レスリング・アジア選手権が4月9日〜14日の日程でカザフスタンの首都アスタナで開催される。
パリ2024オリンピックまでは1年3ヶ月。この大会はパリオリンピック予選という位置づけではないが、オリンピック予選となる9月の世界選手権(セルビア)に各国が選手を派遣するためには、このアジア選手権でその種目(階級)に選手を出場させることが条件となる。
ゆえに、パリ2024を目指す選手を擁するアジアの国々が一斉に選手を送り込む。
実施されるのは女子フリースタイル10階級、男子グレコローマン、フリースタイルの各10階級。合計30種目でアジア王者が決まる。このうちそれぞれ6種目ずつの計18がオリンピック種目となっている。
日本勢は東京2020オリンピック金メダルの須﨑優衣や金城梨紗子(旧姓:川井)、乙黒拓斗(おとぐろ・たくと)は出場しないが、2022年12月の全日本選手権で優勝・準優勝したメンバーを中心に、各階級1人ずつの30選手がカザフスタンに飛び立った。
どんな戦いが繰り広げられるのか。大会の見どころを探った。
- レスリング2023年アジア選手権、結果一覧[随時更新]
2023年アジア選手権、吉元、藤波、尾﨑が連覇を狙う
女子フリースタイル
レスリング女子では前回大会で金メダルを獲得した選手5人がマットに戻り、再びアジア王者を狙う。
アジア2連覇を狙う5選手のうちの3人が日本選手。中でも注目を集めるのが、公式戦連勝記録「119」という数字を残したレスリング界のレジェンド・吉田沙保里さんの記録に迫る勢い(116連勝中)の藤波朱理(あかり)だ。怪我のため昨年の世界選手権を欠場した53kg級の藤波がアジア選手権で3勝すれば、吉田さんの記録に並ぶことになる。
53kg級には東京2020銅メダルのボロルトゥヤ・バト オチル(モンゴル/25)がエントリーしている。ふたりは1月のザグレブ・オープンの決勝で対戦し、藤波に軍配が上がった。
また、2021年の世界選手権で優勝した50kg級の吉元玲美那(れみな/22)や、62kg級で20歳の誕生日を迎えたばかりの現・世界女王の尾﨑野乃香も前回大会の金メダリストとして登場する。
50kg級の吉元は国内での須﨑との戦いに敗れて2022年の世界選手権出場を逃し、同年末の全日本選手権でも須﨑に敗北を喫した。パリ2024日本代表争いでは須﨑が数歩先を進んでおり、吉元はこの大会で成績を残して存在感を示すことが重要となる。この階級では、1月のザグレブ・オープン銅メダルのフェン・ズーチー(中華人民共和国/24)や、東京オリンピックで5位に入賞し、昨年吉元が決勝で対戦したナムーンツェツェグ・ツォグト オチル(モンゴル/27)が上位争いを繰り広げることになるだろう。
このほか、日本からは2017年のアジア選手権57kg級を制した南條早映(さえ/23)や昨年大会で準優勝となった72kg級の新倉すみれも出場する。
注目される階級としては68kg級が挙げられる。
2022年の世界選手権で銅メダルに輝いた石井亜海(あみ/20)がエントリーするほか、東京オリンピック銅メダリストで、2021年の世界選手権を制したメーリム・ジュマナザロワ(キルギス/23)、北京オリンピック銅メダリストで地元カザフスタンの36歳、エレーナ・シャリギナなどの実力者がそろい、上位を狙う。
男子グレコローマン
男子グレコローマンでは、昨年のこの大会で銅メダルを獲得した櫻庭功大(27)がさらなる高みを目指して、再び77kg級のマットに立つ。
この階級を率いるのはキルギスのアクジョル・マクムドフ(23)。彼は東京2020オリンピックで銀メダルを獲得し、昨年のアジア選手権では優勝、世界選手権でも金メダルを首にかけた。このほか世界ランク5位のリウ・ルイ(中華人民共和国/26)や同8位でロンドン2012金メダリスト(66kg級)のキム・ヒョンウ(大韓民国/34)もエントリーし、レベルの高い戦いが展開されることになるだろう。その中で全日本選手権を制した櫻庭がどんなパフォーマンスを見せるか、注目したい。
男子グレコローマンには、もうひとり現・世界王者が登場する。60kg級のジョラマン・シャルシェンベコフ(キルギス/23)だ。シャルシェンベコフは世界ランキングでも首位に立っており、連覇がかかるこのアジア選手権でも圧倒的な強さを見せつけることが予想される。この階級には、全日本選手権の決勝でオリンピック銀メダルの文田健一郎と戦った河名真偉斗(まいと/23)が挑む。
男子フリースタイル
男子フリースタイルに出場する日本勢10選手のうち、57kg級の新井陸人(りくと/25)は前回大会の銅メダリストとして参戦する。
