北京2022冬季パラリンピックハイライト

パラリンピックは終わっても、選手たちが残した功績と素晴らしい瞬間は、一生残るものだ。北京2022冬季パラリンピックの名場面をハイライトで振り返ろう。

Oksana Masters 
(2022 Getty Images)

記憶に深く残る9日間のパラスポーツの祭典が終わり、冬季パラリンピックもいよいよ閉会式でその幕を閉じる。ここで、北京2022で最も輝きを放ったスター選手たちを振り返ってみよう。

于静:冬季大会パラアイスホッケー3人目の女子選手に

国際女性デーには、中華人民共和国の于静が、冬季パラリンピックで史上3人目の女子選手としてパラアイスホッケーに出場し、記憶に残るパラリンピックデビューを果たした。イタリアとの対戦で5分19秒間リンクでプレーし、6-0で勝利した于は、自身の歴史的偉業で女性にインスピレーションを与えることを目指していると語った。

「中国にはスポーツに参加したい女の子はたくさんいますし、すでにプレーしている人もたくさんいます」と于は言う。「私はその女子選手の代表として、このチームに参加しています。代表チームでプレーする機会を得て、この舞台に立ち、中国人女性のパワーを世界に示すことができました」

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アルトゥル・ボシェ:平昌2018の銀メダルを北京2022で金メダルに変える

平昌2018で4度表彰台に立ちながら、常に2段目に甘んじていたフランスの**アルトゥル・ボシェ**が、北京2022でついに金メダルを掴み取った。

21歳のボシェは、今大会激しい筋収縮に悩まされながらも、金メダル3個、銅メダル1個を獲得。大会初日の男子ダウンヒル(滑降)立位で優勝し、素晴らしいスタートを切ったボシェは、その2日後のスーパーコンバインドで再び金メダルを獲得、さらに大会最終日のスラロームでも金メダルを獲得し、北京2022を最高の形で締めくくった。

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リンダ・ル・ボン:ガイドの娘とダウンヒルに出場

ベルギーのパラアルペンスキー選手、リンダ・ル・ボン(57歳)が、事務的な問題でいつも共にしているガイドと出場ができなくなったとき、土壇場で代役を立てたことが今大会のハイライトのひとつになった。

「22歳の娘と一緒にこれを成し遂げられたことを、とてもうれしく思っています。娘は(たったの)4日前から私の新しいガイドとして滑ってくれました。これまで一緒に滑ったことはなかったですが、とても素晴らしかったです」とル・ボンはレース後Olympics.comに語った。

「リレハンメル(世界選手権)では、私はもっと速かったですが、これ自体が信じられないことで最高でした」

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村岡桃佳:アルペンスキー女子トップに君臨

村岡桃佳は、世界に印象づける滑りを見せ、忘れられないパラリンピックの瞬間を残した。女子座位クラスに出場した25歳の村岡は、パラアルペンスキーでコースを見事に攻略し、金メダル3個と銀メダル1個を獲得。北京2022ではダウンヒル、ジャイアントスラローム、スーパーGで金メダルを獲得し、金1、銀2、銅1を獲得した平昌2018の成績を上回った。

「競技があった5種目・5日間を終えて、すごく晴れやかな気持ちです」

半年前に開催された東京2020夏季パラリンピックにも陸上競技で出場した村岡は、これまで経験したことのない2大会の挑戦を終え、圧倒的な疲労感がありながらも、大きな達成感を得た大会を振り返り、笑顔で答えた。

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カリーナ・エドリンガー:逆境に打ち勝ち金メダルを獲得

オーストリアのカリーナ・エドリンガーは、パラクロスカントリースキー女子スプリントに出場するわずか2日前に、世界のトップアスリートとレースするどころか、体を動かすこともできない状態に陥ってしまっていた。しかし、驚異的な回復を遂げたエドリンガーは、スタートラインに立っただけでなく、見事金メダルを獲得したのだ。

「数日前(月曜日)、私は首から下が完全に麻痺し、ワックスキャビンの床に横たわっていたんです。あれは、私の競技人生の中でも最低の部類に入るものでした」とエドリンガーは語った。

「それはスポーツとはかけ離れたもので、他のことに集中すべきなのに、『このレベルで競技を続けていることに意味があるのか、健康のためだけに集中するべきではないのか』と、改めて自問自答をすることになりました。でも、今日の勝利でかなり回復することができました」

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ヨハネス、ベロニカ、バルバラ:アイクナー家の北京2022での活躍

