パリ2024オリンピックの陸上競技で最も象徴的なシーンのひとつは、タラ・デイビス・ウッドホール(アメリカ合衆国)が、女子走幅跳で金メダルを決めた時の自らの勝利を祝福する姿だった。
25歳の彼女は観客を魅了した。8月8日、スタッド・ド・フランスを埋め尽くす7万5000人のファンの前で、彼女は素晴らしいショーを披露したのだった。
金メダルを決定づけた7m10の大跳躍の後、テキサス出身の彼女はその興奮で観客を盛り上げた。魅力的な笑顔を観客に向けて輝きながら、彼女はその喜びに満ちた夜の栄光をかみしめるように、少し前に勝利の跳躍を決めた砂場へと後ろ向きに倒れ込んだ。
その直後、彼女はパラリンピアンである夫のハンター・ウッドホールのもとに走り、彼の腕の中に飛び込んだ。大勢の観客は、陸上競技界のパワーカップルが愛に包まれる瞬間を祝福した。リオ2016の男子200m(T44)で銀メダル、400m(T44)で銅メダルを獲得しているハンターは、パリ2024パラリンピックでは男子100m(T64)と400m(T62)に出場している。
スタッド・ド・フランスの観客は、トレードマークであるカウボーイハットをかぶり、アメリカ国旗を身にまとったタラ・デイビス・ウッドホールが、美しいエンターテイナーとしての才能を発揮し、長年の夢の実現をより象徴的に演出する様子に歓喜した。
「私の人生の目標は、これまでの走幅跳に対する見方を変え、もっとこの種目に注目が集まるようにすることでした」と、タラ・デイビスは試合後、Olympics.comの独占インタビューで語った。
「私の跳躍をスタジアム全体が少しだけでも見てくれていました。それは何よりも意味があることなのです。走幅跳で何ができるか、この種目がいかに面白いかを示す機会を得ることができ、とても感謝しています」
タラ・デイビスとハンター・ウッドホール:お互いを支え合いオリンピックとパラリンピックで活躍するパワーカップル
6位に終わった東京2020から3年後、デイビス・ウッドホールはパリで注目を浴びる準備ができていた。
「オリンピックの金メダリストになることが私の人生の目標でした。私をサポートしてくれたチーム、夫、ドクター、そしてコーチ…彼らは私が競技場に足を踏み入れる前から、『大丈夫だよ、夢はかなう』と言ってくれました」
女子400mハードルで世界記録を樹立したシドニー・マクラフリン・レヴロン、男子110mハードルで念願の金メダルを獲得したグラント・ホロウェイらとともに金メダルを獲得した米国陸上競技界にとって輝かしい勝利の夜、実は多くの注目はウッドホール夫妻に向けられていた。まるでスポットライトを浴びる準備ができていたかのようにさえ見えた、3大会連続でパラリンピックに出場する夫ハンターとの情熱的な彼女のふるまいは多くの人の心をとらえた。そして、タラ・デイビスは「これがすべて」と言った。
「私たちは2人で1つの存在なんです。私たちは常に一緒にいます。彼を抱きしめ、彼の腕の中に入ることは私にとってすべてです」と、カンザス州立大学の陸上競技チームのアシスタントコーチに最近就任したタラ・デイビスは話した。
「私たちは毎日いっしょにトレーニングし、彼は私が行うすべての努力を見てきましたし、私も彼が行ってきたすべての努力を見ています。ここ(パリ)に戻り、今度はパラリンピックで彼やチームを応援する時が待ちきれません」
タラ・デイビス・ウッドホール「あなたは大切な存在。すべてはあなたのために存在します」
タラ・デイビス・ウッドホールがパリ2024で金メダルを獲得するまでの道のりは、「恐れず自分らしくすること」によって築かれた。2大会連続でオリンピックに出場した彼女は、プロアスリートとして経験したメンタルヘルス問題について、これまで公の場で語ってきた。
決勝で2回、7mをクリアした時に見せた、彼女の抑えきれないほどの歓喜の姿は、あらゆる意味で象徴的だった。それは「期待の走幅跳選手」としての世間の評価に応え得るアスリートとしての再起を示していたからだ。
「すべての跳躍が異なっていました。すべての跳躍に異なる意味があったのです。4回目の跳躍のために助走路へと進む時、『これだ!』とわかりました」と、タラ・デイビスは、1回目の試技で6m93、次に7m05、そして3回目で6m95を記録した後に訪れた勝利の試技について振り返った。
「オリンピックで金メダルを獲得すること、この競技の頂点に立つことは、すべてを意味します。私はSNSで自分のすべてをシェアしてきているので、みんな、私が何を経験してきたかを知っています。心に決めたことは何でもできる。それがすべてなんです」
私たちは何でも成し遂げることができるのです!すべての女性や女の子たち、男の子たちにとって、あなたはどんなことでも達成することができます。あなたは大切な存在です。すべてはあなたのために存在します。そして、あなたの心は、あなたが思っている以上に強いのです。-タラ・デイビス・ウッドホール
タラ・デイビス・ウッドホール、ビヨンセとロサンゼルス2028について語る
自称パフォーマーであるタラ・デイビスは、スーパースター、ビヨンセにインスピレーションを与えたかもしれないことに大喜びした。
スーパーシンガーのビヨンセは、オリンピック開会式のNBCテレビ放送中にチームUSAを紹介しながら、カウボーイハットとブーツを身に着けて、今年リリースした自身のアルバム「カウボーイ・カーター」からのヒット曲を披露した。その姿は、デイビス・ウッドホールが競技会の前後でいつも見せるものとよく似ている。
「なんてクールなことなんでしょう…ビヨンセは、私のやっていることからヒントを得たのかもしれません。彼女は憧れであり伝説的存在です。そんな彼女にインスピレーションを与えたなんて信じられません」
すでに金メダルを手にしたタラ・デイビスは、ロサンゼルス2028の開催地となる地元での跳躍が楽しみでならない。
「私は11歳から20歳までロサンゼルスで育ちました。そこで競技することを私は強く望んでいます。友達が見に来てくれることを本当に楽しみにしています」
「ロサンゼルスは私の地元です。そこで競技することには、間違いなく大きな意味があるのです」