ゴルフはリオ2016で112年ぶりにオリンピック種目に復活し、ジャスティン・ローズがオリンピック史上初のホールインワンを達成して金メダルを獲得した。
東京2020では、ネリー・コルダとザンダー・シャウフェレが女子と男子の表彰台のトップに立ち、アメリカチームの誇りを象徴した。
22歳の稲見萌寧はホスト国の国旗を掲げ、南アフリカ生まれのロリー・サバティーニがスロバキア代表として銀メダルを獲得した。
男子では、ロリー・マキロイ、ポール・ケーシー、松山英樹、台湾の潘政琮らを巻き込んだ、前代未聞の7人による銅メダル争いが繰り広げられた。
ここでは東京2020大会でのゴルフの最も印象的な瞬間やメダルを振り返り、3年後のパリ2024を展望する。
1:ネリー・コルダ:目まぐるしくも美しい夏
23歳のネリー・コルダにとって、この夏は忘れられないものとなったことだろう。
6月、アトランタで開催された女子プロゴルフ選手権でメジャー初優勝を果たすと、8月には世界ランキング1位として東京オリンピックで金メダルを獲得すべく、彼女はジェット機に飛び乗った。
「正直、クレイジーでした」とコルダは振り返る。「私はいつも、自分が望むものに対して強い決意と集中力を持ち続けてきました」。
彼女が求めていたものは金メダルであり、年齢以上に落ち着いた成熟したプレーで、見事をそれを手に入れた。
2つのダブルボギーで金メダルの夢が絶たれそうになったが、最終日には7番のダブルボギーから3連続バーディーを奪い、開催国の期待の星、稲見萌寧とニュージーランドのリディア・コを引き離した。
稲見は銀、コは銅メダルを獲得。ニュージーランドのリディア・コは、アメリカのチャンピオンを温かい言葉で称えた。
「オリンピックで世界No.1としてプレーするのは容易なことではありません。私はリオでそれを経験しましたから」リオ大会の銀メダリストであるコは、「彼女がそのようなプレッシャーと期待の中で戦い、最終的に金メダルを獲得したことは、彼女の実力を示していると思います」と語った。
「ネリーはこれからもたくさんのメジャー大会に出場し、たくさんの勝利を手にすることでしょう」。
2:稲見の銀メダルがゴルフ好きの日本のファンを沸かせる
ゴルフは日本で最も人気のあるスポーツの一つだが、前の週に松山が表彰台に上がれずに終わると、すべての期待は22歳の稲見の肩に乗せられた。
メダルが確定したコルダに次ぐ、銀と銅を決めるリディア・コとのサドンデス・プレーオフに突入したときには、日本中がすでに祝福していた。
埼玉県の霞ヶ関カンツリー倶楽部で行われた72ホール終了時点で、両選手は6アンダーの65をマークし、通算16アンダーの2位タイにつけていた。
そして稲見は、プレーオフの1ホール目でコがパーを取るためのパットを外したとき、信じられない気持ちだった。そして日本のファンにとっては金メダルと同じくらいの価値がある、銀メダルを手にしたのだった。
「オリンピックは私の夢でしたが、それが悪夢にならずに済んでよかったです。このような結果は想像もしていませんでした。予選を通過できたこと自体が奇跡だったので」と彼女は語った。
3:父のために戦ったザンダー・シャウフェレ
男子は、シャウフレとサバティーニの手に汗握る対決になった。
アメリカのビッグヒッターは、氷のような冷静さで2つの重要なパットを沈めて金メダルを獲得したが、最後のパットはまさに崖っぷちだった。
「この4フィート(約3.5m)のパットを成功させればいいんだ。ただそれだけ。大したことじゃない、と自分に言い聞かせた」と彼は振り返った。
外見は冷静だが、心臓はバクバク、頭の中は混乱していたが、それでも彼はホールをとらえることができた。
「冷静になろうと必死だったけれど、ものすごいストレスだった。あのパットを決めた瞬間、肩の上から巨大な荷が下りたように感じた」。
飲酒運転の車にはねられ、片目を失明したことでオリンピック出場の夢を断たれた父親のためだったと、シャウフェレは語った。
「父さんのためにどうしても勝ちたかった。彼はいまどこかで泣いていると思う。ここで勝ちたかった理由はそれだったんだ」。
4:ロリー・サバティーニがスロバキア代表として戦った理由
1976年に南アフリカのダーバンで生まれたロリー・サバティーニは、なぜスロバキアの国旗の下でプレーしていたのだろうか?
