北京2022パラリンピック:アルペンスキー注目の日本選手&見どころ
3月5日からスタートするアルペンスキーの競技内容やスケジュール、注目選手など、観戦を楽しむための情報をチェックしよう。
冬季スポーツ花形種目として知られるパラアルペンスキーは、1976年のエンシェルツヴィーク冬季パラリンピック(正式名称:第1回国際身体障害者冬季競技大会)から導入され、冬季パラスポーツの中でもパラクロスカントリースキーに並び、最も歴史の長い競技のひとつだ。
北京2022冬季パラリンピックでは、5種目で30のパラリンピックメダルをかけたメダルイベント(男子15、女子15)が実施される。
日本は、北京2022に出場する日本選手団の約半数となる14選手がパラアルペンスキーに出場し、複数のメダル獲得の期待がかかる。選手は単一種目ではなく、複数の種目に出場することが多く、平昌2018で出場した5種目すべてでメダルを獲得した村岡桃佳のように、1選手が複数個のメダルを獲得することも十分にあり得る。
オリンピックに続き、延慶に新設された会場、国家アルペンスキーセンターで行われるパラアルペンスキーは、数日前から選手たちが本番に向けて公式練習を行い最終調整を行っている。
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パラアルペンスキーの各種目
アルペン競技は、5種目:ダウンヒル(滑降)、スラローム(回転)、ジャイアントスラローム(大回転)、スーパーG(スーパー大回転)、アルペンコンバインド(アルペン複合)が実施される。
障がいの種類や程度、運動機能などによって細かくクラスに分かれるが、各種目「立位」「座位」「視覚障がい」の3つのカテゴリー別に男女合計30セットのメダルが授与される。
**ダウンヒル:**選手の勇気が試されるアルペンスキー高速系種目の最高峰。座位クラスでは最高時速100kmを超える猛スピードで斜面に設置された旗門の間を通過し、最も速いタイムでゴールした選手が勝利する。
**スーパーG:**ダウンヒルのスピードと、ジャイアントスラロームの正確なターン技術の両方が求められるスーパーGは、高速系種目に分類される。高速で滑走しながら、うねりや起伏のあるコースに設けられた赤と青の旗門を交互に通過しながら大中のカーブを曲がっていく。
**スラローム:**旗門(ゲート)が接近して設置されており、アルペンスキー技術系種目の中でも最もテクニカルな種目。選手は同日に2回滑走し、合計タイムで順位が決まる。
**ジャイアントスラローム:**技術系種目で最もスピードが出るジャイアントスラロームは、設定された赤と青の旗門を規則正しく曲がらなければならない。同日に行われる2回のレース合計タイムで順位を決定する。
**アルペンコンバインド:**北京2022では、スーパーGの後にスラロームが行われ、2本の合計タイムで技術系・高速系両種目のオールラウンダーである最高のスキーヤーを決める。
注目のパラアルペンスキー選手
チェアスキーを使った座位クラス
村岡桃佳(LW10-2クラス):高校2年生で初出場したソチ2014でジャイアントスラローム座位クラス5位入賞。4年後の平昌2018では大躍進を見せ、日本勢史上最多の1大会5個のメダル(金1個、銀2個、銅2個)を獲得した。ジャイアントスラロームとスーパーコンバインドで2019年の世界選手権2冠を達成し、今季ワールドカップランキングのスラローム、ジャイアントスラロームで現在トップ、スーパーGで3位につけるなど、複数種目の金メダル候補として世界から注目される選手のひとりだ。
村岡は、小学生の時に抱いた夢「陸上競技でパラリンピックに出場」を東京2020で実現し、陸上T54車いすクラス100m6位入賞。夏季大会からわずか半年で北京2022に出場する世界でも数少ないパラリンピアンのひとりだ。3月3日に誕生日を迎え、25歳で挑む今大会では、日本選手団主将を務め、アルペンスキー全5種目に出場予定だ。
森井大輝(LW11クラス):ソルトレークシティー2002から6大会連続出場、4大会連続で銀メダルを獲得している森井は、悲願の金メダルを目指す。2018年からパワーリフティングを競技として始め、筋肉量が増えたという森井は、アルペンスキーのパフォーマンスの向上にも役立っていると実感している。今季ワールドカップランキングはスーパーGで4位、ジャイアントスラロームで8位。北京大会は全5種目に出場予定。
ソチ2014のダウンヒルとスーパーGで2冠を達成した狩野亮(LW11クラス)、同大会スラローム金メダリストの鈴木猛史(LW12-2クラス)も、再び表彰台を狙う。
