通算872勝を挙げているノヴァク・ジョコビッチは16年間のATPツアーでのキャリアで優勝することが当たり前になっていった。ジョコビッチが負けることはほとんどない一方で、彼は痛みのある敗北こそが最も自身を形作ったと信じている。
「スポーツとテニスは勝利と敗北を通して個性を成長させる。勝利の感覚は徐々に消えてしまうが、敗北はより長く自分に残り続け、人間として、そしてアスリートとしての自分を決定づけてくれる」。
ジョコビッチは火曜日のウェスタン&サザン・オープンで王座を防衛するためにサム・ケリーを倒して最近の勝利を掴み取った。先月、ウィンブルドンの決勝でロジャー・フェデラーを倒してから最初の試合だった。
世界1位のジョコビッチは多くの失意を経験してきた。彼はグランドスラムで9回、ATPマスターズ1000で16回、ATPファイナルズで2回準優勝に終わっている。しかし、フェデラーがそうしたようにジョコビッチは難しい状況の中でも前に進み続ける方法を探し続け、好循環の中に自身を置くことができた。
「それが、敗北を乗り越えて自身を感情的にも心理的にも強くする方法、もしくは自身をコントロールし落ちつける方法だ」とジョコビッチは語った。「スポーツはそのような人生の教訓をテニスコートのちょっとした時間で教えてくれる」。
ジョコビッチはシンシナティで王座を防衛することにプレッシャーを感じていない。それは、タイトルを守り抜くことが彼のキャリアにおいて普通のことであるだけでなく、彼の周囲のポジティブなことに影響されているからだ。
彼は、プロのアスリートとして成功したことは子供時代に受けた両親のサポートがあったからだと信じている。大人になってからは、妻のエレナや13年間という長い間コーチを務めているマリアン・ヴァイダに支えられている。ヴァイダは今週、シンシナティには帯同していないが、それでももう一人の信頼できる親友であり、同じウィンブルドン王者でもあるゴラン・イヴァニセヴィッチが同行している。
彼は、家族のサポートがあったとしても、ATPツアーで成功する確率は小さいことを自覚している。しかし、テニスで彼の夢を叶えられなかったとしても、彼の受けた励ましはあらゆる場所で彼が生きていくことを助けただろう。
「私がアメリカの大学のテニスのシステムで好きだったことは、勝っても負けてもいつもチームの一員であることを感じられたことだ」とジョコビッチは述べた。「私は若い選手たちがグランドスラムや上位10人にならなければならないという大きすぎるプレッシャーを背負っていることを知っている。私たちは、これをより優しく、もっと思いやりのあるやり方で対処しなければならないと思う。もし、スポーツのトップに立つことができなくても、人生は続いていく。世界の終わりではないんだ」。
過去12ヶ月で55勝8敗を記録するジョコビッチは、間違いなくスポーツ界のトップに立っている。もし、今季の彼の状態が何かを示唆していたら、それは彼が更なる個性の構築をしている最中かもしれない。
原文:Djokovic Reveals How Losses Fueled His Wins
抄訳:オリンピックチャンネル編集部