サバティーニの妻マルティナはスロバキア出身で、彼は2018年末にスロバキア国籍を取得した。スロバキアゴルフ連盟には彼女のいとこがいて、東京2020では彼女がキャディを務めた。
「彼女のいとこのアイデアだったんだ」とサバティーニは語った。「これは、より多くの子供たちにゴルフを楽しんでもらうためのチャンス。ホッケーやスキー、テニス選手など、あらゆるスポーツでスロバキアの選手は活躍しているが、ゴルフ界には誰もいない」。
サバティーニはPGAツアーで6勝し、プレジデンツカップにも出場して世界ランキングの8位まで上り詰めたこともある。
そして東京でも、わずか1打差で金メダルは逃したが、大いに実力を発揮した。
サバティーニが銀メダルを獲得したスロバキアは、女子トラップで金メダル、男子カヤックで銀メダル、カヌーで銅メダルと、4つのメダルを獲得した。
5:大接戦となった男子銅メダルプレーオフ
ロリー・マキロイ、ポール・ケーシー、松山英樹、潘政琮、コリン・モリカワ、ギジェルモ・ペレイラ、セバスティアン・ムニョス。
国籍の異なる7人の選手が、4日間のゴルフを終えて通算-15アンダーの3位タイとなり、銅メダルをかけたプレーオフが行われた。
これはかつてなかったことであり、彼らは2つのグループに分かれて戦った。
ケーシーは木に打ち込み、松山は1打目を失敗し、モリカワが旗をヒットするなど、ドラマは一気に加速。
「3位になるのにこんなに頑張ったのは初めてだ」ペレイラ、ムニョスとともに脱落したマキロイはそう語った。
残るは潘とモリカワだけとなり、18番ホール(プレーオフの4ホール目)でモリカワのパーパットが逸れると、銅メダルは潘のものとなり、潘はキャディーの妻と抱き合って喜んだ。
東京2020のゴルフには、グリーンの上でも外でも多くの愛に溢れていた。
最後に
世界40カ国以上から集まった120名のゴルファーが霞ヶ関カンツリー倶楽部のコースに集い、最も偉大なスポーツの舞台であるオリンピックにふさわしい熱戦を繰り広げた。
ニュージーランドのリディア・コは、2大会で2つのメダルを獲得した初のゴルファーとなり、サバティーニはオリンピック記録の61を達成した。
ゴルフが持つドラマ、情熱、感動は、次のパリ2024に引き継がれる。
パリ2024でのゴルフ
東京大会は多くのゴルファーの意欲を刺激したが、次の夏の祭典、フランス大会まではわずか3年だ。
銅メダルを争ったロリー・マキロイは、この経験でさらに貪欲さが増したと語っている。
「あの場にいたとき、あんな気持ちになるとは思ってもみなかったが、実際、最高だった。素晴らしい経験だった」アイルランドのチームメイト、シェーン・ローリーと数日間のプレーを楽しんだマキロイ。
「パリに行って(メダルを)取りたいという気持ちが強くなった」と、プレーオフの熱戦の後に語っている。
次の大会を楽しみにしているのはマキロイだけではない。現在23歳のネリー・コルダには、オリンピックタイトルを防衛した初のゴルファーになる可能性がある。シャウフェレもパリでの再演を狙っているかもしれない?
いずれにしても、この競技を代表する偉大なゴルファーたちは、フランスの首都で開催されるオリンピックで、さらに忘れがたいゴルフを繰り広げてくれることだろう。
ハイライト
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東京2020 ゴルフの全メダルリスト
男子
金:ザンダー・シャウフェレ(アメリカ)
銀:ロリー・サバティーニ(スロバキア)
銅:潘政琮(台湾)
女子
金:ネリー・コルダ(アメリカ)
銀:稲見萌寧(日本)
銅:リディア・コ(ニュージーランド)