レスリングの世界一を決める世界選手権が昨年の2022年大会に続き再びセルビア・ベオグラードで幕を開ける。
9月16日〜24日の9日間にわたって開催される2023年の世界選手権では、パリ2024オリンピックで実施される18階級(女子6、男子12)を含む合計30階級(女子10、男子20)が行われ、東京2020オリンピック金メダリスト須﨑優衣や乙黒拓斗のほか、世界各地から集まったトップレスラーたちが世界の頂点を目指し熱い戦いを繰り広げる。
今回の大会は、開会まで10ヶ月に迫るパリ2024オリンピックの予選を兼ねて行われ、オリンピックで実施される18階級のそれぞれでパリ2024出場枠が5枠ずつ用意されている。メダリスト4人(金メダル、銀メダル、銅メダル、銅メダル)に加え、決勝後に行われる5位同士の特別試合の勝者、計5選手それぞれが属する国内オリンピック委員会がパリ2024オリンピックの出場枠を1枠ずつ獲得する。
日本レスリング連盟は、この大会でメダルを獲得した選手をパリ2024日本代表内定選手とすることを発表しており、パリを目指す日本選手にとっては負けられない戦いとなる。
なお、オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。
ここでは大会の見どころを日本代表選手を中心に紹介したい。
レスリング世界選手権2023、注目の日本代表選手
女子階級
日本代表選手は、昨年の世界選手権で行われた女子10階級のうち5階級で優勝した。そのうち3選手が今年の大会にも出場する。
東京2020では全試合無失点で金メダルを獲得した50kgの須﨑優衣は、昨年に続く優勝、さらには自身4度目となる優勝がかかる。同階級の多くの選手が須﨑を倒すべく、あるいは何かを学ぶべくセルビアに降り立つことだろう。
同じくオリンピック階級・57kg級の櫻井つぐみは57kg級での2連覇、さらに2021年オスロ大会・55kg級での優勝から続く3つ目の金メダルを狙う。
一方、オリンピック種目の62kg級で昨年大会を制した20歳の尾崎野乃香は、国内代表選考で敗れ、その座を昨年の世界選手権・59kg級銅メダリストの元木咲良に譲った。尾崎のパリ2024への道は厳しくなったものの、オリンピック非階級の65kg級で世界選手権・日本代表入りを決めた。
昨年大会を怪我のため欠場した53kg級の藤波朱理にも注目が集まる。中学生の頃からの無敗記録を122とする19歳の藤波は、2021年オスロ大会以来、2度目の優勝を視野に入れる。
さらに、昨年大会の決勝で東京2020金メダリストのタミラマリアナ・ストックメンサに敗れて銀メダルとなった石井亜海は、今年はその頂点を目指す。ストックメンサは活動の場をプロ(WWE)へと移し、この大会には出場しない。第1シードには中華人民共和国のゾウ・フェン(周鳳)が入り、石井は第2シードとなる。
また、76kgでは2度目の世界選手権となる鏡優翔(かがみ・ゆか)が昨年の銅メダルを別の色にかえるべく戦いに挑む。昨年は準々決勝でのちに優勝することになるヤセミン・アダール(トルコ)に敗れ、敗者復活戦を勝ち抜いて銅メダルを手にした。今年は第6シードで戦いをスタートさせる。
男子階級
フリースタイルとグレコローマンが行われる男子階級では、東京2020オリンピックのフリースタイル65kg級を制した乙黒拓斗が2019年大会ぶりに世界選手権の舞台に戻ってくる。24歳の乙黒は、自身2つ目の世界選手権・金メダル(1つ目は2018年)獲得を目指し、さらにはその先のパリ2024での2連覇を目標に据える。だが、今大会ではノーシードとなっており、組み合わせ次第では厳しい道のりとなることもありうる。第1シードとなるのは21歳のラフマン・アモウザドハリリ(イラン・イスラム共和国)で、昨年大会で優勝し、アジア選手権でも2連覇中のアモウザドハリリとの戦いに注目が集まる。
また、昨年61kg級(オリンピック非階級)で優勝した樋口黎(れい)が今回の大会ではオリンピック階級の57kg級での代表入りを決めた。樋口は、リオ2016オリンピック・57kg級で銀メダルを獲得しており、東京2020出場を逃した悔しさをパリ2024にぶつける。乙黒と同様、樋口もノーシード。第2シードで昨年大会優勝のゼリムハン・アバカロフ(アルバニア)や第1シードのゾウ・ワンハオ(中華人民共和国)のほか、アジア選手権王者で20歳のアマン・セヘラワット(インド)らがその道に立ちはだかる。
兄弟でオリンピック出場を目指す石黒兄弟にも注目したい。新日本プロレスに属する兄・峻士(たかし)は97kg級、アジア選手権で3位となった弟・隼士(はやと)は86kg級で代表入りした。
さらに、国際試合デビューとなったアジア選手権・92kg(オリンピック非階級)で優勝した、19歳の吉田アラシは、世界レスリング連合(UWW)が選ぶ若手注目選手のひとりだ。
一方、腰から下への攻撃が禁じられているグレコローマンでは、東京2020で銀メダルを獲得し、昨年大会は銅メダルとなった60kg級の文田健一郎が2019年大会ぶりとなる3度目の優勝を目指す。
東京2020・77kg級銅メダルの屋比久翔平は、同階級での代表争いに敗れ、82kg級で代表入り。77kg級には日下尚が出場し、パリ2024出場枠獲得を目標に掲げる。
レスリング世界選手権2023、日程
9月16日(土)
10:30(日本時間17:30)〜
[1回戦~]男子フリースタイル61kg級、70kg級、86kg級、125kg級
16:45(日本時間23:45)〜
[準決勝]男子フリースタイル61kg級、70kg級、86kg級、125kg級
9月17日(日)
10:30(日本時間17:30)〜
[敗者復活戦]男子フリースタイル61kg級、70kg級、86kg級、125kg級
14:30(日本時間21:30)〜
[1回戦~]男子フリースタイル79kg級、92kg級、57kg級、74kg級
16:45(日本時間23:45)〜
[準決勝]男子フリースタイル79kg級、92kg級、57kg級、74kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]男子フリースタイル61kg級、70kg級、86kg級、125kg級