この階級には、昨年の世界選手権3位のザナバザル・ザンダンバド(モンゴル/27)や、前回大会の銀メダリストで地元期待のラクハット・カルザン(Rakhat KALZHAN/カザフスタン/25)がエントリーする。新井がメダルの色を銅から銀あるいは金へと変えられるか、その戦いぶりを見届けたい。
男子フリースタイルで大きな注目を集めることが予想されるのが、65kg級のラフマン・アモウザド(イラン・イスラム共和国/20)だ。2002年生まれのアモウザドは前回大会を制して、世界選手権でも優勝し、世界ランキングでも首位に立つ。
この階級は、乙黒拓斗が東京2020オリンピックで金メダルを獲得したという点でも日本のファンにとっては興味深い階級だろう。今回のアジア選手権でこの階級の代表選手に選ばれたのは、U23世界選手権3位の安楽龍馬(23)。パリオリンピックを目指す安楽は、全日本選手権の決勝で乙黒に敗れて2位。オリンピック代表争いで乙黒の背中を追う状況だが、このアジア選手権で実績を積む。
レスリング2023年アジア選手権の日程
レスリング2023年アジア選手権は、4月9日〜14日の日程でカザフスタンの首都アスタナにあるザクシリク・ウシケンピロフ・マーシャル・アーツ・パレスで行われる。
男子グレコローマンが2日間行われた後、女子フリースタイル(2日間)、男子フリースタイル(2日間)が続く。
※印はオリンピックでも実施される階級
4月9日(日)
男子グレコローマン 55kg級、63kg級、77kg級※、87kg級※、130kg級※
- 11:30(日本時間14:30)〜 予選ラウンド
- 13:30(日本時間16:30)〜 準決勝
- 14:15(日本時間17:15)〜 敗者復活戦
- 18:00(日本時間21:00)〜 決勝
4月10日(月)
男子グレコローマン 60kg級※、67kg級※、72kg級、82kg級、97kg級※
- 11:30(日本時間14:30)〜 予選ラウンド
- 13:30(日本時間16:30)〜 準決勝
- 14:15(日本時間17:15)〜 敗者復活戦
- 18:00(日本時間21:00)〜 決勝
4月11日(火)
女子フリースタイル 50kg級※、55kg級、59kg級、68kg級※、76kg級※
- 11:30(日本時間14:30)〜 予選ラウンド
- 13:30(日本時間16:30)〜 準決勝
- 14:15(日本時間17:15)〜 敗者復活戦
- 18:00(日本時間21:00)〜 決勝
4月12日(水)
女子フリースタイル 53kg級※、57kg級※、62kg級※、65kg級、72kg級
- 11:30(日本時間14:30)〜 予選ラウンド
- 13:30(日本時間16:30)〜 準決勝
- 14:15(日本時間17:15)〜 敗者復活戦
- 18:00(日本時間21:00)〜 決勝
4月13日(木)
男子フリースタイル 57kg級※、65kg級※、70kg級、79kg級、97kg級※
- 11:00(日本時間14:00)〜 予選ラウンド
- 13:30(日本時間16:30)〜 準決勝
- 14:15(日本時間17:15)〜 敗者復活戦
- 18:00(日本時間21:00)〜 決勝
4月14日(金)
男子フリースタイル 61kg級、74kg級※、86kg級※、92kg級、125kg級※
- 11:00(日本時間14:00)〜 予選ラウンド
- 13:30(日本時間16:30)〜 準決勝
- 14:15(日本時間17:15)〜 敗者復活戦
- 18:00(日本時間21:00)〜 決勝
レスリング2023年アジア選手権の日本代表選手
レスリング日本代表女子
- 50kg級 吉元玲美那
- 53kg級 藤波朱理
- 55kg級 片岡梨乃
- 57kg級 南條早映
- 59kg級 坂野結衣
- 62kg級 尾﨑野乃香
- 65kg級 吉武まひろ
- 68kg級 石井亜海
- 72kg級 新倉すみれ
- 76kg級 長島水城
レスリング日本代表男子グレコローマン
- 55kg級 尾西大河
- 60kg級 河名真偉斗
- 63kg級 丸山千恵蔵
- 67kg級 曽我部京太郎
- 72kg級 堀江耐志
- 77kg級 櫻庭功大
- 82kg級 前田祐也
- 87kg級 角雅人
- 97kg級 奈良勇太
- 130kg級 奥村総太
レスリング日本代表男子フリースタイル
- 57kg級 新井陸人
- 61kg級 小川航大
- 65kg級 安楽龍馬
- 70kg級 青柳善の輔
- 74kg級 木下貴輪
- 79kg級 山﨑弥十朗
- 86kg級 石黒隼士
- 92kg級 吉田アラシ
- 97kg級 石黒峻士
- 125kg級 山本泰輝
レスリング2023年アジア選手権のライブ配信
4月9日~14日の日程で行われるレスリング・アジア選手権の模様は、世界レスリング連合のウェブサイトでライブ配信される予定。