【卓球】久しぶりに実戦形式の試合に参加…東京五輪に向けた日本代表の仕上がり状況は?

1 執筆者 照井雄太
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Tokyo 2020(東京五輪)の卓球競技は、7月24日(土)から8月6日(金)まで約2週間にわたり開催される。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、国際卓球連盟(ITTF)が主催する国際大会は3月の「WTTスターコンテンダー ドーハ大会」以降は実施されず、日本代表選手は試合から遠ざかっていた。だが6月にアジア選手権日本代表選手選考合宿、前期日本卓球リーグ千葉大会、7月に日本卓球協会創立90周年記念事業の一環として行われた「2021卓球NIPPONドリームマッチ」が開催され、久しぶりの実戦形式での試合を経験。男女代表6選手が出場した試合は以下の通り。

  • アジア選手権日本代表選手選考合宿:丹羽孝希、水谷隼
  • 前期日本卓球リーグ千葉大会:石川佳純
  • 2021卓球NIPPONドリームマッチ:張本智和、水谷隼、伊藤美誠、石川佳純、平野美宇

■男子の3選手は不安要素もあるが心配は無用

男子シングルスと団体に出場する、世界ランク4位の張本智和。ドリームマッチでは、1月の全日本選手権で完敗している及川瑞基と対戦した。

両者手の内を知り尽くしているため、簡単に得点できず、ピッチの速い、激しいラリーの応酬となったが、ゲームカウント4-3で、張本が全日本選手権のリベンジを果たした。ギアを上げた時のプレーはさすがで、世界トップレベルのプレーを見せてくれた。

張本の課題として、中国選手に対しては挑戦者の立場で向かうため攻撃的に試合できるが、自分よりランクの低い選手や同年代の選手と接戦になった際に、消極的になってしまうことがある。全日本チャンピオンの及川は実力的にも格下ではないが、世界ランクはまだ61位。いままでの張本であれば、消極的になってもおかしくない相手であり、その選手に接戦で勝てたことは、ポジティブに捉えて良い。倉嶋洋介監督とのベンチワークという面でも、良い試合となった。

またドリームマッチでは、丹羽が体調不良で急遽欠場したため、丹羽/水谷ペアから張本/水谷ペアに変更となり、神巧也/篠塚大登と対戦した。団体戦では、基本的に張本がシングルスでの起用となり、ほとんど練習をしていないペアながらも、ゲームカウント3-1で勝利。急造ペアでも、きっちりと自分のプレーを貫いて勝利を収めたことに、あらためて2人の能力の高さと対応力の高さを実感した。張本にとっては、感触は悪くない2試合となり、本番でもアグレッシブなプレーを見せてもらいたい。

シングルスと団体に出場する世界ランク17位の丹羽孝希。前述のようにドリームマッチは欠場。アジア選手権日本代表選手選考合宿では、吉村和弘、鈴木颯に敗れ、まさかの予選リーグ敗退。結果だけを見れば不安になってもおかしくないが、2016年のリオデジャネイロ五輪前も、国際大会で格下への敗戦が続き調子を落としていた。しかし男子団体で銀メダル、シングルスではベスト8と結果を残し、世界選手権も2大会連続シングルスベスト8と本番での強さを証明している。プライベートでは、6月に第一子となる長女が生まれ、父としてカッコいい姿を見せるためにも、東京五輪にきっちり合わせてくると心配はしていない。

混合ダブルスと団体に出場する世界ランク18位の水谷隼。アジア選手権日本代表選手選考合宿では、準々決勝で戸上隼輔に敗れるも、順位決定戦ではきっちり勝利を収め、5位という結果だった。本人も「きのうから5勝1敗とまずまずの結果。6試合できたのは大きな収穫」とコメント。

卓球NIPPONドリームマッチでは、急造の張本とのペアで勝利。伊藤美誠との混合ダブルスでは、男子ペアの吉村真晴/有延大夢にゲームカウント0-4で完敗を喫したが、男子ペアが相手なので、悲観的になる必要はなく、この敗戦を本番で活かせるはずだ。オリンピック4大会連続出場と経験豊富な水谷。本番にきっちり合わせてくれるはずである。

■女子3選手は順調な調整ぶり

女子シングルス、団体、混合ダブルスと3種目に出場する、世界ランク2位の伊藤美誠。ドリームマッチでは、水谷との混合ダブルスで男子ペアに敗戦するも、仮想ドイツを想定した団体戦ではシングルスで2勝。カット型の原田春輝。ペンホルダーの宋恵佳に対し、1ゲームも落とさない完璧な試合を見せた。プレー自体もピッチの速さ、身体のキレ、戦術技術の幅と申し分なく、伊藤美誠らしいプレーを見せた。このまま順調に調整を進め、対中国で爆発的なプレーを見せてくれることを期待したい。

シングルス、団体に出場する世界ランク10位の石川佳純。日本卓球リーグでは貫禄の全勝で、チームの優勝に大きく貢献し、最高殊勲選手賞を獲得した。ドリームマッチでは平野美宇とのペアで、宋恵佳/長﨑美柚ペアにゲームカウント3-2で勝利を収めた。石川のサーブミスからスタートする程、緊張感が伝わり、プレー自体も硬さが見られたこの試合。各ゲームで常に接戦となり、本番に近い状況で、逆転勝ちできたことは自信につながったと思われる。

シングルスではカット型の原田春輝にゲームカウント3-1で勝利。女子選手にはないパワーのあるカウンター攻撃に苦戦する場面はあったが、カットに対しては安定感のあるプレーを見せた。こちらも緊張感のある中で勝ち切ったのは収穫である。日本選手団の副主将にも任命され、日本中の期待を感じるかもしれないが、マイペースで調整を続け、本番では思い切ってプレーをしてほしい。

団体のみの出場となる世界ランク12位の平野美宇。ドリームマッチでは、石川とのペアで勝利。シングルスでは、長﨑美柚にゲームカウント3-1で勝利。2月に行われた「Tリーグ」のファイナルでは、フルゲームの接戦で勝利した強敵だったが、リードされても平野のプレーはブレることがなく、終始安定感のあるプレーを見せた。

調子が悪い時の平野は、試合の中でも好不調の波が出てくるのだが、ここまで安定感のある平野のプレーを見たのは久しぶりでないだろうか。前回リオデジャネイロ五輪ではサポートメンバーとして帯同し、目の前で行われる試合に出られない悔しい思いをした。5年越しにその時の悔しい思いを東京五輪に思い切りぶつけてほしい。

オリンピック初出場となる張本と平野は、順調な調整ができているようだ。残りの4名はオリンピックメダリストであるため、心配をする必要は全くない。東京五輪まであとわずかとなった。各選手、ケガと体調不良には十分注意し、万全の状態で試合に臨んでほしい。実力を出し切ることができれば、自ずと結果は付いてくるはずだ。

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