3.11生まれの息子、父と同じサッカー選手を夢に 宮城県 瀬川誠さん・虎くん親子

瀬川誠さん(右)と虎くん(誠さん提供)
瀬川誠さん(右)と虎くん(誠さん提供)
[広告]

2011年3月11日に発生した東日本大震災から今年で10年。復興へと歩みを進める中、スポーツの力を感じ、それとともに日々を過ごしてきた人々がいます。宮城県仙台市在住で、元プロサッカー選手の瀬川誠さんは震災当日に長男・虎くんを授かりました。その虎くんは今、父と同じサッカー選手を夢見ながら、成長を続けています。

電気が止まり、懐中電灯に照らされる中での誕生

震災前日の23時ごろから妻・史圭さんの陣痛が始まり、誠さんは第一子誕生の瞬間を今か今かと病院で待っていました。そして地震発生の14時46分を分娩室の前で迎えました。

「揺れが来て機材が全部倒れ、照明は消える中、自分たちは分娩室では出産できないと感じていました。外の駐車場に避難したのですが、子宮口が全開となり、看護師さんが今生まなければ、『まずい』と話をしていて。結局、1階の少し陰になる受付の中でベッドを用意し産むことになりました。真っ暗な中、懐中電灯で照らして産むみたいな感じでしたね」

発生から37分後の15時23分に虎くんは生まれました。周囲の窓ガラスは割れ、暖房は止まった状態。虎くんのへその緒も、医師にお願いして切ってもらうなど、病院内は混乱していました。夜中になってようやく検査をするため、虎くんを看護師に預けると、前夜から一睡もしていなかった誠さんは一息つくことができました。

「それまで毎日楽しく過ごしていましたが、このあとどうなるのかと、不安や恐怖を感じた日でした。子どもが生まれた嬉しさは当然あるのですが、この家族で生きていくんだという覚悟が決まった日でもあります」

虎くんはこの日のことを学校の授業を通じて知りました。「地震で建物が崩れているところを教科書で見て、大変だったんだなと感じました。すごい揺れの中、僕が生きるためにいろいろやってくれたことに、感謝しています」。

2011年3月11日生まれの瀬川虎くん(写真は幼少期・誠さん提供)
2011年3月11日生まれの瀬川虎くん(写真は幼少期・誠さん提供)

サッカーで友達増え、達成感も学ぶ

震災から10年、誠さんは「1日1日がプレゼントされているようなもの」と捉えて過ごしてきました。日々を楽しむだけではなく、感謝や謙虚さを大切にします。虎くんにもそんな思いを胸に接しており、その2人をつないでいるのがサッカーです。虎くんは3歳のときにサッカーを始め、現在は週4回スクールに通って汗を流します。

「サッカーはやっていて楽しいです。特にドリブルでいっぱい人を抜いて、決めるシュートは嬉しいです。学校でもサッカーをして遊び、それで仲良くなった友達もいます」。そう話す虎くんの憧れる選手は瀬川誠選手、お父さんです。「プロになるのはすごく大変だったと思うので、それを乗り越えたお父さんは、すごいと感じました。僕もボールを積極的に取りに行き、シュートをいっぱい決められる強い選手になりたいです」。

「100点の回答ですね(笑)」と顔をほころばせた誠さん。同じスクールで指導者をしており、コーチとして虎くんに教えるなど、ボールを蹴る姿を間近で見てきました。「本当に笑顔でプレーしていますし、帰って何点入れたという話を聞くと、楽しい気持ちや達成感など、様々なものを学ばせてもらっていると感じます」。その上で「サッカーは人生と一緒でいいときも悪いときもあります。競技を通じ、辛いときでも自分をコントロールできる力を身につけてほしいです」と願います。

現役時代は地元クラブでもプレーし、現在はプロ選手を育てる役割を担います。「選手としてたくさんの観客の中で試合ができる幸せを感じ、今はジュニアユースの監督をやっていますが、彼らが素晴らしい選手になってほしいと日々、選手時代以上に熱い気持ちで取り組んでいますね」。

リフティングを披露する虎くん(誠さん提供)
リフティングを披露する虎くん(誠さん提供)

自然あふれる宮城で思い切ったプレーを

宮城県は東京2020オリンピックでサッカーが開催されます。2人が住む仙台市は「杜の都」と言われるだけあり緑が多い一方、太平洋も近く、海にも山にも1時間圏内で行けるエリアです。「環境がよく、自然あふれる場所です」(誠さん)。「食べ物がおいしいです。特に『もういっこ』という(県オリジナル品種の)イチゴが一番好きです」(虎くん)とそれぞれ街の魅力を話します。

そんな地元のピッチに立つ選手に対し、虎くんはエールを送ります。「キレキレのドリブルをしながらシュートを決めたり、相手選手が嫌がるくらい、ゴールキーパーがセーブしたりとか、すごいシーンが見てみたいです。けがなく本気でぶつかり合って、見ていて楽しいプレーをしてほしいです」。

一方の誠さんは、世界レベルのサッカー選手が集うことに期待を膨らませます。「一流の技が見られるのは楽しみですし、思い切ってやってほしいです。そしてこの街がいいところだったなと、再び来てもらいたいなと思います」。

[広告]
サッカーが誠さん・虎くん親子をつなぎます(誠さん提供)
サッカーが誠さん・虎くん親子をつなぎます(誠さん提供)

関連インタビュー

岩手県 川崎杏樹さん

津波被害を受けた母校跡地にスタジアム、楕円球が世界と3.11つなぐ

福島県 相馬東高校 鈴木海恵さん

「野球があったからこそ乗り越えられた」支援物資で届いたグローブとともに