21:00(日本時間 翌4:00)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]男子フリースタイル86kg級、125kg級
9月18日(月)
10:30(日本時間17:30)〜
[敗者復活戦]男子フリースタイル79kg級、92kg級、57kg級、74kg級
[1回戦~]男子フリースタイル65kg級、97kg級、女子55kg級、59kg級
16:45(日本時間23:45)〜
[準決勝]男子フリースタイル65kg級、97kg級、女子55kg級、59kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]男子フリースタイル79kg級、92kg級、57kg級、74kg級
21:00(日本時間 翌4:00)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]男子フリースタイル57kg級、74kg級
9月19日(火)
10:30(日本時間17:30)〜
[敗者復活戦]男子フリースタイル65kg級、97kg級、女子55kg級、59kg級
[1回戦~]女子65kg級、50kg級、57kg級、76kg級
16:45(日本時間23:45)〜
[準決勝]女子65kg級、50kg級、57kg級、76kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]女子55kg級、59kg級、男子フリースタイル65kg級、97kg級
21:00(日本時間 翌4:00)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]男子フリースタイル65kg級、97kg級
9月20日(水)
10:30(日本時間17:30)〜
[敗者復活戦]女子65kg級、50kg級、57kg級、76kg級
[1回戦~]女子 72kg級、53kg級、62kg級、68kg級
16:45(日本時間23:45)〜
[準決勝]女子 72kg級、53kg級、62kg級、68kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]女子65kg級、50kg級、57kg級、76級
21:00(日本時間 翌4:00)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]女子50kg級、57kg級、76級
9月21日(木)
10:30(日本時間17:30)〜
[敗者復活戦]女子72kg級、53kg級、62kg級、68kg級
[1回戦~]男子グレコローマン55kg級、82kg級、77kg級、130kg級
16:45(日本時間23:45)〜
[準決勝]男子グレコローマン55kg級、82kg級、77kg級、130kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]女子72kg級、53kg級、62kg級、68kg級
21:00(日本時間 翌4:00)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]女子53kg級、62kg級、68kg級
9月22日(金)
10:30(日本時間17:30)〜
[敗者復活戦]男子グレコローマン55kg級、82kg級、77kg級、130kg級
[1回戦~]男子グレコローマン72kg級、60kg級、97kg級
17:00(日本時間24:00)〜
[準決勝]男子グレコローマン72kg級、60kg級、97kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]男子グレコローマン55kg級、82kg級、77kg級、130kg級
21:00(日本時間 翌4:00)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]男子グレコローマン77kg級、130kg級
9月23日(土)
10:30(日本時間17:30)〜
[敗者復活戦]男子グレコローマン72kg級、60kg級、97kg級
[1回戦~]男子グレコローマン63kg級、67kg級、87kg級
17:00(日本時間24:00)〜
[準決勝]男子グレコローマン63kg級、67kg級、87kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]男子グレコローマン72kg級、60kg級、97kg級
20:30(日本時間 翌3:30)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]男子グレコローマン60kg級、97kg級
9月24日(日)
16:30(日本時間 23:30)〜
[敗者復活戦]男子グレコローマン63kg級、67kg級、87kg級
18:00(日本時間 翌1:00)〜
[3位決定戦・決勝]男子グレコローマン63kg級、67kg級、87kg級
20:30(日本時間 翌3:30)〜
[オリンピック出場枠(5位)決定戦]20:30〜 男子グレコローマン67kg級、87kg級
レスリング世界選手権2023、日本代表選手
男子フリースタイル
- 57kg級 樋口黎
- 61kg級 小川航大
- 65kg級 乙黒拓斗
- 70kg級 青柳善の輔
- 74kg級 高谷大地
- 79kg級 三輪優翔
- 86kg級 石黒隼士
- 92kg級 吉田アラシ
- 97kg級 石黒峻士
- 125kg級 山本泰輝
女子
- 50kg級 須﨑優衣
- 53kg級 藤波朱理
- 55kg級 奥野春菜
- 57kg級 櫻井つぐみ
- 59kg級 南條早映
- 62kg級 元木咲良
- 65kg級 尾﨑野乃香
- 68kg級 石井亜海
- 72kg級 森川美和
- 76kg級 鏡優翔
男子グレコローマン
- 55kg級 尾西大河
- 60kg級 文田健一郎
- 63kg級 池田龍斗
- 67kg級 曽我部京太郎
- 72kg級 原田真吾
- 77kg級 日下尚
- 82kg級 屋比久翔平
- 87kg級 角雅人
- 97kg級 奈良勇太
- 130kg級 奥村総太