オーストリアのアイクナー家、一男三女は、北京2022を自分たちのものにして、大成功を収めた。16歳のヨハネスは、その若さにもかかわらず、視覚障がいクラスの男子ダウンヒルとジャイアントスラロームで2個の金メダルを獲得し、さらにスーパーコンバインドとスラロームで銀メダル、スーパーGで銅メダルを獲得した。

しかし、それはアイクナー家の華々しい大会の始まりに過ぎなかった。19歳の姉・ベロニカとヨハネスの双子である16歳のバルバラは、視覚障がい女子ジャイアントスラロームに出場し、それぞれ金メダルと銅メダルを獲得。ベロニカはスラロームでふたつ目の金メダルを、バルバラは同種目で銀メダルを獲得した。この一家の物語はそれだけでは終わらない。ベロニカは、もうひとりの家族であるエリザベスをガイドとして共にレースに出場し、姉妹で金メダルを獲得したのだ。

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オクサナ・マスターズ:伝説を生み続ける

北京2022は、アメリカ合衆国のレジェンド、オクサナ・マスターズの成功に他ならない。夏季大会ではパラボートやパラサイクリング、冬季大会ではパラクロスカントリースキーに出場しているマルチスポーツのスペシャリストであるマスターズは、北京2022で再び目を見張る活躍をみせた。

ウクライナ出身のアメリカ合衆国代表のマスターズは、数多くの忘れがたい瞬間があったが、おそらく彼女の最高の瞬間は、バイアスロン女子スプリント座位で獲得した初日の金メダルだろう。これは彼女にとって5個目のパラリンピック金メダルであり、アメリカ合衆国にとって今大会初の金メダルとなった。

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シンプソン兄弟:イギリス代表初の歴史的金メダル

ニール・シンプソンは、北京2022で、自国初の冬季パラリンピック金メダリストとなり、歴史に名を刻んだ。そして、何よりも素晴らしいことは、その快挙を兄と共に成し遂げたことだ。パラアルペンスキー男子スーパーG(視覚障がい)での勝利は、兄・アンドリューがスタートからゴールまでニールを先導してガイドし、兄弟で掴み取ったものだった。

レース後、ニールは「まだこの気持ちを言葉にできないです。この数年は大変な時期で、いろんなことがありました。まだ信じられないです」と語り、アンドリューは「言葉では言い表せないほどの高揚感でした」と振り返った。

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ナタリー・ウィルキー:21歳でパラリンピック通算7個のメダルを獲得

カナダのナタリー・ウィルキーは、17歳で出場した平昌2018ですべての色のメダルを獲得した後、北京2022でも金メダルを獲得するパフォーマンスをみせ、再びウィンタースポーツ界に旋風を巻き起こした。

ウィルキーにとって北京2022での栄光は、女子クロスカントリースキーロング立位(クラシカル)で、アメリカ合衆国のシドニー・ピーターソンを抑えて金メダルに輝いたところからはじまった。その2日後、彼女はスプリント(フリー)で金メダル、ミドル(フリー)で銀メダル、混合リレーで銅メダルを獲得し、パラリンピックでのメダル獲得数を7個に伸ばした。

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マクシム・モンタジョニ:バンクドスラロームで逆転優勝

3月11日(金)に行われたスノーボード男子バンクドスラロームで新パラリンピックチャンピオンに輝いたフランスのマクシム・モンタジョニは、2位、3位、4位、6位、7位に終わった中華人民共和国の選手たちの挑戦を退け、頂点に立ち、歓喜の雄叫びをあげた。

「雲の上にいるような気分です。筋肉がリラックスして、とてもスムーズでした。トップに立つことは難しい。でも、とても最高な感覚です」と、優勝した後、感情を抑えきれない32歳のモンタジョニは、Olympics.comにこう語った。

「私にとって、これまでやってきたことが報われました。それはチームにとっても、一緒にやってきた人たちにとっても良いことです。本当に信じられない。金メダルをとれるなんて、信じられません」

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ブライアン・マッキーバー:金メダル通算16個、レジェンドの有終の美

ブライアン・マッキーバーは、ドイツのパラアルペンスキー界の巨匠ゲルト・シェーンフェルダーが持つ歴代最多金メダル記録に並ぶ、16個目の冬季パラリンピック金メダルを獲得し、驚異的な快挙で歴史にその名を刻んだ。

マッキーバーは、4大会連続出場となるパラリンピックで、男子視覚障がい20kmクラシカル、1.5kmスプリント、12.5kmフリースタイルの個人3種目を制した。彼はソルトレークシティー2002に初出場して以来、実に20回の表彰台を獲得した。

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