東京五輪の女子競泳自由形で、日本人史上2人目の金メダリストは誕生するのか

競泳陣のエース、池江璃花子に大きな注目

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個人によるメダルラッシュが期待される池江璃花子

オリンピック最古の競技の一つである競泳自由形。過去にはイアン・ソープとピーター・ファン・デン・ホーヘンバンドのライバル対決が話題を呼び、2004年には柴田亜衣が日本人女子初の金メダルを獲得した。東京五輪では萩野公介や池江璃花子ら、日本人選手にも金メダルの期待がかかる。

自由形はオリンピックで最も古い競技の一つ

競泳は1986年にギリシャのアテネで行われた第1回オリンピックから競技として採用されている。

この時に行われたのは男子自由形100メートル、400メートル、1200メートル、および水兵による自由形100メートルの4種目。オリンピックの競泳の中で最も古い歴史を持つのがこの自由形だ。「自由形=クロール」と認識している人がいるかもしれないが、「自由形(Freestyle)」の名が示すとおり、どんなスタイルで泳いでもいい。タイムを競う競技においてはクロールが最もスピードが出るため、参加者全員がクロールで泳いでいるに過ぎない。

2020年の東京オリンピックでは男子と女子の50メートル、100メートル、200メートル、400メートル、800メートル、1500メートルが行われる。男子800メートルと女子1500メートルは新たに加わる種目だ。

2004年に柴田亜衣が日本女子初の金メダル

第1回アテネ五輪の競泳は専用のプールではなく港の海面で行われている。男子100メートルで優勝したハヨーシュ・アルフレード(ハンガリー)のタイムは1分22秒2だった。2016年リオデジャネイロ五輪までのオリンピック記録はイーモン・サリバン(オーストラリア)が2008年北京五輪で記録した47秒05で、世界記録はセーザル・シエロ(ブラジル)が持つ46秒91。海とプールの違いがあるため単純比較はできないが、この120年あまりで35秒も縮まったことになる。

男子自由形では記録と記憶に残る名スイマーが少なくない。1988年のソウル五輪で50メートルと100メートルを制したマット・ビオンディ(アメリカ)や、1992年バルセロナ五輪と1996年アトランタ五輪で50メートルと100メートルをそれぞれ連覇したアレクサンドル・ポポフ(EUN:旧ソビエト連邦のバルト三国を除く12カ国によって臨時に編成された選手団/ロシア)、父とおじが競泳でオリンピックに出場し、自身も2000年シドニー五輪、2004年アテネ五輪の50メートルを連覇したゲーリー・ホール・ジュニア(アメリカ)などが有名だ。

近年、特に知名度が高い男子選手と言えば、400メートルで2000年シドニー五輪と2004年アテネ五輪を連覇するなど、オリンピックで合計5つの金メダルを獲得したイアン・ソープ(オーストラリア)の名が挙がる。彼の最大のライバルであり、2000年シドニー五輪の男子100メートルと200メートルを制するなど、オリンピックで合計3個の金メダルを獲得したピーター・ファン・デン・ホーヘンバンド(オランダ)の存在も無視できない。2000年シドニー五輪や2004年アテネ五輪では、両者のハイレベルな戦いが盛り上がりを見せた。

日本人が自由形で初めてメダルを獲得したのは、1928年のアムステルダム五輪のこと。高石勝男が男子100メートルで銅メダルを獲得した。続く1932年ロサンゼルス五輪では、男子100メートルで宮崎康二が金メダル、河石達吾が銀メダルを獲得。男子1500メートルでも北村久寿雄が金、牧野正蔵が銀と、2種目で日本人がワンツーフィニッシュを飾っている。1936年のベルリン五輪でも寺田登が男子1500メートルで金メダルを獲得しているが、男子選手はこれ以降、自由形の各種目で金メダルを手にしていない。

一方、女子自由形は世界の壁が厚く、メダルに手が届かない状況が続いていたが、2004年アテネ五輪の800メートルで柴田亜衣が史上初の金メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロ五輪まで、これが女子自由形で唯一のメダルとなっている。

東京五輪での注目は萩野公介と池江璃花子

近年の自由形のレースでは日本人選手がなかなかメダルを獲得できていないため、2020年東京五輪では期待が高まる。

男子では個人メドレーを本職としながら、200メートル、400メートル自由形の日本記録保持者である萩野公介が注目の存在だ。その萩野より一つ年上の江原騎士も得意の200メートル、400メートルでメダルを狙い、200メートルでは2018年4月に明治大学の4年生となった松元克央も着実に記録を伸ばしている。

短距離の50メートルと100メートルでは、日本記録保持者の中村克が目覚ましい成長を見せている。特に100メートルの日本記録47秒87は、2016年リオデジャネイロ五輪の銀メダルや銅メダルと遜色ないタイムだ。日本新記録に匹敵する泳ぎを見せられれば、日本人に不利とされる短距離でのメダル獲得も十分に可能と言える。

女子では池江璃花子が競泳陣のエースとして注目される。自由形とバタフライを得意とし、自由形では50メートル、100メートル、200メートルの日本記録を保持。リオデジャネイロ五輪ではバタフライ、リレー競技も含め、日本人選手として初めて7競技でエントリーされ、過密日程のなかで100メートル自由形では準決勝進出を果たしている。リオデジャネイロ五輪同様、複数競技でのエントリーが予想されるためハードスケジュールとも向き合わなければならないが、2018年7月4日に18歳になったばかりと、まだまだ成長の余地は大きく残されており、個人によるメダルラッシュの可能性も決して低くはない。2004年アテネ五輪の柴田以来、日本人女子選手史上2人目となる自由形での金メダル獲得に期待が集まる。

海外のライバルも侮れない。特にアメリカとオーストラリアには、体格やパワーに恵まれた有力選手がひしめく。男子では50メートルと100メートルでアメリカのナショナルレコードを持つケーレブ・ドレッセルや、四泳法すべてで非凡な才能を見せ、ジュニア世代のアメリカ記録を次々に塗り替えたマイケル・アンドリューが存在感を増している。マイケルは2018年4月18日に19歳になったばかりの新鋭だ。リオデジャネイロ五輪の100メートルで金メダルを獲得したカイル・チャルマース、400メートル金メダルのマック・ホートン(ともにオーストラリア)らも、有事がない限りメダリスト候補と言える。

女子では50メートルと100メートルの世界記録保持者であるサラ・ショーストレム(スウェーデン)や400メートル、800メートル、1500メートルの世界記録を持つケイティ・レデッキー(アメリカ)、ケイトとブロンテのキャンベル姉妹(オーストラリア)などが池江の強力なライバルになるはずだ。

世界記録保持者などを見る限り、海外の選手のほうがメダルへの距離が近いことは否定できない。日本人選手は追いかける立場にいるが、東京五輪までにその差を縮めるべく奮闘している。水中での激戦が盛り上がるのは間違いない。

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