飛び越えるバーの高さを競う走高跳は、古代オリンピックから行われてきた代表的なこの種目だ。他のフィールド種目に比べると、日本は苦しんでいる傾向にあるが、東京五輪に向けて日本勢の調子は上がってきている。
古代オリンピック時代から行われてきた代表的な陸上競技
走高跳は飛び越えるバーの高さを競うフィールド種目で、古代オリンピック時代から行われている代表的な陸上競技である。片足で踏み切りさえすれば、どんな跳び方をしてもかまわない。かつてはバーをまたぐように飛び越える「はさみ跳び」やバーに対して腹ばいになりながら回り込むように跳ぶ「ベリーロール」が主流であったが、1968年のメキシコシティ五輪でディック・フォスベリーが「背面跳び」で金メダルに輝いてからは、背中を下にして反るようにバーを越えるこの跳躍法が主流になっている。
ルール上、バーは上げることはできるが、下げることは認められていない。同じ高さのバーへは3回まで挑戦でき、連続して3回失敗すると終了となる。また、最後に跳び越えたバーの高さが、その試合での選手の記録となる。なお、同じ記録の選手が並んだときは、競技数(バーへのチャレンジ数)が少なさで勝敗が決することになる。
ジャンプをスキップすることも可能だが、もし次の高さで失敗したときには、スキップしなければ跳べた高さを下回る結果が自身の成績になってしまう。そのため、温存かプレッシャーかの選択を選手たちは強いられることになる。
日本勢は男子が2大会連続、女子は5大会ぶりの五輪出場を目指す
東京五輪への出場権は、2019年7月1日~2020年6月29日の間の国際陸連(IAAF)世界ランキングおよび対象大会ランキング、規定以内のタイムによって決定される。
日本男子はリオ五輪に衛藤昴が出場しているが、女子はシドニー五輪に今井美希と太田陽子が出場して以来、五輪から遠ざかっている。日本人選手が継続的に出場している走幅跳に比べると、走高跳は壁の高い種目といえる。
しかし、日本勢にも東京五輪に向けて風が吹いている。2017年の日本選手権で2位に終わった戸邉直人がアジア大会で銅メダルを獲得した。さらに戸邉は2019年2月にドイツ・カールスルーエで行われた世界室内ツアーの第2戦において、2メートル35を記録し、13年ぶりに日本記録を更新。その後の試合でも好成績を残し、ツアー最終戦も制するとツアー総合優勝という快挙を成し遂げた。日本選手権で優勝した衛藤昴もアジア大会で6位入賞を果たしており、経験豊かな選手だけにこれからの活躍に期待できる。女子からのアジア大会出場選手はなかった。
若手に注目の男子、女子は群雄割拠
リオ五輪の男子走高跳で金メダルに輝いたのは2メートル38を記録したデレク・ドルーイン(カナダ)。2位がムタズエサ・バルシム(カタール)、3位がボーダン・ボンダレンコ(ウクライナ)だった。バルシムはロンドン五輪でも銅メダルを獲得しており、2014年に歴代2位となる2メートル42を記録した実力者。2017年の世界陸上でも優勝しており、東京五輪でもメダル有力候補であることは間違いないだろう。
しかし、2017年世界陸上で2位の若手ダニル・リセンコ(ロシア)は2018年に入ると世界室内選手権、陸上界最高峰のリーグ戦であるダイアモンドリーグでともに優勝。さらに、7月には近年最高、歴代8位となる2メートル40を記録しており、東京五輪までの成長が楽しみな選手だ。
リオ五輪の女子走高跳を制したのは、ルート・ベイティア(スペイン)。ミレラ・デミレワ(ブルガリア)、ブランカ・ブラシッチ(クロアチア)、チャウント・ロー(アメリカ)を含めた4選手が1メートル97で並んだため、試技の最も少なかったベイティアが金メダルとという接戦だった。
2017年の世界陸上ではマリヤ・ラシツケネ(ロシア)が優勝を果たし、リオ五輪のメダル獲得者はいずれも表彰台を逃した。2019年に行われる世界陸上の動向にも注目したいところだが、東京五輪も群雄割拠の状況で迎えることは想像に難くない。