長年の夢がかなう東京、開催国の選手の活躍が空手の未来を拓く 村田利衛スポーツマネージャーに聞く

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東京2020大会の新競技の一つ、空手は日本の沖縄が発祥の武道だ。仮想の敵に対する攻撃と防御の技を一連の流れとして見せる「形」と、2人の選手が1対1で戦う「組手」があり、東京2020大会では、男女の「形」、男女各3階級の「組手」が行われる。空手競技の大会運営などを担当する公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)スポーツ局の村田利衛スポーツマネージャーが語る空手の楽しさ、東京2020大会への期待とは。

一瞬の攻防、その緊張感が見どころの「組手」
一瞬の攻防、その緊張感が見どころの「組手」

3度落選を越え、東京2020大会で正式競技に

2016年8月4日、空手が東京2020オリンピックの新競技として採用されることが決まった。オリンピック競技になるという空手界の長年の夢がかなったのだ。

「過去3度ダメでしたから、うれしかったですよ」と、村田さんは当時を思い出し、そう語る。

10歳のときに父の影響で空手を始めた村田さんは、中学、高校、大学と競技を続けた。味の素株式会社に入社してからは、週末に小学校のコーチや、高校の監督、大学の監督などを務め、学生連盟の役員として大会の手伝いや、全日本空手道連盟からの応援要請に応え、学生を派遣するなど、大会運営にも携わってきた。そんな村田さんだけに、空手のオリンピック競技への採用はひとしおだった。

「全日本空手道連盟のお手伝いをしている一環で、日本が(東京2020大会に)推薦する競技に空手を入れてもらうよう政府に対して働きかける署名集めの手伝いをしていました。署名をしてくださった方の中には、空手を見たことのない方もいましたが、自分が署名したから採用されたと感じてくださった方もいらっしゃり、本当にうれしかったです」

空手の会場は武道の聖地、日本武道館
空手の会場は武道の聖地、日本武道館

歴史ある日本武道館でやれる喜び

当時は、自分が東京2020大会の仕事に就くなどとは思わず、漠然と「ボランティアで関わりたいな」と思っていたが、あるとき、母校の先輩、奈藏稔久氏がWKF(世界空手連盟)の事務総長をしていた関係で、声を掛けられ、2017年にスポーツマネージャーの職に就いた。

英語はほとんどできない、WKFとのつながりもない。そんな状況で、一人でパリのプレミアリーグの会場に行き、見たあとに会議。スポーツマネージャーの仕事はそんな感じで始まった。空手競技にとって東京は初めてのオリンピック。スポーツマネージャーは自分でいいのかと戸惑い、プレッシャーも多かったというが、一方で「まっさらの場所に飛び込んで、新たなことにトライしているのは面白い」と楽しさも感じている。

「空手は日本発祥なので、WKFも日本に対してリスペクトがある。ずっとオリンピックを目指してきたから、日本で開催される大会に参加できるのは喜びだし、世界中の選手にとっても喜び。(新しい競技なので)オリンピック競技としては一から作っていくので、やりやすさもあります」

空手と会場の日本武道館には深いつながりがある。東京1964大会後の1970年に「第1回世界空手道選手権大会」が開催されたのが日本武道館だった。武道の聖地でもあり、世界空手連盟も大変喜んでいるという。大会を目前に控えた今、村田さんはその日本武道館での競技大会を成功させるべく、実際の動きをシミュレーションしながらトレーニングし、ボランティアへの説明会やリーダーたちを集めた実践練習を進めている。

仮想の敵に対する攻撃と防御の伝統的な技をストーリーで見せる「形」
仮想の敵に対する攻撃と防御の伝統的な技をストーリーで見せる「形」
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開催国の選手が活躍し大会が盛り上がれば、再採用の道も

東京2020大会の空手競技には、男女の「形」と男女3階級ずつの「組手」があり、80人しか出場できない。全員が優勝する力のある選手たちだ。

「『形』は動きの切れや力強さだけでなく姿勢の美しさ、視線の鋭さなど美しさの要素もある。当初は『組手』だけ採用という話もあったが、武道としての伝統的な多彩な技が組み込まれた『形』は絶対に採用すべきという空手界の思いがありました。一方の『組手』は、スピードやパワー、集中力、一瞬の攻防、その緊張感が最高に面白い」と村田さんは言う。「技のスピード、迫力というフィジカル面だけじゃなく、気持ちの集中度合いも魅力。精神的な部分も感じるものがあります」。

東京2020大会では、開催国の選手の活躍に期待を寄せながら、「世界の国の選手も応援してほしい。どの国の選手でも、激しい攻防やいい技術には称賛を送ってほしい」と願う。

「2019年のラグビーワールドカップのように各国チームとの交流が街中でも広がるというわけには今回はいきませんが、日本選手が活躍すれば、開催国が盛り上がり、選手の立ち居振る舞いなども含めて、いろんな空手の魅力が画面から世界に広がって、『空手、よかったね』と言ってもらえる。ホスト国の力の見せどころ、それがオリンピックをやる意味ですよね。東京2020大会を成功させて、次のパリ2024大会では空手は競技から外れていますが、『オリンピックに空手っていいんじゃないか。次のロサンゼルス2028大会ではもう一度やろう』となったら最高ですね。日本選手には優勝候補が多いので、活躍してくれると思っています」

日本選手が活躍すれば、空手を知ってもらえるきっかけに
日本選手が活躍すれば、空手を知ってもらえるきっかけに

空手には人それぞれの楽しみ方がある

世界の198カ国・地域で数百万人が競技し、日本でも50万人ほどが競技者登録し、200万人ほどの愛好者がいると言われる空手だが、村田さんは、「空手の道着を着て走っている子どもたちをあちこちで見掛けますが、一般的にはまだ知られていない」と感じている。

「いまだに、『空手って瓦を割るの?』、『押忍(おす)と言うの?』って聞かれます。サッカーみたいに自分がやらなくても見に行くようなファンも増えてほしいですね。子どもたちがやってくれるのもうれしい。空手は、性別年齢、ライフスタイルなどに合わせてそれぞれで楽しめるもので、例えば、親にとっては、子どもの教育、礼儀作法、運動能力の開発という価値があり、アスリートには競技の魅力があります。社会に出てからは、健康維持だったり、働きながらときに競技の緊張感を味わったり。精神集中やリフレッシュの意味もある。人それぞれに空手の魅力や楽しみ方があります。だからずっと続けることができるんです」

村田さんは60歳を過ぎた今も、大好きな空手を続けている。

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One Minute, One Sport 空手
01:23

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