【東京オリンピック出場枠争い】カヌー:8種目で開催国枠を獲得。欧州勢有利のなか、日本勢にメダルの可能性も
日本人はレース成績によるポイント制で出場枠を争う
東京五輪のカヌー競技ではスラロームとスプリントで合計16種目が行われる。そのなかの8種目で日本に開催国枠が与えられることになった。国内選考は、スラロームは選考対象レースでの獲得ポイントによって出場権が争われ、スプリントは特定の大会でオリンピック出場枠を獲得した選手が出場内定となる。
8つの種目で開催国枠が与えられる
オリンピックで行われるカヌー競技は「スラローム」と「スプリント」の2種目がある。各種目は水面を漕ぐパドルのブレード(水かき)が片側だけについている「カナディアン」と、両側についている「カヤック」に分かれており、2020年東京五輪では以下の16種目が行われる。
2020年東京五輪で実施されるカヌーの種目
スラローム
- カヤックシングル*(K-1)(男子/女子)
- カナディアンシングル*(C-1)(男子/女子)
スプリント
- カヤックシングル(K-1)200メートル(男子/女子)
- カヤックシングル*(K-1)1000メートル(男子)
- カヤックシングル*(K-1)500メートル(女子)
- カヤックペア(K-2)1000メートル(男子)
- カヤックペア(K-2)500メートル(女子)
- カヤックフォア(K-4)500メートル(男子/女子)
- カナディアンシングル*(C-1)1000メートル(男子)
- カナディアンシングル*(C-1)200メートル(女子)
- カナディアンペア(C-2)1000メートル(男子)
- カナディアンペア(C-2)500メートル(女子)
※種目名の後に「*」がついているものは日本に開催国枠が付与される
スラロームはカヌー・スラロームセンターで、スプリントは海の森水上競技場で行われる。いずれも2020年東京五輪に向けて新しく整備される施設だ。
上記に印をつけたとおり、国際カヌー連盟は、スラロームの合計4種目、そしてスプリントのカヤックシングル1000メートル男子、カナディアンシングル1000メートル男子、カヤックシングル500メートル女子、カナディアンシングル200メートル女子の各種目に開催国枠を設定した。スラロームとスプリントの各種目で、日本人の姿が必ず見られることが決まっている。
日本カヌー協会はスラローム競技について、以下の4大会を2020年東京五輪の選手選考対象レースに指定した。選手たちはレース成績によるポイント制でオリンピック出場権を争うこととなる。
2020年東京五輪の選手選考対象レース
- 1:ワールドカップ第2戦(2019年6月21日~23日/スロバキア)
- 2:ワールドカップ第3戦(2019年6月28日~30日/スロベニア)
- 3:世界選手権大会(2019年9月24日~29日/スペイン)
- 4 :オリンピック カヌースラローム競技日本代表選手最終選考会 第42回NHK杯 国際カヌースラローム競技大会[仮称](2019年10月18日~20日/東京都江戸川区)
最終的な選考レースは4の最終選考会となり、この大会は2020年東京五輪の会場でもあるカヌー・スラロームセンターで行われる。オリンピック出場をめざす選手は必ず出場しなければならず、この大会で得たポイントと、1から3までのレースで得たポイントのうち上位2つを加算して派遣する選手が決まる。日本カヌー連盟の古谷利彦専務理事は「コンスタントに結果を出した選手のなかから、本番と同じコースで勝てる選手を選びたい」とその意図を話している。
リオ五輪では羽根田卓也が日本人初のメダル
スプリントについては、以下の2大会がオリンピック予選に制定されている。
スプリントのオリンピック予選
- 1:世界選手権(2019年8月21日~25日/ハンガリー)
- 2:アジア大陸予選(2020年3月25日~29日/タイ)
この両大会で出場枠を獲得した選手にオリンピック出場の内定が与えられる。開催国枠のある種目の出場者の選定方法については今後確定する予定だが、これらの大会での成績も選考基準の一つになる可能性が高い。
スプリントでは、2016年と2017年の日本カヌースプリント選手権大会において、男子カナディアンシングル1000メートルで2連覇を達成した當銘孝仁(とうめ・たかのり)、2018年の同選手権で2位となった小梶孝行(こかじ たかゆき)らが注目を集める。
一方のスラロームでは、2016年リオデジャネイロ五輪のスラローム男子カナディアンで羽根田卓也が3位となり、カヌー競技における日本人初となる銅メダルを獲得した。この種目では開催国枠が与えられているが、その羽根田でも選考レースを勝ち抜かなければ2020年東京五輪の出場権を手にすることはできない。羽根田とともに日本代表に選出されている佐々木将汰や谷口和也らと出場枠を争うことになる。
20年以上のキャリアを誇る羽根田はカヌー強豪国のスロバキアを拠点に15年近く活動している。同じスロバキアでは、スラローム女子カナディアンシングルの八木愛莉も鍛錬に励む。八木は2019年4月に行われた日本代表最終選考会の女子カナディアンシングルで優勝。出場枠獲得の可能性を高めている。
東京オリンピック出場内定選手(5月12日時点)
スプリント
- 男子カヤックフォア500m:松下桃太郎、藤嶋 大規、水本 圭治、宮田 悠佑
- 女子カナディアンペア500m:久保田愛夏、桐明輝子
- 女子カヤックシングル200m:小野祐佳
スラローム
- 男子カヤック:足立和也
- 男子カナディアンカヌー:羽根田卓也
- 女子カヤック:矢澤亜季
- 女子カナディアンカヌー:佐藤彩乃
欧州勢がメダル有力候補。「裸の旗手」にも注目
カヌー競技は抵抗の強い「水」をコントロールしなければならないため、体格やパワーが勝敗を分けるケースが多い。
有利なのは筋力に優れたヨーロッパ勢やオセアニア勢だ。スプリントはドイツが強く、2016年リオデジャネイロ五輪では男女合わせて12種目で7つのメダルを獲得している。當銘や小梶が開催国枠を争う男子カナディアンシングル1000メートルでは、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロとオリンピック2連覇中のセバスティアン・ブレンデル(ドイツ)や、2018年のカヌースプリントヨーロッパ選手権でそのブレンデルを破り優勝を果たしたマルティン・フクサ(チェコ)らがメダルの有力候補となっている。
一方、2020年東京五輪でのカヌー挑戦を表明して注目を集めたのが、トンガのピタ・タウファトフアだ。彼は2016年リオデジャネイロ五輪、2018年平昌冬季五輪でトンガの旗手を務めている。民族衣装をまとい、上半身にココナッツオイルを塗った姿が「裸の旗手」として話題になった。2020年東京五輪ではテコンドーとの「二刀流」をめざすと話しており、もし出場枠を確保できればカヌー競技への注目度もさらに高まるはずだ。