都筑有夢路 「夢」に向かい、波の上で力強くかつ美しく

写真提供:日本サーフィン連盟/Photo:S.Yamamoto
写真提供:日本サーフィン連盟/Photo:S.Yamamoto
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悔しい思いが積み重なって

「全く満足いかないことが多く、悔しい思いをしてきました。それが積み重なって、自分を強くさせてくれたのかなと思います」

20歳のサーファー都筑有夢路(あむろ)は、近年の活躍の理由について、そう力強く答えた。東京2020オリンピックで新競技として採用されたサーフィン。自然を相手にダイナミックかつ、アクロバティックな演技が繰り広げられる。同じ波は一つとしてないという条件下で、選手たちはより高得点を求め、チューブ状の波の中に入って乗る「バレル」など、数々の技に挑戦する。

日本女子で近年、実力を伸ばしているのが都筑である。特に2019年は18歳以下の世界一を決めるWSLワールドジュニアチャンピオンシップで日本人として初優勝。また世界プロサーフィン連盟が主催する、チャンピオンシップツアー(CT)の予選リーグ、クオリファイィングシリーズ(QS)では最も獲得ポイントの高いQS10,000イベントを制した。その結果、ポイントレースで上位に躍り出て、CT出場選手の休場による繰り上げで、2015年にWSLに変更されて以降、日本人の女子選手初のCT参戦権を手にした。

15歳でプロ資格も、世界では苦戦

海に近い神奈川県藤沢市育ち。サーフィンは11歳で父・久美夫さんの手ほどきを受けて始めた。15歳でプロ公認資格を得ると、2017年から世界を転戦し、その年のジュニアツアーでは千葉県での「Ichinomiya Isumi Pro Junior Surfing Governor's Cup」で初優勝を飾った。一方でQSでの戦いでは苦戦が続いた。1年目はインドネシアでの大会で3位に入るが、翌年は11戦に参戦するも最高順位は9位だった。

「試合前はみんなで練習しているんですけど、そのときには私が一番うまいと思うのに、本番になると実力が発揮できませんでした。それが一番悔しかったです」と当時を振り返る。採点種目であるサーフィンにおいて、高評価を得られない。そして応援してくれる方々によい結果を見せられない。そんな悔しさを原動力に、いつかは報われるはずと、「継続」をキーワードに波へと挑み続けた。「それが2019年に爆発したという感じですかね」。

2019年はさらなる飛躍の一年となった都筑 写真提供:日本サーフィン連盟
2019年はさらなる飛躍の一年となった都筑 写真提供:日本サーフィン連盟

その際、大切にしていたのは「自分のサーフィン」を確立すること。競技において技の成功はもちろん、波しぶきの量も多いほど高評価となる。都筑はジュニア時代から波上での大きな動きを特徴にし、波しぶきをあげながら力強さを表現した。さらに近年はターンの回り方やスムーズに技を披露するといった「美しさ」も意識。力強くかつ美しいサーフィンで、結果を残している。

「自分の思ったような演技ができ、実力を発揮したら、結果もついてくることを知りました。自信もつき、より頑張ろうという気持ちになりました」

最も得意とする技は「ボトムターン」。波の下部で大きくターンし、波が崩れかかっている方向へと転換する技である。基礎的な技ではあるが、勢いをつけることができるため、様々な技につなげることができる。「より深い位置(波の下部)でボトムターンをした方が、得点も高くなるので、そこを注目してもらえるとおもしろいです」とポイントを話す。

家族の存在を力に、東京2020大会へ

都筑の競技人生を語る上で、家族の存在は欠かせない。サーフィンを始めた当初、一緒に海に入り、波に乗るため背中を押してくれていた久美夫さん。そして兄・百斗(ももと)は同じくプロ選手として競技に挑んでいる。「小さいころから父のことが大好きなので、今でもサーフィンのことで会話します。また兄には必死でついていくという感じでしたね。今もそうなんですけど」。

特に百斗とは、前述の「Ichinomiya Isumi Pro Junior Surfing Governor's Cup」できょうだい優勝。兄の演技を見て、「なんでそんな技ができるの」と幼い頃から目標にしてきた。そんな存在と歓喜の瞬間を共にしたが、当時を振り返り、特に声を掛け合うことはなかったという。「言葉はなくても心が通じ合っていたという感じです」。一緒に湘南の海でもまれた2人は固い絆で結ばれ、兄に競技のアドバイスを求めることもある。

新型コロナウイルス感染症の影響で2020年のCTは実施されず、繰り上げで参戦権を得た都筑は、当該選手の競技復帰により、2021年はスポット参戦となった。そして5月下旬には東京2020大会の最終選考となる世界選手権も控える。「練習してきたことを最大限発揮するには、リラックスして試合に出ることが大事だと思います。そのメンタルをどう保つかを強化していきます」。

「サーフィンで人を笑顔にしたり、感動させられたらいいなと思っています。(私の演技で)ちょっとでもハッピーになってもらえたらいいですね」と、競技への意気込みを語る都筑。自身の強みについて、「夢に対する思いが人より強いところ」という。名前にも含まれる「夢」の一字。ワールドタイトルを取るという夢に向かって、都筑は今日も波に挑み続ける。

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