同カテゴリーで2019年世界選手権5種目金メダリストのイェロン・カンプスフレール(オランダ)、また、ディフェンディング・チャンピオンのイェルン・カンプシュハー(オランダ)が男子メダル候補となっている。女子では、ドイツのアンナ=レナ・フォースターが、スーパー複合スラローム座位で2年連続の金メダル、3個目のメダルを狙う。
選手によって使う用具や工夫が異なる、立位クラス
本堂杏実(LW6/8-2クラス):ラグビー、ボクシング、陸上競技など身体能力を活かして様々なスポーツに取り組んできた本堂は、2016年から本格的にスキー競技をはじめ、初出場の平昌2018でスラローム8位入賞、2019年の世界選手権ダウンヒルで銅メダル、ジャイアントスラロームで4位という成績を残し、一気に立位女子でトップアスリートの仲間入りを果たした。しかし、2021年ワールドカップ参戦中に前十字靭帯断裂の怪我を負い、再建手術を行ってからは、1年という限られた時間の中で北京へ向けて不安や焦りを感じた時期もあったという。リハビリを続けて去年10月に雪上トレーニングへ復帰後、2022年1月の世界選手権ではダウンヒル、スーパーGともに5位、スーパーコンバインドで6位入賞を果たし見事世界のトップシーンにカムバック。村岡と同い年の本堂は、25歳で迎える2度目のオリンピックで初の表彰台を目指す。
神山則子(LW9-1クラス):北京2022日本選手団最年長49歳の神山は、パラ水泳と射撃の経験者だが、今回立位で冬季オリンピック初出場となる。
ソチ2014と平昌2018連続で4種目4個の金メダルを獲得したマリー・ボシェ(フランス)の3連覇にも注目が集まる。
ガイドと共に最速を目指す、視覚障がいクラス
男子は、平昌2018のスラロームとジャイアントスラロームでふたつの金メダルを獲得した23歳のジャコモ・ベルタニョリ(イタリア)、女子はヘンリエタ・ファルカソバ(スロバキア)が有力なメダル候補となる。ファルカソバは平昌2018でスラロームの銀メダルを除く、全4種目で金メダルを獲得。ジャイアントスラロームに関しては、初出場のバンクーバー2010から3大会連続で優勝している。
なお、このクラスに日本選手の出場はない。
北京2022パラアルペンスキーの競技日程
**会場:**延慶ゾーン・国家アルペンスキーセンター
日程:2022年3月5日~13日(日本時間)
3月5日(土)11:00~
- 女子ダウンヒル視覚障がい、立位、座位 - メダル決定戦
- 男子ダウンヒル視覚障がい、立位、座位 - メダル決定戦
3月6日(日)11:00~
- 女子スーパーG視覚障がい、立位、座位 - メダル決定戦
- 男子スーパーG視覚障がい、立位、座位 - メダル決定戦
3月7日(月)10:30~ ※8日から日時変更。3月6日更新
- 女子スーパー複合(スーパーG)視覚障がい、立位、座位
- 男子スーパー複合(スーパーG)視覚障がい、立位、座位
- 女子スーパー複合(スラローム)視覚障がい、立位、座位 - メダル決定戦
- 男子スーパー複合(スラローム)視覚障がい、立位、座位 - メダル決定戦
3月10日(木)09:30~ ※時間変更
- 男子ジャイアントスラローム・第1ラン視覚障がい
- 男子ジャイアントスラローム・第1ラン立位
- 男子ジャイアントスラローム・第1ラン座位
13:30~ ※時間変更
- 男子ジャイアントスラローム・第2ラン視覚障がい - メダル決定戦
- 男子ジャイアントスラローム・第2ラン立位 - メダル決定戦
- 男子ジャイアントスラローム・第2ラン座位 - メダル決定戦
3月11日(金)09:30~ ※時間変更
- 女子ジャイアントスラローム・第1ラン視覚障がい
- 女子ジャイアントスラローム・第1ラン立位
- 女子ジャイアントスラローム・第1ラン座位
12:45~ ※時間変更
- 女子ジャイアントスラローム・第2ラン視覚障がい - メダル決定戦
- 女子ジャイアントスラローム・第2ラン立位 - メダル決定戦
- 女子ジャイアントスラローム・第2ラン座位 - メダル決定戦
3月12日(土)09:30~ ※日時変更。3月9日更新。
- 女子スラローム・第1ラン視覚障がい
- 女子スラローム・第1ラン立位
- 女子スラローム・第1ラン座位
12:45~
- 女子スラローム・第2ラン視覚障がい - メダル決定戦
- 女子スラローム・第2ラン立位 - メダル決定戦
- 女子スラローム・第2ラン座位 - メダル決定戦
3月13日(日)09:30~ ※日時変更。3月9日更新。
- 男子スラローム・第1ラン視覚障がい
- 男子スラローム・第1ラン立位
- 男子スラローム・第1ラン座位
13:30~
- 男子スラローム・第2ラン視覚障がい - メダル決定戦
- 男子スラローム・第2ラン立位 - メダル決定戦
- 男子スラローム・第2ラン座位 - メダル決定戦
※スケジュールは天候などにより急遽変更になる場合がある。