前回のリオデジャネイロ五輪で金メダル2個を含む、7個のメダルを獲得した日本競泳陣。2004年アテネ五輪からメダルラッシュが期待できる種目となり、自国開催となった東京五輪に向けて、記録面でも期待できる選手たちが揃った。ここでは男子の注目種目や選手を取り上げる。
◆「カツオ」こと松元克央、自由形悲願のメダル獲得なるか
日本男子競泳界において長年の悲願である、自由形で世界の頂点を狙える選手が現れた。2019年夏に行われた世界選手権男子200m自由形で銀メダルを獲得した松元克央である。オリンピックや世界選手権を通じて、この種目で日本人選手が表彰台に登ったのは史上初のことで、価値ある銀メダルだった。
名前は克央と書いて「かつひろ」だが、愛称は「カツオ」。金町スイミングスクールで総支配人の平昌巳コーチが名付け親だ。少年時代の松元は、東京都葛飾区・金町スイミングで水泳に打ち込んできた。小学4・5年の時に約30人のグループで指導を受けていて、松元はそのうちの1人。チーム内で各種目のタイムランキング表を作成し、選手へ配布する際、選手の発奮を促すためにランキング下位選手の名前をいじることがあり、50m平泳ぎで最下位だった松元の名前「克央」を「かつおう」と読み、ランキング表に「松元カツオ」と記載する。これから「カツオ」の愛称が定着し、新記録達成時は「新カツオ」、終盤追い上げると「追いガツオ」と松元自身が名乗るなど、「○○ガツオ」と返答するのが恒例となっていった。
松元は、4月の日本選手権で1分44秒65を叩き出して日本新記録を達成。この時のタイムが2016年リオデジャネイロ五輪金メダルの孫楊(中国)と同タイムで、2019年世界選手権優勝タイムを上回った。もちろん、東京五輪でも金メダル候補の1人だ。本番でメダルを獲得した時点で、松元は「何ガツオ」に成長しているのだろうか。
◆入江陵介、背中を押してあげるようなキャプテンに
4大会連続のオリンピック出場となった入江陵介。気が付けば30歳を超え、ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かる。五輪や世界選手権で金メダルの獲得はないが、長年に渡って背泳ぎの第一人者として活躍してきた。
ロンドン五輪では銀メダル2個、銅メダル1個を獲得し、200m背泳ぎは日本選手権史上初の10連覇を成し遂げている。東京五輪代表選考会を兼ねた4月の日本選手権で、男子100m、200m背泳ぎで二冠を達成し、4大会連続の出場権を手に入れた。200m背泳ぎは日本選手権14回目の制覇となり、現在も100m、200m背泳ぎの日本記録を保持する。
競泳陣ではチーム最年長となり、東京五輪の競泳日本代表主将に任命された。過去にも世界選手権などで主将の経験はあるが、入江は「自然体でいられる雰囲気を作りたい」と抱負を語る。松元など成長著しい若手が揃う中で「競技面で引っ張ってくれる人はいるので、僕はそっと背中を押してあげるようなキャプテン像を思い描いている」と続けた。選手たちが最高のパフォーマンスを出せるよう、入江主将は自らの役割に徹し、競泳日本代表を引っ張っていく。
◆北島康介を追いかけ金メダルを狙う佐藤翔馬
アテネ五輪と北京五輪で2大会連続100m、200mの2冠を達成した北島康介が世界のトップに君臨するも、前回のリオデジャネイロ五輪で男子平泳ぎのメダルはゼロ。しかしその後の世界選手権では渡辺一平が銅メダルを獲得するなど、再び世界と差が縮まりつつある。
その平泳ぎには男子200mに佐藤翔馬が出場する。佐藤は小学3年生の時に、北島康平を輩出した東京SCで水泳に打ち込んでいた。日本選手権で優勝を日本新記録で飾り、五輪代表内定を獲得。「僕も金を取りに行きたい」と意気込む。東京五輪の会場は日本選手権と同じく東京アクアティクスセンター。日本記録を出したプールで自分のレースに徹すれば、佐藤にも自ずとメダル獲得のチャンスが膨らんでいく。北島以来の金メダル獲得を目指した戦いに挑む。