひとつを、スポーツ界で最も希少なメダルの中心に組み込むーー。それにより、パリ2024は、天才建築家ギュスターヴ・エッフェルによって始まった伝統を受け継いでいる。エッフェルは当時、技術革命を起こし、史上初となる高さ300mのタワーを建設した。エッフェル塔の鉄をメダルに組み込むことで、選手たちがこの大会、パリ、そしてフランスの思い出を永遠に記憶してくれることをパリ2024は願う。
Chaumetのクリエイティブ・アクティビティを担当するクレモンティーヌ・マソナさんは、「(フランスの国土を表す)この六角形を、宝石のようにメダルの中央に、最も貴重な要素として配置することにしました」と語る。
メダルのデザインは、19世紀末に娘の結婚を祝うためにChaumetに真珠のネックレスを注文した建築家、エッフェルにちなんだものでもある。