山本幸平 「遊び」が原点の競技人生、今なお「誰よりも速く」

23歳での北京2008大会から連続出場

急斜面を上り、悪路を駆け下り、岩場などをクリアしてゴールを目指す自転車競技(マウンテンバイク)。小学校4年生のときに初めて大会に出場してから25年、オリンピックは東京2020大会が4度目の大舞台となる山本幸平は、「誰よりも速く走りたい、自分自身が満足する走りをしたいという思いが強く、だからここまで燃え尽きないで続けているのではないでしょうか」と力を込める。

23歳で迎えた北京2008大会から連続でオリンピックに挑んだ。結果は北京2008大会が46位、ロンドン2012大会が27位、リオ2016大会は21位。それぞれの大会に思い入れはあるものの、特に印象に残っているのは初出場の北京という。

「すべてが刺激的でした。日本選手団として出発前からセレモニーがあり、選手村で世界中のトップアスリートと過ごすのは、普段にはない出来事でした。自分の競技以外のアスリートとの交流が一番印象に残っています。オリンピックは『アスリートの祭典』とよく言われますが、世界的なイベントなんだと感じました」

選手村の一室では、日本選手団主将の鈴木桂治さんと語り合った。柔道の重量級で戦うその大柄な風貌からは、近づきがたいイメージがあった。「主将として様々なプレッシャーがあったと思うんです。でも実際に話してみると優しい方でした。競技中の姿は迫力がありますが、一人の人間なんだなと、感じました」。他競技のアスリートの素顔に接することができたのは、結果以上に一番の収穫だった。

初のオリンピックとなった北京2008大会では、他競技のアスリートから刺激を受けた
初のオリンピックとなった北京2008大会では、他競技のアスリートから刺激を受けた

大舞台通じて自身を高める

オリンピックの舞台を通じ、自分自身を高めていった。ロンドン2012大会は当時所属していたチームの同僚、チェコのヤロスラフ・クルハヴィーが金メダルを獲得。持ち帰ってきたメダルを見て、山本も興奮を抑えきれなかったという。また金メダルをとることができるアスリートとともに過ごした時間は、とても濃厚なものだった。

「クルハビーは、自分に厳しいですよね。勝負どころで耐えうるメンタルを身に付けようと練習から追い込んでいました。一方でオフのときはしっかりと休んでいる。オンオフの切り替えのうまさも彼から学んだ点です」

リオ2016大会は直前に会場で山火事が発生し、「コースが変わるかも」という緊張感の中で最終調整をし、オリンピックで過去最高の成績を手にした。3大会を経験したからこそ言えることは、メンタル面がカギを握るということだ。「スタート前はみんな、いい意味で舞い上がっているのを感じます。そういう中でいかに自分をコントロールできるかが大切です」。

リオ2016大会のレース後、取材を受ける山本
リオ2016大会のレース後、取材を受ける山本

幼い頃から「楽しむ」を大切に

ライバルたちが舞い上がるほどの舞台を知る山本の競技における原点は「遊び」である。北海道の十勝地方の出身。極寒の冬はスピードスケートやスキー、ときに雪山を上り続けたことで、自然とスタミナがつき、メンタルも鍛えられた。そして小学校のときに兄と一緒に乗り始めたマウンテンバイクも、もともとは遊びから始まった。

「近所には砂利道や土手があり、そこで様々なテクニックを磨きました。また大きくなると、『前に見える山まで行きたいね』と冒険を始めます。平坦な道を走り、山を登り下って家に帰ってくる。自転車競技(クロスカントリー)と同じことを遊びでやっていましたね。そして競技会に出ると、走れて優勝するという流れです」。だからこそ競技を続ける上で大切にしているのは「楽しむこと」。それが一番の強みだと山本は感じている。

東京2020大会のテストイベントで本番と同じ伊豆MTBコースを走った山本、2021年夏に4度目の大舞台を迎える
東京2020大会のテストイベントで本番と同じ伊豆MTBコースを走った山本、2021年夏に4度目の大舞台を迎える

集大成として挑む東京2020大会

迎える東京2020大会には2020年6月、UCI(国際自転車競技連合)ランキングの日本人最上位選手として出場内定。競技者としての集大成という位置づけで臨むつもりだ。目標とする8位入賞に向けて、上り区間でパワーを出せるようフィジカル面の強化に力点を置いて、トレーニングを続ける。

「暑いですし、湿気もあって、梅雨明けしておらず雨が降るかもしれない。そういうところもイメージして、対策していかなくてはいけません。目指すところに向けて、重要なフィジカル部分を鍛えて本番では、出遅れずにしっかりと前々で展開していきたいです」

東京2020大会が開催されることにより、伊豆MTBコースが整備された。山本は次を担う世代の育成の点でも期待を寄せる。「今までの日本には、世界レベルのコースがありませんでした。今後はそれを存分に利用して、海外でしかできなかった練習をしたり、ワールドカップなどを実施し、世界の走りを生で見る。それらが強い日本づくりのきっかけのひとつになるのではと思います」。

2021年夏、そこで山本自身が満足いく走りをすることも欠かせない。

  • 観客の声援を受けてゴールする山本幸平選手
    自転車競技(マウンテンバイク)

    日本のマウンテンバイクは今日から始まる」 山本幸平選手がテストイベントで見いだした光明